26.クリスマスプレゼントは〜……?

 明霞めいかちゃんがなにやら日記を書いていたみたい。


 いやいやいやいやいや。べ、別に? 見るつもりは無かったんだよ? 本当だからね!?


 明霞ちゃんのお部屋を掃除した時にたまたま見つけちゃったんだよね。


「およ……?」


 しかもちょうどページが開いてあった。タイミング良く明霞ちゃんもいなかったからついつい。


───────────────────────


『もうそろそろクリスマスが来るわ。


 プレゼントどうしようかしら?


 どうせなら、ちゃんとした物を贈りたいわね。


 でも栞里さんは喜んでくれるか分からなくて、


 とても怖いわ……』


───────────────────────


 …………はいっ!? え、は、えっ?


 私はあまりのギャップに脳に過剰な尊さを摂取して思考が停止した。


「ち、ちょっと……!? な、何してるのよ!」


「……ハっ!? め、めめ明霞ちゃん! こ、これって!」


 部屋に戻ってきた明霞ちゃんの声に我に返り、ノートを指差したら早足で来てノートを手に取って隠すように抱きしめた。


「な、ななななんで見たのよ!」


「ページ開いたままでさ〜」


「んなぁ……」


 カァ〜ッ! と顔を赤くした明霞ちゃんが某アビスの鳴き声をあげて床にぺたっと座り込んだ。


「あ、あーっとねの、覗いたのはごめんだけど……でもその……」


「う、うぅ〜……! し、栞里しおりさんッ!」


 目の端に涙を溜めながらビシッと人差し指を突きつけてきた。


「ぜ、ぜぇ〜ったいにっ! あっと言わせてやるんだからぁ!」




 クリスマス当日。雪が軽く降っているのを窓から眺めながら暖房を効かせた私のお家でクリスマスパーティーが始まった。


「栞里〜、ご飯出来たわよ〜」


「あ、は〜い」


 お母さんに呼ばれて、お皿をテーブルに運ぶ。


 ──────ピンポーン。


「あっ、来た〜!」


 インターホンが聞こえてようやく来た! と思って駆け足で玄関に向かって扉を開ける。外にいたのはやっぱりマフラーに口を埋めた明霞ちゃんだった。


「いらっしゃいっ! 明霞ちゃん!」


「声が大きいわよ」


 明霞ちゃんは何か少し大きな袋を片手に玄関に苦笑してマフラーを少しだけ下げて、私のおでこにちゅーしてきた。


「〜〜〜〜〜っ!?」


「ふふっ。ノート見られたお返しよ。お邪魔するわね」


 急におでこにちゅーされて固まった私に微笑みながら頭を撫でてきてそのまま上がっていった。


 ────ひ、ひきょーすぎるよぉ〜!!!!! も〜ちゅきぃ〜!


 きゅぅって心臓が締め付けられるような痛みだけどドキドキが止まらなくて顔を手で覆ってうずくまる。


 しばらくそうしたあと遅れてリビングに入る。お母さんたちと楽しそうにしてる明霞ちゃんが目に入り、最初の頃よりも朗らかになってて自分のことのように嬉しい。


「えっ!? ムニエル作れるなんてすごいわ!」


「簡単だと思……いや、そうだな。うちの家内はすごいだろう」


 お父さんはたまにノンデリなことを言うからギッと睨むとお父さんは言葉を変えた。それでよし!


「明霞ちゃんってムニエル好きなの?」


「好きというより作るの難しいんじゃ? って。違うのかしら?」


 め、明霞ちゃんの純粋な瞳! 実際には楽なんだよ〜なんて言えない! でも私、嘘つくの苦手で……んぐっ!


「む、……ずかしいよ〜? うん。難しいよねお母さん!」


「えぇ、そうねぇ」


 さすがお母さん。空気読むの上手い!


「さて、それじゃあ冷めないうちに食べましょう」


 お母さんは手を叩いて私たちは頷いて席についてクリスマスパーティーが始まった。


「そういえば明霞ちゃんのご両親はどうしたのかしら?」


「聞いてみたら仕事が外せないみたいね。仕方ないわね」


「あっ、私お母さんに会ったことあるけど、すごいいいお母さんって感じだったよね」


 恐らく明霞ちゃんのお母さんとお父さんは配信をしているんだろうなぁ。クリスマス配信ってすごいみたいだし。


「そうなのねぇ。会えたらちゃんとお礼しようと思ったのよね」


「あたしから言っておくわ」


 お母さんったら真面目だなぁ。あ、このローストビーフうんまぁ〜。


「……ん? 明霞ちゃん、スマホ震えてるよー?」


「そう、みたいね?」


 明霞ちゃんは首を傾げて箸を止めてスマホを見たら驚きで固まって次いで嬉しそうに笑った。

 きっとお母さん辺りからのメッセージかな? って思ってその笑顔が私にとって何よりの嬉しいことだった。




 ご飯を食べ終えたあと、私の部屋に明霞ちゃんを連れてきた。


「あ、あんたまた増えてないかしら?」


「えっへへ〜。すごいでしょ」


 夢はこの部屋を明霞ちゃんみたいな部屋にすることなのだ。私はにひっと笑ってピースした。

 今の部屋は本棚を増やして、そこに新しく出たブ○アカのグッズを飾り始めた。ウエハースやコンビニコラボグッズとかだけど。


「……これだと飾れる場所ないじゃない」


「ほよ? なんか言った?」


「……目を閉じなさい」


 言われた通り目を閉じるとガサガサ音がした。

 え、なに? すんごい目開けたいんだけど!?


 頑張って目をギュッて瞑っていると、次第にその音がなくなった。


「良いわよ」


「……わ、えっ……えぇっ!?」


 明霞ちゃんが抱いていたのは結構大きなぬいぐるみだった。


「は、はいこれ。……メリークリスマス」


「えっ、い、いいの!? だ、だってこれ……」


 そのぬいぐるみは限定版なのだ。私はそれが欲しかったけど抽選に外れて諦めてた。だけどそれを明霞ちゃんは……。


「あげるわ」


「いい、の?」


「えぇ」


「ありがとうっ!」


 明霞ちゃんから手渡されてぬいぐるみをむぎゅぅと抱き締める。とっても嬉しい。


「ねぇ、明霞ちゃん」


「なぁに?」


「私、明霞ちゃんの彼女で良かった」


「……ばかね。あたしもよ」


 近寄って爪先立ちになる。明霞ちゃんは私を抱きしめてちゅーしてくれた。


「私からのプレゼントは私自身〜……なんちゃって」


「ばか。あんたのお母さんとお父さんが家にいるのよ?」


「じゃあ……明霞ちゃんのお家、……はだめだねうん。ごめん。ちょっと舞いあがっちゃった」


 だいたい添い寝だとかその……とかそういったのは明霞ちゃんのお家でやってるからついついそんな言葉が咄嗟に出ちゃって謝る。

 明霞ちゃんは目を見開いてからクスッて笑ってくれて「いいわよ、それくらい」って頷いて、私をお家に連れて行ってくれた。

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