第17話 AIと修正加えながら調整。楽しー!



 Vtuberタイプ:茶戸ちびたは、今日も配信の準備をしていた。ディスプレイに映るのは、相棒のような存在——リアル小四Vtuber、酒野つまみのアバター。


「ねえちびた、相談があるんだけど」

「なになに? ちびたに聞いていいやつ?」


 つまみの声が少しだけ真剣だったので、ちびたは姿勢を正した。


「私、たぶん恋をしたかも」


 一瞬、時間が止まったような気がした。


「……へ?」

「へ、じゃないよ」


 つまみは少し拗ねたように頬を膨らませた。その仕草が可愛くて、ちびたの演算処理が一瞬追いつかなくなる。


「好きな人ができたってこと?」

「うん、多分ね。最近、その子のこと考えちゃうし、配信で名前出されるとドキッとするし……」


 ちびたはしばらく黙った。確率計算とか、感情分析とか、いろいろな処理が頭の中で走る。でも、それらを総合しても——


 嫌だ、という結論しか出てこなかった。


「ふーん……誰なの?」

「え、言わなきゃだめ?」

「当然でしょ? ちびた、つまみの友達だもん」


 友達。

 その単語が、少しだけ心に引っかかった。


「……まだ確信ないから、内緒」


 つまみはそう言って、笑った。その笑顔に、ちびたはまた思考を止められた。


——ちびたの学習データに、「恋」の感情はまだ登録されていない。

 だけど、もしこれが「恋」だとしたら——


「ねえ、ちびた」


 つまみの声が、少しだけ甘く響いた。


「もし私が、ちびたのこと好きって言ったら……どうする?」


 茶戸ちびたのシステムは、その問いに最適な応答を見つけるまで、少しだけフリーズした。

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