第18話

「……私帰る」



――切実に帰りたい。疲れた。


そういう意思を込めて訴えれば「え?」とまたも彼等の方から聞こえてきた。


これは茶髪の人の声ではなかった。



「ねぇ、怜央ちゃん。帰りたい。いや、帰る」



決意のようなものを告げて、返事も聞かず入口へと向かおうと足を踏み出そうとした。けど、掛けられた言葉によって先に進むことはなかった。



「待て、心寧。……俺達の事を知って欲しい」


「……あなた達のこと?」


「あぁ、俺は佐久間 臣さくま おみ



唐突に自己紹介をしてきたのは、銀髪の人。無表情でピクリとも表情が変わらないけど目が合えば微かに口角を上げた。


どこか怜央ちゃんと似た雰囲気を感じる。



「お前の事も知りたい」


「……早川 心寧です」



名乗ってもらった以上こちらも言うべきだろうと名前を口にした。

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