高校1年の夏~夏合宿(2)

 夏合宿2日目、まずは昨日と同じく5キロランから始まり、続いて坂道ダッシュ10本、シャドーとミット打ちを終えた。


これからライトスパーに臨む。初日の練習による筋肉痛もあるが、逆にそれが少し心地よくも思えた。

 今はとにかくBクラストーナメントに向けてもっと強くならないといけない。


「これからライトスパー回してくぞ。毎回相手は変えること! 半分以下の力で、顔面は軽くだぞ。距離感や攻防のタイミングを掴むことが目的だからな。日頃の練習で学んだコンビネーションとかも試してみてもいい。それじゃ始めていこう」


「ウォーミングアップにちょうど良さそうやな」


 黒木はそう言うと私の前に立ちはだかる。それにしても私のことをウォーミングアップ扱い? めっちゃナメられてるじゃん。臨むところ、ローキックぶちかまてやる。私はメラメラしてきた。


ピー!


 始まりのブザーとともにオーソドックス同士で睨みあうと、パンチ主体の黒木は上半身を揺らしながら小刻みにリズムを取りジャブで距離感をはかる。

 私はジャブを前手で迎えながら時おり軽く弾く。5回目のジャブを弾くと同時にローキックをヒットさせた。同時に黒木は右ミドルと応戦。続けて右ストレートを出してきたが私はバックステップで交わす。


ちゃんと黒木の攻撃が見えてる! 


と思ったのもつかの間、黒木はジャブを出しながら突進するかのように素早くステップインするとワンツーフックからストレートまで連打を繰り出してきた。私はひとまず距離を取ろうとするも黒木はそれを許さず常に間合いを詰めて左右のフックを放つ。明らかに半分以上の力で来てるのが分かる。


怯むものか! 


 私は顎を引いて強めのローキックを出していく。ローキックの打ち終わりに左右のフックをしつこく出す黒木。決して大降りでなくコンパクトに打ってくるため中々カウンターが当てにくいし、この近い距離ではキックが当てにくい。ジャブ、左ボディフックから右ローキックとコンビネーションで反撃していく。


名門・闘魂ジムの黒木といえども私のローは効くはずだ。距離ができたところで更に単発のローを出す、黒木はローをカットせず受けながら距離を詰めパンチ連打から膝蹴りを出してくる。私はジャブから前蹴りと出すも前蹴りを捌かれると左右のフックをもろ被弾。一瞬だが意識飛んだ? 


表現しにくいが視界がクラっとしたところで1ラウンド終了。それにしてもあの左右のフックは中々厄介だ。


「最後のフック効いたろ? 試合やったらあれでKOだな」


そういうと黒木は去っていった。ローキックはヒット出来てだけに最後に攻撃をもらってしまい悔しい。


「次、私とどうです?」


鶴羽に声をかけられた。鶴羽の近くで男子選手がうずくまっている。何があったか分からないが、受けてたつ。私は気合いを入れ直した。


「お願いします!」


170センチと私より15センチも身長が高い鶴羽は前足でリズムをとるムエタイスタイル。ローキックを当てるにはまずはパンチから組み立てなくては。

パンチを当てるため中に入ろうとするも前蹴りで止められ、左ミドルを被弾した。スイッチが早いし脛の深いところで蹴られてしまい、4割程度とはいえかなりきつい。キックを警戒してしまい中々私は中に入れない。戸惑う私にコツコツとローを蹴ってくる。


「時にはフックワークを意識して動かないと。身長高い相手に棒立ちだとしたい放題されるよ」


鶴羽はライトスパー中にも関わらずアドバイスしてきた。でも確かにそうか。私は不慣れながらもフットワークを意識した。


「ローキックが得意なんだよね? 身長高い相手にはローは当てやすいからいいと思う。でもまずはジャブで距離を測る。当てようとしなくていい、ジャブで自分の攻撃が当たる距離かを確認して」


私は言われるがまま前の手を伸ばすようにしてジャブを出した。


「攻撃を当てられるこの距離を保ちつつ、的を絞らせないように動きながらローキックだよ。エレナちゃんのローキック、トップクラスだと思うから自信もって。あとはいかに得意のローキックを有効的にヒットさせられるか、相手を観察して考えながら当てていく」


そして2ラウンドは終了となった。


「ありがと。色々教えてくれて」


「いつでも何でも聞いてね。ライトスパーなんだしお互い気付きがあれば教えあおう。まぁ龍賀と黒木は倒しにくると思うけど」


「ミウ、もう1回戦いこ」


龍賀も背が高い。鶴羽と同じ170センチだ。


「さっき組んだじゃん。相手は毎回変えな。エレナちゃんとやりなよ」


そして私は龍賀とやることとなった。始まるまでのインターバル、会話はなく始まった。


鶴羽から教えてもらったようにまずはジャブを出して私の得意とするローキックが確実に当たる距離を探るが、遠い距離からジャブのフェイントから右ミドル、ジャブから前蹴りと中に入れさせてもらえない。


そうか、もっと動かないと。


私はジャブを見せながらややサークリングするかのようにサイドに移動していく。龍賀は獲物を狙うかのように視線をずらさず追ってくる。

ジャブを出すも顔を滑らしてかわされると、そのまま右ストレートをもろに返された。


レイナと似てて鋭い打撃。当たる瞬間に軽く手首を下げて拳骨で打つ感じ。私も負けじとローを返す。ローキックに関しては私だってめちゃくちゃ研究したし練習してきてる。カットされるほど遅くだってない。


龍賀の打撃をブロックしてローを返す攻防が暫く続く。龍賀はやや助走を付けた飛び膝をボディへ突き刺してく間合いをつめると左右のボディフック、左フック、右ミドルと明らかフルパワーのコンビネーションときた。私は前手で胸辺りを力強く押してほぼMAXのローをお見舞いする。


しかしながら、私はやられてしまった。


龍賀はジャブを2回、そして左の前蹴りを軽く出した後にボディジャブから左ミドルと私のガードの意識をやや下げさすと、右に動き出す、私は追うように龍賀と同じ方向へ動くと同時に左ハイキックを見事にもらいダウンしてしまった。自分が左に動いた時にガードが下がった右側を狙われた。


「大丈夫か!」


エビス会長がすぐに駆けつけた。


「いったん、エレナちゃん休もう。なんなら今日は練習終えてもいいから。無理せず」




みんながライトスパー回してる中、私は1人見学してたがレイナも来てくれた。


「ごめんね、せっかくの合宿なのに。レイナの貴重な練習時間が」


「ううん、全然そんなことない。私もちょうど休憩したいところだったし。初めてのダウンだよね。まじ無理しないで」


「あの左ハイキック全然見えなかった。悔しい。左ハイが当たるように動かされてたんだと思う」


「エレナ、ダウンとられたのに冷静に分析できてすごいね」


「だって、私だって皆みたいに強くなりたいから」


「じゃあ今日はゆっくり休んで、明日のスパーリング大会でまた頑張ろう。今日だけでもGPに出る3人と手合わせしたんだよ? 明日のエレナは今日より強くなってる。見せつけてやろう」



私は残りのライトスパーを、龍賀、鶴羽、黒木をよく観察することとした。相手がどれだけ強かろうと臆することはない、私にはローキックがある。明日のスパーリング大会でギャフンと言わせてやる。




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