第2話「揺れる疑惑」- アートディーラー 水谷真琴の証言
芸術の世界では、才能と金が全てだ。私はアートディーラーとして、その両方を扱ってきた。村上遥香は間違いなく才能があった。そして、その才能は確実に金になると確信していた。
私は彼女の専属ディーラーとして、作品の売買を一手に引き受けていた。最近の彼女の作品は、驚異的な価格で取引されていた。「沈黙の白昼夢」も、完成前から予約が殺到していたほどだ。
だが、事件の2週間前、彼女は突然、私との契約を解除すると言い出した。理由は話せないと言う。私は必死に思いとどまるよう説得したが、彼女の決意は固かった。
確かに、私にとって彼女との契約解除は大きな痛手だった。だが、それは純粋にビジネスの問題だ。殺人の動機になどならない。
私には完璧なアリバイがある。事件当夜、私は海外のバイヤーとオンライン会議をしていた。それは記録に残っている。
「昨日、面白い光景を目撃しましてね」と、私は話を続けた。「探偵の助手さん、美術館で村上の過去の作品を一点一点、まるで魔法にかかったように見入っていた。素人とは思えない観察眼だった」
実は私も、その助手には興味を持っていた。彼女の視線は、ただの鑑賞者のものではない。まるで...芸術家のような。
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