「沈黙の白昼夢」 天才美大生×探偵助手の絵画ミステリー

ソコニ

第1話「静かな始まり」- 美術館館長 藤堂誠一郎の証言

プロローグ 「運命の出会い」- 探偵助手 御堂美咲の記録


私が神宮寺探偵事務所で働き始めたのは、ちょうど1年前のこと。


美大を首席で卒業したものの、芸術の道を諦めた私を拾ってくれたのが神宮寺竜司先生でした。「君の持つ芸術的感性は、事件解決に必ず役立つ」と。


最初は半信半疑でしたが、実際、私の美術の知識や色彩感覚は、数々の事件で役立ってきました。先生はいつも「美咲の直感には一目置いている」と言ってくれます。でも、本当のところ、私のことを本格的な助手として見ているのかは分かりません。


そんな中、運命的な事件に遭遇することになりました。現代アートの旗手と呼ばれる村上遥香さんの密室殺人事件。私にとって、彼女は学生時代からの憧れの存在。その死の真相に、まさか私が関わることになるとは...。




第1話 「静かな始まり」- 美術館館長 藤堂誠一郎の証言


私は美術館の館長として15年間この仕事を務めてきた。まさか、こんな事件に巻き込まれるとは思ってもみなかった。


あの日、特別展「沈黙の風景」の開催を控えていた。メインとなる作品は、若手の天才画家・村上遥香の最新作「沈黙の白昼夢」。彼女の作品は常に物議を醸すが、その独特な表現方法と深い精神性で、今や現代アートシーンの旗手として認められている。


展示会の前日、私は最後の打ち合わせのため、村上さんのアトリエを訪れた。しかし、そこで目にしたのは、床に横たわる彼女の遺体だった。毒殺されたという。警察の調べでは、死亡推定時刻は前日の深夜。アトリエの施錠は完全で、窓も内側から閉められていた。完全な密室殺人だった。


私には村上さんを殺す理由などない。むしろ、この展覧会の成功を誰よりも願っていたのだ。だが、捜査の過程で、私が最後に彼女と会った人物の一人だということが判明し、疑いの目を向けられることとなった。


「実は、村上さんから展覧会の前日、奇妙な電話を受けていたんです」と、私は神宮寺探偵に告げた。「『もし私に何かあったら、全ては絵の中にある』と」


その時、隣にいた若い女性の助手が、妙な表情を浮かべたように見えた。彼女の眼差しには、ただ者ではない鋭さがあった。

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