推し活生活~気ままな独身40代・私の老後はどうなる⁉~

@hinahina_hinako

第1話 沼に踏み入れてしまった瞬間

20代の頃、大好きな祖母が亡くなった。

老衰によるもので、突然のお別れだった。

厳しかったが愛情深く、なんでも褒めてくれる祖母だった。

その祖母が亡くなった。


自分の何か大切な「軸」がなくなったような気がして、「自分」が分からなくなった。

泣き叫びたい衝動はあったが、その衝動のまま行動すると「自分」がなくなるような不安があった。


葬儀の喪主は祖父だったが、実質取り仕切ったのは長女である母だった。

私はその母の右腕としてサポートに徹した。

正直、次女や三女の叔母よりも私のほうが発言権があり、決定権があった。

母とともに「しっかりせねば!」という気持ちが強かった。


悲しみのまま行動すると「自分」が壊れてしまいそう。

そこで「自分」をキープするために、「何かにハマろう!」と思った。


最初は小説や漫画、アニメ。

しかしどれも数週間程度ですぐに読み終わり、続きが出ないことにイライラする。

やはり生きている人間にハマる方が「終わり」がなくて良いと判断した。


もともと好きだった宝塚は「推し」が卒業するとその後芸能活動をするとは限らない。

芸能活動してくれても頻繁に表舞台に出るとは限らない。

熟考の上、男性アイドルに目星をつけた。


当時、同世代の男性アイドルが3グループあった。

この時点で顔も名前も分からない。

何人グループなのかも知らない。

とりあえず、それぞれのライブDVDを買い、見てみることにした。


学生時代、友人の影響でaccessの大ファンになったが、

まだ私自身が子どもだったこと、accessが解散したこともあり、

数年だけの推し活生活だった。

その後、accessの浅倉大介さんがプロデュースしたユニットのファンになったが、

そのユニットも2年ちょっとで解散。


正直、とりあえず祖母を失った喪失感を補うための短期間だけのつもりだった。


とりあえず3グループ順番にDVDを見ていく。

聞いたことのある歌もあるが、特に心に響くわけでもない。

カッコつけた仕草も「へえ~」って感じ。


いや~この中から誰かのファンになってハマるだなんて厳しいかもな。


しかし、最後の1つのグループで運命の人に出会ってしまったのだ。

いや、「出会った」のではない。

「やっと見つけた」という感覚だった。


DVDで彼が話している姿を見たとき

「あれ?ここにいたの?」

とリアルに声に出ていたことを今でも覚えている。


まだ20代の頃の私が沼に足を踏み入れてしまった瞬間である。

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