姶良西高校修学旅行バスの無線記録

出所不明。


――――――――――


運転手「こちら、32号所属車両の運転手です。ちょっとよろしいでしょうか、ルートが不明確なのですが…」

指令「どうしました?」

運転手「誘導をお願いしたいのですが…。ルートが不明瞭です…」

指令「えーっと…。32号車両は修学旅行車ですか?」

運転手「はい。姶良西あいらにし高校の修学旅行車です」

指令「了解です。詳しく状況をお話しください」

運転手「突然にナビシステムが不調となり、正確な現在地がつかめません。そちらの管理システムから誘導をお願いできますか?」

指令「直ちに調整します。お待ちください」

運転手「……」

指令「他に変わった事はありませんか?ナビが不調とのことですが、走行に支障はありませんか?」

運転手「問題ありません」

指令「了解しました。現在は停車中ですね?」

運転手「走行中です」

指令「えっと…。動いていますか?」

運転手「そうです」

指令「えっと、現在の場所が不明ということですので、停車してください。安全な場所に停車し、こちらからの指示をお待ちください」

運転手「止まった方が危険です。止まったらすぐに流されてしまいます」

指令「流され…え?どういうことですか?」

運転手「だからこうして連絡をしているのです。はやく誘導をお願いいたします」

指令「運転手さん、落ち着いてください。きちんと誘導を行いますので、安全のために止まれる場所にすぐに止めてください」

運転手「だから早くしてください!車内には49名もの人間がいるのです!手遅れになってしまいます!」

指令「手…え?」

運転手「もういいです!このまま進みます!」

指令「えっと…。進めるのですか?運転手さん、視認できる状況をお話しください」

運転手「…ゆるやかな下り坂を進んでいます。ずっと下り坂です。同時に、ゆるやかに左にカーブし続けています」

指令「緩やかなカーブですか?山間部を走行中ですか?」

運転手「分かりませんけど…。でも回りながら下っているような気がしています…。もうずっとこの調子ですが、状況が変わりません」

指令「なにか目印になるような景色等は確認できますか?」

運転手「目印…。赤い景色が広がっていますが…」

指令「運転手さん!!やはり直ちに停車してください!!危険です!」

運転手「……」

指令「運転手さん!!落ち着いて聞いてください!!こちらから位置情報の確認をシステムを通じて行いましたが、そちらの車両の位置情報が”3157”と表示されています!これは危険です!ただちに引き返してください!」

運転手「ずっと左カーブで…。相当下まで来ていると思いますが…」

指令「運転手さん聞こえていますか!?返事をお願いします!直ちに引き返してください!」

運転手「……」

指令「聞こえていますか?返事をお願いします」

運転手「後ろに…流されて…これは…」

指令「あぁ……」

運転手「……」

指令「……」


――――――――――


【特記】

調べたところ、記録に出現する”姶良西高校”においては実際に2017年に修学旅行生の集団失踪(生徒45名、引率教員4名)が起こっている。会話の記録のみからこの会話が行われた詳細な時期を推定する事は難しいものの、これらの背景が一致するならばこの記録は2017年のものであろうと思われる。上記の通信記録に関する詳細な出所は不明であるが、かつて高橋誠吾がこの事件に関する調査を詳細に行おうとしていたという情報があり、何らかの関連が見られるものと予想される。

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