第五話 オカルト案件(一)

 「槙島夢の件、なんで教えてくれなかったの!? 弩級のオカルト案件じゃん!」

 もう関わり合いになることはないと思っていた顔が僕を非難する。

 橘未明。

 オカルト好きの変わった女子大学生。この間までは金髪だったショートヘアが今日はピンク色になっている。

 「いや、なんでって言われても……」

 「和泉っち、水臭いよ! あの夜を忘れたわけ!?」

 誤解を生む表現はやめていただきたい。本当に。

 ただを一緒に潜り抜けただけだ。

 というか、ちょっと待てよ。

 「そっちこそ、なんで槙島さんのことを知ってるんだよ」

 僕の疑問に彼女は目をぱちくりさせた。

 なんなんだその反応は。

 「えーと、まぁ、それは企業秘密……みたいな?」

 そう言って橘さんは音の出ていないカスカスな口笛を吹いてわざとらしくシラを切った。それからどれだけ追及しても彼女は「さぁ?」「夢で見た」「守護霊が教えてくれた」などとはぐらかし続ける。いい加減バカバカしくなった僕は「もういいよ」と話を切り上げた。

 今朝のメッセージを見た僕はそれに返事をせず、何事もなかったかのように周や間宮と共に大学へ。するとそれを見越したかのように橘さんが正門近くで待ち構えていたのだった。

 逃げも隠れもできず、あえなく捕まってしまった僕は彼女に引きずられてサークル棟の二階にある談話スペースへと連れてこられた。

 一緒に通学してきたふたりはと言うと、周は華麗な見て見ぬふり。そして間宮は「席、取っておくわ」とあっさり見捨てて行ってしまった。まったく友達甲斐のない奴らだ。

 「そう、それは置いておいてよ。私はただこの件に関わりたいだけなの!」

 「関わるって……どういう意味でだよ」

 「んー、徹頭徹尾? ゆりかごから墓場まで?」

 こういう文脈にはふさわしくない表現だが、つまりは最初から最後まで徹底的に、という意味だと受け取った。理解はしたが、僕の一存では何とも言えない。この件については周 (と一応間宮)の意思確認が必要だろう。

 そのことを橘さんに伝えると彼女はうんうんと大きく頷いた。そして「わかった!」と談話スペースに響き渡るような大声を上げ、さらに拳も振り上げた。

 わかった、って何がだよ。

 「だからー、周さんにOK貰えればいいんでしょ? そんなの簡単簡単!」

 胸をドンと叩いて見栄を張った。なんか前にも見た仕草のように思えた。

 「あれ、橘さん、周と知り合い?」

 「いや、全然面識ないよ」

 無いのかよ。

 思わずパイプ椅子から転がり落ちそうになった。

 「でもどうにかなるよ。ってかどうにでもする。交渉は得意なんだよねー。ま、心配してくれるのは有難いけどさ」

 心配なんて米粒程もしていないが。

 「うん。まぁ勝手にしてくれ。僕は正直に言ってどっちでもいいし」

 「よーし! まずは周さんの確保だなー。じゃあね! いずみん! 一緒に指輪を探そうね!」

 そう言って橘さんは談話スペースを飛び出していった。僕は倦怠感から沈み込むようにして座り直した。

 って、こんなことしてる場合ではない。僕も行かなければ。

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