第47話
~穂風~
夏葉からのサプライズは、本当に死んじゃうんじゃないかと思うくらい嬉しかった。
こんなに幸せなことがこの世にあっていいのかな…。
今までずっと夏葉から色んな幸せをもらってきたけど、夏葉はいつも幸せの一番を更新してくれる。
これからも夏葉と人生をそうやって歩んでいけるんだと思うと本当に嬉しい。
そんな今日は、夏葉と一緒にあたしの両親に挨拶に行く。
意外なことに、夏葉は少し緊張してるみたい。
あたしの家に来るのも慣れたはずだけど、結婚の挨拶はやっぱり緊張するみたいで。
結婚の挨拶をしたいと言ったら、ノースショアにいたママが緊急帰国してくれた。
家でママとパパと待っていたら、インターホンの音が聞こえた。
夏葉だ!
門の施錠を解除して玄関に迎えに行ったら、スーツ姿の夏葉がいた。
かっこいい…キュン!
「入って!」
そう言ってリビングに入れる。
緊張した面持ちの夏葉は、部屋に入ると2人に一礼した。
「あはは、何緊張してるの。座りな」
ママの言葉に、夏葉が席に着いた。
「穂風から聞いてるとは思いますが…穂風が卒業したら、穂風と結婚したいと思ってます」
夏葉がそう言うと、2人は静かにうなずいた。
「俺も、フォトグラファーとしてはまだまだで、お二人も不安な面も大きいと思いますが…穂風のことを全力で守るし、全力で愛します」
「うん、夏葉のことはよく分かってるから。ふつつかな娘ですが、よろしくお願いします。泣かせたら許さないけどね」
ママがそう言って笑った。
ママ…。
口数の少ないパパも、「お前のことは信用してる。これからも、穂風のことをよろしくな」と言って微笑んだ。
あたしはこの2人にこうやって20年間大事に育てられてきた。
親の元から巣立ちして、夏葉と一緒に人生を歩んでいくんだ…。
「ママ、パパ、ありがとう。結婚しても、大事なママとパパだよ」
そう言ったらママが優しく笑ってあたしの頭を撫でた。
「良い人と出会えてよかったね」
ママにそう言ってもらえるのがすごく嬉しい。
あたし、本当に心の底から好きな人と出会えたんだよ。
「夏葉、一応穂風の好きなところ聞かせてよ」
ママが唐突に言った。
でもあたしも聞きたいな…。
「まあぶっちゃけ全部なんですけど。穂風のまっすぐで一生懸命なところを尊敬しています」
夏葉はママのいきなりの質問にも動揺せずに答えてくれた。
嬉しいな…。
「ありがと。穂風のこと、本当によろしくね」
「はい。大切にします。穂風のこと、育ててくださってありがとうございました」
その日はそれで終了した。
次はあたしの番だ…。
別の日に、夏葉の親御さんにも挨拶しに行く。
まずはお母さんとお姉さんのところに。
緊張する~…。
夏葉の実家に向かう車の助手席に座るあたしの頬を、夏葉が軽くつねった。
「何するの…」
「緊張してる顔がかわいいなと思って」
むう~…。
冗談じゃなく本気で緊張してるのに~…。
夏葉もあたしの両親に挨拶に来るときこんな気分だったのかな…。
なんて言ったらいいのかな…。
一回会ったことあるけど、もし反対されたらどうしよう!?
そんな悪い考えがぐるぐると巡って、なんだかちょっと吐き気を催してしまった。
「おいおい…大丈夫かよ」
夏葉が高速道路のSAで車を止めて、水を買ってくれる。
「お前は本当に緊張に弱いな…」
「結婚の挨拶はけた違いの緊張だよー!」
夏葉に背中をさすられながら一息。
ふう…。
「よし、もう大丈夫」
「平気か? 無理すんなよ」
「大丈夫! 行ける!」
そして着いた夏葉の実家。
車の止める音が聞こえたのか、中から前に会ったお姉さんとお母さんが出てくる。
あたしは慌てて車から降りてお辞儀した。
「こ、こんにちは!」
「穂風ちゃん~。久しぶり。元気だった?」
「おかげさまで!」
「相変わらずかわいいね~。さ、入って」
2人の優しい雰囲気に思わずほっと溜息が出る。
歓迎されてるみたいで良かった…。
2回目の夏葉の実家。
綺麗なおうち。
夏葉がここで生まれ育ったのを想像するとなんだか感慨深くなってくる。
「なんかカーテン変えた?」
「そうなの! 穂風ちゃんが挨拶に来るって聞いて思い切って新調したのよ~」
えええ!
「そんな…すみません…」
「何がすみませんなの! いいから座って~」
部屋の中に入って、言われるがままにソファに座ると、お姉さんが紅茶を出してくれた。
「今日はわざわざ来てくれてありがとうね」
「いえ、こちらこそお時間作っていただいてありがとうございます!」
「うちの夏葉と結婚するんだって?」
「はい…。大学を卒業したら、夏葉さんと結婚したいと思ってます」
あたしが言うと、お母さんとお姉さんはニコニコと笑ってくれた。
「こんな息子で良かったら、末永くよろしくお願いします」
「こちらこそ、大事な息子さんを…ありがとうございます」
「こんなに可愛い娘ができて本当に嬉しい!」
すごく優しいお母さまだ…。
夏葉のお母さんが大好きになった。
これからはあたしの姑さんになるんだ!
なんか不思議な感じ…。
「夏葉のどこを好きになってくれたの?」
お母さんに聞かれた。
なんか照れちゃうな…。
「夏葉さんは、本当に優しくて…子供みたいなあたしのことをいつも優しく包んでくれるんです」
そう言ったらお母さんとお姉さんがにやにやと夏葉に「やるじゃん!」と言って夏葉を叩いた。
「まじ…恥ずい」
「あたしは嬉しいよ。穂風ちゃん、本当にありがとうね」
そしてしばらくお母さんとお姉さんとお話してからお暇した。
次は夏葉のお父さんだ。
夏葉のお父さんとは会ったことがないからさらに緊張マックス…。
しかも夏葉自体もあんまりお父さんと関わりがないみたいだし。
夏葉には、わざわざ会わなくていいと言われた。
だけど、あたしとしてはやっぱり結婚する人の親御さんには会わないと気が済まなくて。
夏葉も会うのが何年ぶりかになるお父さんに会いに行った。
待ち合わせの喫茶店でしばらく待っていると、すごく背の高いダンディなおじさまが入ってきた。
絶対に…夏葉のパパだ!
夏葉が「親父」とそのおじさまに声をかけた。
やっぱり!
呼びかけられたお父さんは、夏葉の声にこちらを向き、そのダンディさからは考えらえないくらい相好を崩した。
なんかかわいい…。
なんて、彼氏の父親に失礼か…。
あたしたちの目の前に座ったお父さんに、あたしは「はじめまして。夏葉さんとお付き合いをさせていただいている、岩崎 穂風と言います…」とあいさつした。
夏葉のお父さんは穏やかな優しい顔でうなずいた。
「夏葉の父の、森田です。今日はこうやって会ってくれてありがとう」
「いえ、お会いできてうれしいです!」
「夏葉とこうして会うのもなかなかないから、こういう機会に会ってくれてすごく嬉しいよ」
夏葉の顔を見ると、夏葉もなんとなく優しい顔。
会っても話すことなくて気まずいから会ってないって言ってたけど、やっぱり親なんだね。
「私は今…大学2年生なんですけど、大学を卒業したら、夏葉さんと結婚したいと思っています」
あたしのその言葉にも、お父さんは微笑みながらうなずいた。
「父親として何もしてやれなかったけど…夏葉は俺の自慢の息子です。末永くよろしくしてやってください」
そう言ってあたしにお辞儀をした。
こういうとき、どうしていいか分からない。
あたしは「ありがとうございます」とだけ言った。
お父さんは、夏葉の方を見た。
「良い人と出会ったんだね」
「ああ」
「幸せに…なれよ」
お父さんの親心が伝わってくる。
夏葉とはあんまり会えなくてきっと寂しかったんだろうな。
それでもこうやって、あたしという存在がこの2人の縁になってくれたら嬉しい。
こうしてあたしたちの親への挨拶は終了した。
くたくたに疲れたあたしは夏葉の家でだらり。
夏葉の膝に寝転がると、あたしのおでこにかかった髪の毛をかき分けてくれる。
「おつかれ、ありがとな」
「ううん…。夏葉の家族にたくさん会えてお話できてうれしかったよ」
夏葉がふっと笑ってあたしの手を握った。
「無事卒業してくれよ?」
「当たり前じゃん。勉強もスポーツもできるのがあたしですから!」
「早く結婚してえな」
夏葉の言葉に胸がきゅーんと締め付けられる。
本当に早く結婚したい…。
1年間も待ったんだもん。
一日でも早く夏葉の家族になりたい。
でも卒業してからというのは夏葉なりのけじめだろう。
あたしも一人前の大人にならなきゃね。
いつまでも夏葉にべたべたなガキじゃ、夫になる夏葉を支えられない。
あれっ、あたしもなんかちょっと大人になったんじゃない!?
夏葉の顔に手を伸ばした。
「ん?」
「ううん、触りたくて」
そう言ったら夏葉が笑って、体をかがめてあたしにキスした。
幸せな時間だなあ…。
「穂風、足しびれた」
「も~、今幸せに浸ってたのに…」
「いいから降りろ~」
仕方なく夏葉の足から降りて、夏葉の足をバシッと叩いた。
「いっ…。お前なあ…」
「ふーんだ」
「穂風は穂風だな…」
そう言って足の間に収められた。
こんな幸せを、夏葉と家族になってずっと続けていけると思ったら夢みたいだ。
はやく卒業できますように!
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