普通に災厄な現代ダンジョンの事
竜野マナ
第1話 1.ダンジョンが出来たって災厄
3年前。
ある日突然、どこからともなく大きな鐘の音、それも多分西洋式の、リンゴン、リンゴン、という感じの音が、間延びして響き渡った。どこで何が鳴ったのか、と、周りの人も一斉に周囲を見回していたのをよく覚えている。時間はちょうど昼時。きっと、外に出ている人は1日の中でも多かった。
最初にその動画を上げたのは、たまたまその近くにいた配信者だったらしい。今でも「当時の様子」の参考資料として出てくるその映像には、一抱えもあるような黒い石の柱が、そこそこの速さで地面から生えて伸びていく、という光景が映っていた。
それが、世界各地で、大体大きな都市の数ぐらいに起こっていたっていうのが分かるのは、もう少し後の事。何故なら、その直後。特にその黒い石の柱の近くにいた人は、自分以外の事なんて考えていられなくなったのだから。
だってまさか、そんなの思う訳が無い。
その黒い石の柱。オベリスク、と呼ばれるようになったそれを中心とした、直径10㎞の範囲。同じ高さの地下と上空まで含めた、円筒状の空間。
その範囲がそこにあったものを使った広大な迷路に変わるなんて。
大勢の人が巻き込まれて、そして帰ってこなかった。私の家族もそう。私はたまたまその日、修学旅行で遠くに行っていたから助かった。クラスの子も先生も、たぶん同じだった。偶然。……風邪で休んだ子は、見つかってない。
ただの迷路ならそんな事は無かったんだけど。オベリスクを中心としたその迷路は、ゲームみたいに敵と罠と宝箱があった。自衛隊が救助に行っていたみたいだけど、物理法則があまり通用しないらしくって、そちらでも大勢行方不明者が出たらしい。
その内誰かが、オベリスクの周りの迷路を、ダンジョンって呼び始めた。警察とかが止めるのを振り切って、自分から中に入っていく人も大勢いた。そして帰ってこない人もたくさんいた。
でも、帰って来る人もいて。その人がこれも動画で中の話をして。それを聞いた人がまた自分から入っていって。いつからか、警察の人や自衛隊の人も入っても戻ってくるようになって。その内、国連によって資格が作られた。ダンジョンの中に入る為の。
今ではこのオベリスク・ダンジョンもランク付けされて、資格も細かく分かれて、モンスターを倒したり宝箱を開けたりして手に入れる青い結晶、魔石がものすごく効率のいいエネルギーになるって分かって、ダンジョンの周りは大賑わいになっている。
遠くからでも見る事が出来る、中央のオベリスク。その上の方に表示された数字が、毎秒減っていく事と。それがゼロになると、ダンジョンから敵が、モンスターって呼ばれるようになった怪物が、一気に出てくる事が分かったのも、あるだろうけど。
そしてその数字が、モンスターを倒すと増える事と……ゼロにはならなくても、ある程度より低かったら、別の場所に新しいダンジョンが増える事も分かったから、余計に、ダンジョンでモンスターを倒す事に、あちこちの国が力を入れているのも、もちろんあるだろうけど。
「……餌も、十分なんだよね」
あとは。
ダンジョンの中で死んだ人は。相応の数の魔石を集めれば、生き返らせる事が出来る。
そう書かれた石板が、ダンジョンから見つかったのも……きっとある。
何故なら。
私も、それを信じて、せっせと魔石を集めている、1人だからだ。
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