2. ぽっこり王子とホコリ王国その二
その辺を治める誇り高いホコリ王国その一から元気に飛び出してしまったぽっこり王子は、ふわりと床に
ふとふり返ると、はるか遠くの方に自分のいた王国が、うっすらとよせ集まって少し大きな小さなかたまりになっています。
どうやら、王国はとつぜんの
今のところ、誰もぽっこり王子が外の世界に飛び出してしまったことには気づいていない様子です。
「これは、もしかしてチャンスなのでは?」
イタズラざかりのぽっこり王子は、悪びれる様子もなく、にんまりとふわふわした口元を
「かわいい子には旅をさせろってね。これはぜっこうの良いきかいで、これは、ぼくが
おや、まあ。
なんてたくましい
そうと決意をしたとなれば、ぽっこり王子は
「よーし、まずは、
「いざ、広い世界へ!」
ぽっこり王子は張り切って一歩を踏み出します。
もちろん、気分は上々です。
広い床の上を、まるで
そのまま、たんすの
「こんにちはっ!」
「あら、こんにちは。旅のお方?」
「はい! これからいろいろ見て回るつもりなんだ!」
「あら、元気が良いこと。それなら、この道をまっすぐ進むと良いですよ。道中、お気をつけて」
「ありがとう!」
おやおや、本当に誰もぽっこり王子が高貴な王子様だと気が付きません。
すっかりと
どんどん、どんどん。どんどん、進みます。
「やや、これはまた、大きな王国だなあ!」
隙間を進み、さらにその奥へと進んでいくと、
門番たちも、もこもことした分厚い灰色の
「こんにちはっ!」
「……」
あらあら、門番たちは分厚い装備のせいで耳が塞がっているのかもしれません。
しばらく黙って門番たちを見上げていたぽっこり王子は、もう一度元気に、もっと大きな声で挨拶をしてみます。
「こーんにーちはーっ!」
「聞こえておる。何やつだ」
「なんだ、聞こえてたんだ。ぼくは、ぽっこりくんです。旅の途中です。通してくれませんか?」
「……」
門番たちは、またしても黙りこくってしまいます。
仕方ないので、ぽっこり王子はもう一度、大きな大きな声で挨拶から始めなければならないようです。
「こ——んに——ち」
「聞こえておる。旅の目的は」
「王国の見学です!」
元気に答えたぽっこり王子の両目は、いっぺんの
門番たちは互いに
じっと黙って待っていたぽっこり王子は、ようやく王国の門をくぐることができました。
「わあ、本当に大きいなあ! 何階だてなんだろう!」
壁とたんすの背板の間に広がる誇り高いホコリ王国その二は、ぽっこり王子の目の前にうずたかくそびえ立ち、天井に届くかと言わんばかりです。
静かに降り積もる小さなホコリを
「この国は、まだまだあんたいだな!」
うんうんとうなずきながら、ぽっこり王子は整えられたホコリの道を進みます。
道はやがてもっと整備されて、もっと大きな道になり、その先は
外堀だけを眺めて立ち去ろうとしていたぽっこり王子の目の前で、重厚なホコリの扉がずずずとホコリを巻き上げながら、ゆっくりと開かれていきます。
「お若い旅のお方、よう来なさった」
これは、これは。
お城から
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