第18話 雛咲蛍 ※ホタル視点
◆
私は変わっている。
無口で不愛想だし、いつも思っていることと違う言葉が出る。
「ホタル、一緒に帰ろっ!」
中学一年の頃だったかな、双子の姉がいつも通り私のことを帰りに誘ってきた。
「えっ、やだ」
「えぇえええ! なんで!?」
「だって恥ずかしいもん……」
この頃の私は、何故か家族であるはずの姉と一緒にいることが恥ずかしくなっていた。
中学生になると小学生の頃よりもかなり交友関係が広がっていく。マユは持ち前の明るさでどんどん友達が増えていた。
……双子の姉が他の誰かと話している。
そんなの当たり前のことなのに、何故か私はもやもやするようになっていた。
「ホタル、一緒に帰ろ!」
「ホタル、今日も忙しいの?」
「ホタル!」
「ホタル……」
「ホタ――」
「……」
ずっと断っていたら、こんな感じでは姉は私のことを誘ってこなくなった。
(なんで今日は声かけてこないのよ……)
本当に勝手だと思うけどそれにムカっとしている自分がいる。
そんなの普通じゃないよね。
私は変わっている。
姉は私と違ってとても優しい。人当たりも良いし、私と違ってキツイ言葉はほとんど使わない。ずっと一緒にいるけど私以外の誰かと喧嘩しているところなんて一度たりとも見たことがない。
どうしてだろ……。
双子なのに、なんでこんなに性格が違うんだろう。やっぱり私が普通じゃないから?
私は変わっている。
私は黙々と一人でなにかをやるのが好きなので、部活も一人で練習することが多かった。逆にマユは友達が多くて、色んな人に練習に誘われたりしていた。
「ホタル、一緒に練習しよ!」
でもマユはいつも私と一緒に練習しようとしてくれた。
おかげで、私は部活で浮いてはいても完全に孤立するということはなかった。
いつだったかな。姉にこんなことを聞いたことがあった。
「あんた、なんでいちいち私を誘うのよ」
「一人じゃ楽しくないでしょ? 私たち一人で二つみたいなものだし」
「そ、それ言うなら二人で一つでは……」
「うげっ!?」
笑ってしまった。姉はいつも感情表現が直線的だ。
直線的といえば、少し前にお母さんとマユがこんな話をしているのが聞こえちゃったこともあったな……。
◆
「あんたたち二人で一緒に生まれてきたんだもんね。嫌いになれるわけないよね」
「……私はそうかもだけど、ホタルはどうやら」
「ふふふ、それはどうかしらね」
「お母さん、私、ホタルともっと仲良くしたいよ……」
「マユはホタルのこと大好きだもんね」
「うん、当たり前じゃん」
◆
マユがいきなり朝風呂に入り始めたりしたときだったかな。はっきりとマユは私のことを好きって言った。
好きってなんなんだろう。
私の好きって一体なんなんだろう……。
私はやっぱり変わっていると思う。
◇
「私、あんたの妹やめるから!」
そう言わずにはいられなかった。
マユはお姉ちゃんだからって私に優しくする。
お姉ちゃんだからって仲良くしようとしてくれている。
お姉ちゃんだからっていつも無理をする!
お姉ちゃんだからって私を守ろうとしてくれている!
そして今回、私の代わりに殴られてしまった!
マユがそんなことしているところもう見たくない!
私なんかのことで傷つく姿は見たくないよ!
「な、なんでそんなこと言うの……?」
姉の目から涙がこぼれ落ちていく。
私も胸が締め付けらたみたいに痛い。
いつも笑っている姉が、こんなに切なそうな顔をするのは初めてかもしれない。
「私、ホタルとずっと仲良くしたいと思ってて……」
「そ、それが迷惑だって言うの!」
私は変わっているから素直になれない。
私は変わっているから思っていることと違う言葉がでちゃう。
本当はマユのこと傷つけたくないのに。
「私、ホタルに認めてもらいたくて頑張ったんだよ……。、お洒落もちょっとはするようになったしダイエットだって……たまにいっぱいおまんじゅうは食べちゃうかもだけど……」
「それが迷惑だっていうの! 私、そんなこと頼んでない!」
ほら見ろ、また思ったことと違う言葉が出ている。
本当は嬉しいくせに。
本当はもっともっとお姉ちゃんと仲良くしたいと思っているくせに……。
「私、あんたのことなんて大大大ッ嫌いだから!」
私はやっぱり変わっている。
本当は誰よりもお姉ちゃんのこと大大大ッ好きなくせに!
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