02-03:トレッキング部へようこそ!

「えー、わがトレッキング部に新入部員だ。ほれ灯、あいさつ」

「は、はい」


 トマトプリッツをタバコのように咥えた利賀先生に背中押されて、トレッキング部の部室の前方へ。

 入学してから初めて入った部活棟。

 小規模部活の部室が並んだ、大きめのアパートのような建物。

 室内には、ホワイトボード、ノーパソ、プリンター、壁には大きめの地図が数枚。

 それから、折り畳み式の長い机とパイプいす。

 そこに座ってる蔭山さん。

 アンド見知らぬ女子。

 中肉中背、丸っこい顔、温和そうな丸い瞳。

 赤っぽい色味の髪は、左右でシニヨンにまとめてる。

 制服のリボンが青色、2年生……先輩だ。


「あ、ええと……。1年2組、灯和泉ですっ! トレッキングは未経験なので迷惑かけるかもですが、よろしくお願いしますっ!」


 ──パチパチパチパチッ!


 深々とお辞儀したあたしのつむじへ、二人分の拍手が。

 蔭山さんと名前知らない先輩が、笑顔で拍手してくれてる。

 にへらっ……って緩い笑顔の先輩が、立ち上がって一歩前へ。


「灯さん、トレッキング部へようこそ~! 部長のしなです~!」

「ど、どうも……」

「あなたを入れて3人の、小さな部だけれど~。これから実績積み重ねてぇ、大きくしていきましょ~!」

「はいっ! って……あの、部員3人なんですか?」

「なにぶんマイナーな活動ですからぁ……あはは~。本格的に山登りしたい人はぁ、登山部へ入っちゃいますしね~」

「はあ……」


 3人……。

 この学校、そんな少人数で部活作れるんだ。

 漫画やゲームの部活って大抵「5人集めなきゃ!」だから、てっきり5人が最低ラインだとばかり。

 ……あ、いや。

 あたしきょう入部したから、いままで二人だったんだ。

 ということはこの先輩、この2カ月、蔭山さんと二人っきり……。

 このこじんまりとした部室の中で、先生いないときは二人っきり。

 やばい、かなりリードされてる。

 なにをどうリードされてるのかは自分でもわかんないけれど、2カ月分の出遅れを埋めるために頑張らないとっ!


「あ、あの……あたし、体力には自信ありますから、いつでも登れます、山っ! さあ、いますぐ連れ回してくださいっ!」

「えっ……?」


 ……えっ?

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