第9話

―――カァ。


 短く鳴いた黒鳥―――もとい、は金色の光を発し、今朝と比べて何倍も大きな背中と羽を広げて、こちらに首だけを向けていた。


「……さっきの鳥、で、合ってるよね」


―――カァ。


 そうだ、と言わんばかりに金烏は鳴く。


―――カァ。


 どこか物欲しげな金烏を見て、私はカバンから取り出した羽ペンを取り出す。


―――カァ。


 私がそれを差し出した刹那。


「うわっ」


 私と金烏を囲むように風が巻き起こり、羽ペンが宙に浮いた。そしてそれに身を委ねるように、金烏も舞い上がった。


 顔に絡みつく髪の毛の隙間から見えた、羽ペンが乱暴に舞う姿に、なぜかかつて木の上から放り投げたバレエシューズの面影を感じた。


―――カァ!


 けたたましいその鳴き声は、世界中に目を覚ますよう呼び掛けているように聞こえた。そしてその姿が見えなくなった刹那、黒天井に突き抜ける光の柱が輝き、世界に久方ぶりの夕方の陽光が差し込んだ。


「……夕日だ」


 そんな世界の短い目覚めの訪れとともに、ある物が空から降ってきた。

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