Secret Episode 3 泉の精霊

【現在、ルーンの森 深奥の泉】


 私はマルタさんと別れてから森の泉でセーラさんのことを考えていた。そもそも、あそこにマルタさん以外の人が現れるなんてあり得ないはずだったのだからこれは異常事態だ。


 そしてセーラさん、彼女は自分のことについてマルタさんに何も話してはいない様子だった。


「まさか、セーラさんの目的はマルタさんへの復讐…?」


 いや、そう決めつけるのは早計な気がする。しかし、ではなぜ彼女がマルタさんの前に現れたのかが解らない。


「マルタさんの治癒はもうすぐ終わるはずですが、このタイミングでイレギュラーが発生すると困りますね」


 今回私がマルタさんに施した回復の奇跡は、強制力と実現力がとても強いものだが、奇跡をかけた後における対象への干渉がほとんど出来ないという欠点があった。故に現状、この奇跡を中断することは不可能という事になる。


「情報が少ない中これ以上は考えても仕方ないですし、久し振りに外の様子を見に行きますか」


 私はルーンの森に棲む動物達を誘って森の外を見に行くことにした。足取りは決して軽くはないが、これはこの森の精霊としての責務だ。動物達はどこか不安そうな目をしている。


「大丈夫ですよ、皆さん。見るだけですから」


 動物達を励ましつつ、私は森の入り口へ向けて歩みを進めた。

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