第6話 由香里

何で沙耶や加奈があの娘が死んだ事を悔やむのかあたしには分かんない。助けられたら満足だったっていうの?それともあの娘の分まで生きろって言いたい訳!?それってすんごく傲慢じゃない?自己満足にすぎない。あたしはあたし、あの娘はあの娘。どう頑張ってもあの娘にはなれない。だったら自分に与えられた人生を生きるしかない。一度しかない人生を楽しむ以外何がある?同情するならいくらでも出来る。たとえそれが嘘だとしても…。

いなくなったあの娘を思って過去ばかりひきずって足を止めているより、あたしはしっかりと前を見て進むことを選ぶ。

人生は何が起こるか分からない。明日、今日、ましてや一秒先どんな事が起こるのか誰も分からない。死ぬかもしれないし何も起こらないかもしれない、ギャンブルのようなもの。それに勝つ為に生きている。私は勝ち続けたい。前に進みたい。あの娘も言ってた。


「由香里はまっすぐ前を向いてて、しっかりと自分を見つめてる。その目をいつまでも持ってて欲しいなぁ。世の中、不景気だっていうけど本当は違うんだよ。貧富の差が大きくなっただけだよ。でもそんなの関係なくどこまでも前に進んでね。こんなに人が集まる中でどれだけの人達が自分の夢を叶える事が出来るんだろう…。どんなに小さな夢でも叶えようと皆必死なんだろうなぁもがき苦しんで、悩んでそして前に進んでいくんだろうな」


どことなく儚げな笑みを浮かべて、あの娘はビルの屋上から交差点を行き交う人々をいつまでも眺めてた。あの娘が言ったからじゃないけどあたしは自分の生きたいように生きると決めた。人生楽しい事いっぱい見付けて思いっきり楽しんで、死ぬ時「あぁ

幸せな人生だったなぁ」と悔いのない人生を送ってやる。悔いの残るような損な人生を送って死ぬなんてまっぴら御免だわ。沙耶から見せられたあの娘が残した『こころの叫び』とやらを見てつくづく思ったよ。



〈DREAM〜夢〜〉

私は 今 夢を見ています。

夢の中の私はとても楽しそうに笑っています。

だから  『起きたく』ないのです。

『起きる』と私の『精神』が壊れてしまうから

『他人』の声が怖いから

そっとしといてください

そして 今日もまた私は『永い夢』を見ます。



〈眩暈〉

胸が、心がもやもやします。

ここにいると自分が真っ黒なものに

のみこまれて

私が私でなくなりそうです。

私の居場所がなさすぎて

苦しくて 苦しくて

眩暈がします。


あたしは、あの娘のようにはならない。自分で自分の道を探してみせる。そしてあたしのやりたい事を見付ける。生きているだけで丸儲け。生きているだけで勝ちなんだ。負けたりなんかしない。























      






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