第2話 いじめ

小雨の中、お気に入りの赤い傘をさして我が家に美少女が訪ねてまいりました。


中学生の百合さん



彼女もまた私の妹の一人です。幼き頃より溺愛している特別な妹です。


彼女は私に心酔しており『聖女さま』と尊敬の目で見つめてくるのでございます。


ある出来事がきっかけで私が聖女であると思い込み、それ以来ことあるごとに褒めたたえるのです。そればかりか私と言う聖女がどれだけ偉大で尊いものかを熱を込め友人や街の皆様へ布教するのでございます。


実は当家の大樹を『世界樹』と命名したのも彼女でございます。それも合わせて布教されたことで、街の皆様が『世界樹の聖女』と私を呼ぶようになったのでございます。


とは言いましても「ああ 丘の上の聖女さまね」「それなら世界樹の聖女さまに話してみれば」など軽い感覚でございまして、あだ名と受け取っている方が多数かと存じます。



それでも心酔している彼女にとっては本物の聖女でありまして、憧れのあまり容姿や仕草まで私をお手本とするのです。

私の特徴である腰を超える長い黒髪に合わせようと彼女も同じ長さまで伸ばしました。

 


そこまで慕われますと私も聖女として振舞うしかなく現在に至ります。

可愛い妹の期待に応えるのは姉の義務でございます。シスコンでございますか 誉め言葉にしか聞こえませんね。



聖女に憧れる彼女は自分を律し人にやさしくまっすぐに育っております。いつしか百合さんは『聖女ちゃん』と呼ばれるようになりました。私とは違いこちらは本物でございますね。



可愛い妹について語るのはこの辺りでやめておきましょう。日付が変わってしまいそうですからね。



§



「みどりちゃんがいじめられているみたいなんです」



窓ガラスに当たる雨音が急に激しくなってまいりました。

世界樹の見える部屋でティーカップを前にした百合さんが話し始めます。



変化に気が付いたのは百合さんが下校中のみどりさんを偶然見かけた時のようです。


ご学友の団体から少し離れて歩くみどりさん

みどりさんから話しかけていますが会話があまり続かず、すっと離れてしまいます。


雰囲気から何かあったのだと察します。そこで声をかけようとしましたが踏みとどまりました。不確定なまま介入すれば悪化しかねないと判断し、まずは私へと話を持ってきてくれたようです。


冷静に判断できましたね。頼ってくれたことは嬉しいですよ。

まずは情報を集めましょう。いじめは小学校内で起きていると思われるますので乗り込んでみましょうか



じゅうななさいの都合で色々ありまして、小学校の先生方にはつながりがあるのです。

しかしいじめとは先生にわからない所で進んでいくものでございます。


図書室に常駐している司書さんに連絡をしてみましょう。仲良くさせていただいておりますからね。

みどりさんも読書好きですから図書室には足しげく通っているはずです。



連絡すると司書さんとしても思うところがあったようで、すぐに会えることになりました。

百合さん 参りましょうか



§



小学校の図書準備室


司書さんとの久しぶりの再会に百合さんが喜んでおります。

小学校に通っていた頃、百合さんはこの部屋に入り浸っていましたからね。


司書さんにはとてもお世話になっておりました。


今回のみどりさんの件もよろしくお願いいたします。



「いじめと言うよりも避けられている状態ね」


みどりさんが悪いことをしたのですか 嫌われてしまうような出来事が起こったのでしょうか



――――



環境美化委員を務めるみどりさん


ゴミ拾いや啓発活動 花壇のお世話も委員の仕事でございます。


花壇のお世話をしている時の何気ない会話



「みどりちゃん 本当におせわするの好きだよね」


「お花がよろこんでくれるからうれしいの」


「よろこんでいるかわからないよ」


「私 お花の声が聞こえるの とってもよろこんでるよ」


「・・・ そうなんだ すごいね」



その一言から始まったようでございます。

小さなきっかけでしたがみどりさんに奇異な視線が向けられるようになりました。



改めて見ているとお花に話しかけたり、木をなでながら見上げている姿が良く見られます。

そんな奇妙な行動が話題になり『なんだか変わった子』『あまい関わらない方がいいんじゃないの』と半歩置かれるような存在になってしまったのでございます。



そんな雰囲気が出来上がってしまうと子供は残酷な行動に出ることがございます。

言われもなく男子児童からいじわるをされるようになりました。


これについては親しい女子児童が守ってくれているようでいじめにまでは発展していないようでございます。


微妙な状況でございますね。



嘘をつくような子でもありません。きっと心から『お花の声が聞こえる』と感じているのでしょう。

少し引いているご学友がいることも悪いことをしているわけではございません。戸惑っているのでしょう。


ただし、この状況下でいじわるをした男子くん ギルティでございます。

みどりさんの気を惹きたくていじわるをしてしまった可能性はありますが、それでも褒められたことではございません。大事になる前にくぎを刺しておきましょう。


大丈夫ですよ。お姉さんは本気で怒っているわけではございませんからね。まだ本気で怒っているわけではございませんよ。可愛い妹にいたずらする子をちょっとだけ注意するだけですからね。


じゅうななさいのお姉さんは基本的には優しいのです。怖くありませんからね。

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