第3話 プリっとした芋虫助けました。(3)

 

 3年前。私が中学1年生の時。

お父さんと車で週末の買い出しに向かってた時だった。

それはいつもの日常だった。

日常の中で突然、目の前が真っ暗になった。


その時の記憶は、目の前にお父さんが必死な顔して覆い被さってきた所まで覚えている。


起きたら顔から上半身にかけて火が出る様に痛く、包帯をぐるぐる巻きにされている状況だった。


お父さんは下半身付随。

歩けない体になってしまった。


その時だった。いつも元気で明るいお母さんが目の下にクマをつくり苦しそうな声で泣いてる姿を見たのは。


そこから家族の形はすこし変わった。

お父さんは車椅子生活。

以前までは、仕事をバリバリこなし、週末になると家族サービスをするべく優しい笑顔で私とお母さんをどこかに連れて行ってくれていたが、

事故後は動けない体に対して、精神的に弱っていき人が変わった。

お母さんは専業主婦から、会社員になり毎日残業もしながら働く一家の大黒柱になった。


私も顔に大きな傷が残り、顔を見るのが嫌になった。塞ぎ込む様におしゃれも、友達付き合いもしなくなった。


お母さんは、私とお父さん2人が暗くなってしまっている事を何とかしようと、知り合いから一匹の子犬を預かってきた。


それが、こげ丸。


茶柴だが、耳の先、足の先、尻尾の先だけ色が濃く、焦げている様に見えたからこげ丸と名前をつけた。


無邪気に遊びまわり、物を壊し、へそ天で日光浴している姿は、塞ぎ込んでいた2人の心のモヤを消し飛ばした。


こげ丸の居場所は、ソファーかお父さんの膝の上。

すっかりデレデレで、毎日朝晩、車椅子でお散歩をしている。表情は暗く無く、事故前の様に優しい笑顔を見せる様になった。


私もこげ丸に心を救われ、学校にもちゃんと通い友達も作った。

顔の傷は上半身まで繋がり、体を動かす運動はできない。

皮膚がつっぱり思う様に動けず、心の中には未だ劣等感は有るものの、最近は交流の多い部活に入ろうと仮入部もしてみている。

できないことは増えたが、興味あることはやってみようと最近は前向きだ。



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