第7話

さて、冗談はここまでにしよう。



「ねぇ、怜央ちゃん」


「あ?」


「……ありがとうね」



これを今日言いたかったんだ。


少し驚きに目を見開いた怜央ちゃんにふふっと笑えばすぐに無表情になった。


――あら、残念。貴重な驚き顔だったのに。


怜央ちゃんは、私のお兄ちゃん的存在。



「お前は好きな事をすればいい。……陸の望みでもある」


「……うん」



陸とは私の実の兄。既に他界しており、親友だった怜央ちゃんは何かと私を気にかけてくれている。


俯く私の頭をぽすぽすと撫でる彼は優しい人だ。



「何かあったら言え。絶対に一人で抱え込むな」


「ふふっ、大丈夫だよ」



――大丈夫。そう言い聞かせて、思い出しそうな記憶に鍵をかける。

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