第003話 『スケルトンの涙と真珠の葉の真珠』
3人は外に出て移動の準備をする。その前にルースがダレンに尋ねる。
「ダレン、必要な素材はなんなんだ?」
「さっきあの子を見て確認したが必要な素材はこれだな」
必要な素材
・真珠の葉の真珠 難易度☆1
・スケルトンの涙 難易度☆5
・いばら姫のいばらの棘 難易度☆8
以上
難易度は☆で表される。
難易度☆1は一般人でも入手可能。
難易度☆2は冒険者であれば入手可能。
難易度☆3は冒険者の中でも中級者であれば入手可能。
という形で☆が増えるほど難易度が高くなる。
難易度は☆15まである。
これはあくまで《ある冒険者》がつけた難易度である。
難易度最上級の☆15を入手できる人間は世界に5人も存在しない。
その素材を見て2人はまたも驚く。
「レア素材ばかりではないか!それにいばら姫のいばらの棘となるとまさか《植物王の城》へ向かうのか!?」
「そうだ。それが必要だからな。彼女はこのままでは死ぬ、そんな簡単な旅なわけないだろ」
呆れた様子のダレンだったが無理もない。
《
あれから400年。誰一人として《八貴族》を倒せた者はいない。
人間がこうして生活できているのは"魔王の気まぐれ"にすぎない。
だからこそ、当然だった。
「その通りだな、分かった。行こう、回復アイテムも必要だ」
真夜中、道具屋を叩き起して謝りながらアイテムを買って3人はようやく準備を整える。
そして、アイテムを揃え《
これから《素材》を採取する旅に出ようと言うところでルースはダレンに深刻な顔をした。
「八貴族の一人、《いばら姫》と戦うということでいいのか?」
「いやそんなことはしない。植物王の城には近づくが城の中には入らない。あくまで素材を手に入れるだけだ。だが、あの城の近くには食人植物が沢山いる。気を抜くなよ」
ダレンは2人に伝える。
「あ、あぁ。もちろんだ。俺は剣術を何年も磨いてきた。前までは騎士もしていたんだ、そう簡単に殺られないさ」
「私もです。魔法使いとして何十年と経験は積んでおります。どんな敵が相手だろうとやっつけます」
威勢が良くなった2人にダレンは苦笑しつつ、告げる。
「2人とも運がいい。この場所に彼女を連れてきたのは正解だ、なぜなら素材はここから急いでも1日歩ければ素材が手に入る」
他の城であればここから何ヶ月も歩くことになる。それを考えれば運が良かったと改めてルースは感じた。そして何よりもこの解除師が植物王の城の近くに住んでいてくれてよかった。
「あぁ、じゃあ出発しよう」
3人は歩き始める。
まず手に入れるのはスケルトンの涙だった。
-スケルトンの涙の採取-
スケルトンの涙とは特殊な方法で手に入る素材である。
スケルトンの涙は普通にスケルトンを倒すことでは入手できない。
その方法はスケルトンにある程度ダメージを与えた後、聖水を何度も少量ずつスケルトンへ与える。すると、スケルトンから出てくるはずのない涙が段々と滲み出す。聖水の量はスケルトンごとに異なり、少しでも量を間違えればスケルトンを倒してしまうため、その調整は熟練の冒険者でも難しいとされている。
また、スケルトンの涙は倒された瞬間蒸発するため、スケルトンを倒さずに滲み出た涙を入手し、倒さずにそのまま放置しなければならない。
倒された瞬間蒸発するが一定の時間(スケルトン事に異なる)経過するとようやく蒸発しなくなる。最長でも3時間はスケルトンを倒さず放置することが必要である。
「ってことで目の前のスケルトンから素材を摂る」
「ではどうしましょう」
場所は変わり、数時間歩いた夜道。スケルトンが現れたため"スケルトンの涙"を入手するために悪戦苦闘していた。
「俺が聖水をかける、絶対にだ。これだけは譲れない。でなければ素材はとれないだろうからな」
「はい、よろしくお願いします」
オーウェンがダレンに反応する。そして、ダレンはオーウェンに魔法を使うように伝える。
「オーウェン、魔法で攻撃してくれ。俺が大丈夫と伝えたら攻撃を辞めてくれ」
「分かりました!魔法を使い攻撃します」
オーウェンは魔法を詠唱する。
────サンダーボルト
杖の先に黄白の光が現れる。閃光と共に音を立てながら雷がスケルトン目掛けて飛んでいく。スケルトンに直撃した瞬間動きが鈍る。
「オーウェン、ナイスだ!」
ルースの声にオーウェンは手を挙げて反応する。
ルースは自分の剣でスケルトンを攻撃していく。
そんな中ダレンは聖水を手に持って時を待っていた。
「今だな」
ダレンが動く。
ダレンは二人が気づけないほどの速さで移動し、スケルトンの顔を掴み、近くの木にそのままぶつける。
「は、速い!」
次に紐を手に取りスケルトンを木に巻き付け、動けないようにする。その間、2人は佇んだままだった。
「ダレン殿、先程の動きは…」
明らかにこの男は強い、それを動きだけで2人は感じ取っていた。
「2人とも周りのスケルトンを頼む」
ダレンの指示で周りのスケルトンに向けて剣を向け、杖を向ける。
そして、ダレンは聖水を取り出した。
「ふぅ…」
微量、一滴か二滴ずつをスケルトンに向けて垂らす。その瞬間、ダレンの額に汗が滲む。
一滴、、、、
スケルトンが苦しそうに動く。
二滴、、、、
スケルトンが苦しそうにもがく。
三滴、、、、
スケルトンが激しく動く。
ルースとオーウェンはスケルトンを全て倒し、ダレンの元へと駆けつける。
その間もダレンは聖水をかけ続ける。
2人は息を飲み、ダレンの動きを見て緊張が高まっていた。
「ルース様、ダレン殿の動きは異質です。あの動きは王国の冒険者のようです」
「あぁ、分かっている。だからこそ信頼出来る」
ダレンは滲む汗を手で拭う。
そして、十一滴目でようやくスケルトンに変化が訪れてる。
スケルトンの動きが止まる。先程まで暴れていたスケルトンが嘘のように全く動かなくなる。
そして、十二滴目を与えた時、カタッと頭が動き沈む。
そして、スケルトンの目から出るはずのない水が滲む。
「きた────」
思わずルースとオーウェンは言葉を口にしていた。
「これがスケルトンの涙…?」
「凄いですぞ、ルース様!」
子供のようにはしゃぐ2人に対しダレンはそれでも冷静だった。
ダレンは細長いガラス管を手に取りスケルトンの涙を採取する。
「ふぅ…」
一定の量を時間をかけて入手してからダレンは立ち上がった。
「終わったんだな」
「あぁ、採取完了だ」
2人はようやく安堵する。普通ならスケルトンは倒すべき相手であるが今は違う。それにこのスケルトンは一定の時間倒してはならないのだ。
「
ダレンは魔法を詠唱すると、スケルトンの姿が見えなくなる。
「
「あぁ。これでも魔法使いとして生活してきたからな。魔法は《
2人は驚いた様子でこちらを見る。
「それは凄いですね、今の時代は《新魔法》と《現魔法》が主流ですから」
《新魔法》・・・新たに作られた魔法。
《現魔法》・・・一般的に使用される魔法。
《旧魔法》・・・現在は使用されていない、百年前まで使用されていた魔法。また、上位魔法が生み出されたことで使用されなくなった魔法。
《古代魔法》・・・数百年前に使用されていた魔法及びダンジョン等から見つかった古い魔法。
「確かにな。ただ、解除師にとって必要のない魔法はない。《新魔法》や《現魔法》が呪いや病気には通用しないことがある。《旧魔法》や《古代魔法》でなければならない、そんなことがあるんだ。特に《八貴族》の呪いにはな」
「私たちは戦うことや利便性の向上のために魔法を使用してきました。あなた方にとっては《旧魔法》、《古代魔法》が必要な魔法ということですね」
「あぁ。恐らく《医師会》の人間に聞いても同じ言葉が返ってくる。でも今回のスケルトンについては"暗幕"ではなくてもいい。消費する魔力も小さいから使っただけだ」
「ダレン殿は若いのに経験があり、知識がある。それに頼りがいがある。ルース様、ダレン殿は目標にすべき人ですぞ」
「あぁ、話聞いてて思ったよ。ダレン、あんたは本当にすごい人だ。スケルトンなんて倒す敵って気持ちしか無かった。でも、あんた達にとっては違うんだな」
「人によるだろう、今回たまたま"スケルトンの涙"が必要になっただけだ」
ダレンがそう言うとルースは口角を上げた。
「よーし!スケルトンの涙は手に入った!次に行こう」
2人からの賞賛を得たあと、ダレン達はそのまま次の場所へと移動を開始した。
「次は真珠の葉だな」
次の素材は《真珠の葉の真珠》
真珠の葉は初心者でも取れるアイテムである。葉っぱの中に真珠を蓄える葉っぱということでその名前がついた。葉っぱが2枚貝のように重なっておりその中に真珠ができる。
ただ、採取する方法は少し凝っているため始めたての冒険者が挑戦するクエストに多い。
~簡単な真珠の葉の採取の仕方~
1.まず、持ち物として水と塩を用意します。
2.真珠の葉を見つけます。
3.次に真珠の葉に向けて水を数滴垂らします。
4.その後、塩をひとつまみふりかけます。
5.すると、真珠の葉が開くように動きます。
6.それを数度繰り返します。
7.すると、真珠の葉っぱが開き、葉っぱの中から真珠が現れるためそれを採取します。
以上、簡単な真珠の葉の採取の仕方でした~
「取れた!」
子供のように喜ぶルースを見てダレンは少し口角が上がった。
「いい調子だ、ルースそのまま採取を頼む」
「任せろ!」
真珠の葉の真珠を手に入れた3人はようやく一日と半分の時間をかけて植物王の城から何キロも離れた城の入口に着いた。その時は真昼だった。あと1日と半分。早く"いばら姫のいばらの棘"を採取しなければならない。
「着いたな、2人とも気を引き締めてくれ」
城門は高い鉄製のフェンスがずっと続いていた。
中が確認できたがフェンスの中は木が生い茂っている。ただ、誰かに見られている視線をずっと感じていた。
「見られてるな、植物共に」
「まさか…」
2人はそこでようやくわかった。見られていたのは植物からなのだ。
ここに入らなければならない。2人はそれでも覚悟は決まっていた。
何よりも城の城門の近くに来ただけで圧を感じる。まだ見えてすらいないが、この敷地内は植物王がいる場所なのだ。
《植物王:いばら姫》
数々の冒険者を栄養分にした植物の王。今からその魔物のいる範囲へ入るのだ。普通なら自殺行為、だからこそ2人は真剣な目付きに変わる。
入口は誰かが中に入ったのか少しだけフェンスの門が開いている。
「じゃあ行くぞ」
「えぇ、参りましょう!」
「おう!」
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