さえずりを求めて

星之瞳

第1話

「王様お呼びでしょうか?」

「おお、勇者よ、よく来た。頼みたいことがある。異世界に行って『鳥』と言う物の羽をつがいで10組取ってきて欲しい。これは命令だ!」

「『鳥』って何ですか?この国にはいないものですよね」

「賢者が知っておる。賢者をここへ」暫くすると

「王様ご用命により参上いたしました」

「おお、賢者よ。勇者に『鳥』を説明してくれ」

「鳥というのは空を飛び美しい声でさえずる生き物です」

「空を飛ぶんですか?」

「そうです」

「でも賢者様の手にかかれば作れるんじゃ?」

「いくら私でも、何も手掛かりないものは作れませんよ。それであなたに異世界に行って羽を取ってきてもらいたいわけです。これをごらんなさい」賢者は大きな玉の中に何かを映した。

「これが、鳥です。調べたところ地球の日本という地方がこの国の気候に似ていて生息させやすいことが解りました。あなたにはそこに行ってもらいます。そしてこの袋に10種類の鳥の羽を番で入れてきてください」

「待ってください、鳥を捕まえて連れてこなくていいのはいいですがどうやって羽を集めれば」

「あなたには鳥としゃべれるように魔法を掛けます。鳥と話をしてもらってください」

「はあ、そうゆうことならできそうですね。あの、その日本という国には危険なものは生息しているんですか?」

「地球は私達と同じような人型の人間が支配している国。人里では危険は無いですよ。森の奥に入らない限りは」

「解りました、行きます」俺はそう言うと賢者は頷いた。

「では、勇者よ頼んだぞ。王の命令だということを忘れるな」

「はぃ!」俺はそう答えると賢者ともに王宮を後にした。


賢者は神殿に俺を連れて行った。

「さあ、ここに立って、地球に送るから」俺は覚悟を決めて魔法陣の上に立った。

「儀式を始める」厳かな賢者の声とともに魔法陣が光る。俺は眠るように光に飲み込まれていった。




「う~ん、ここはどこだ?」

俺は目を開けた。ここは???

目の前には全く見たことも無い景色が広がっていた。

「えっと、地球の日本というところに行って鳥の羽を取ってくるんだっけ。あ!袋は」袋はポケットに入っていた。

「さて鳥と言う物を探さなくてはな」俺はそう言うと周りを見渡した。

『チュンチュン、お前さん誰だい』俺は急に話しかけられた目を上げると目の前に羽の生えたものが宙に浮いている。

「俺は勇者。鳥の羽が欲しくてはるばる来たんだ。君は鳥なのか?」

『そうだよ、この国にはたくさんの種類の俺の仲間がいる』

「10組の番の羽が欲しいんだ、どうにかなならないかな?」

『そうか、羽だけでいいんだな。それなら協力できそうだ、ついてこい』

俺はその小さな鳥についていった。

森の中の少し開けた場所。切り株のある場所に着いた。

『そこに座ってろ』俺は言われた通り切り株に座った。

その鳥がさえづると、色々な種類の鳥たちが集まってきた。

がやがとうるさいこと。その中で最初に会った鳥は俺の事を説明しているようだった。

説明を聞いていた鳥たちは2羽ずつ俺の前に並んだ。

『さあ、君が希望した通り10種類の番たちだ』

「ありがとう」俺はそう言うと並んでいる鳥たちに

「済まないが、君たちの羽を1枚づつ欲しいんだ。いいかな?」

そう言うと、鳥たちはさえずり頷いた。

「ありがとう」俺は羽を受け取り袋に詰めた。

『君が羽だけ欲しがったから、みんな協力する気になったんだ。この国の人に絶滅させられた仲間もいるからね、その羽は俺たちを傷つけなかったご褒美だ』

その声ともに集まった鳥たちが一斉にさえづり出した。それはとても美しく俺の心を癒した。

もしかしたら、王様が求めていたものって、そう思いながら俺はまた意識を失っていった。



「勇者よ、勇者よ」俺は揺さぶられて目を開けた。

「賢者様、ここは・・・」

「神殿だよ。よく戻ってきた。羽は?」

俺は起き上がると袋を差し出した。賢者はその袋の中を確認すると、少し離れた魔法陣の方へ歩いて行った。そしてその中身を魔法陣の上に広げた。そして何やら呪文を唱え始めた。すると・・・

チチチチ、魔法陣の中から、鳥たちが現れたのだ。鳥たちは用意されていた止まり木に止まってさえずり始めた。

「成功だ 、勇者よく羽を集めてくれたな」王様に報告せねば。賢者は王宮へと使いを出した。

暫くすると馬車のわだちの音がして王がやってきた。

王は止まり木に止まっている10種類の鳥を見まわした。鳥たちはここぞとばかりにさえずる。それは音楽にも聞こえる美しさだった。

「これは美しい。勇者よくやった。賢者よこれらの鳥を増やして国中に放してくれ、国の民たちにの癒しにもなろう、頼んだぞ」

「はい、御命令のままに」

「勇者よ、よく危険な旅に行ってくれた。礼を言う」

「王様の願いをかなえるのが私の役目です」私は一礼した。

王は満足し、お城に帰って行った。


「賢者様、番の羽が必要なのは鳥を増やすためだったんですね」

「その通り」

「地球の鳥たちはよく協力してくれたな」

「なんか、絶滅させられた仲間もいたって言ってました。その国の支配者に」

「そうか、どちらにしても勇者が自分たちを傷つける存在ではないということが解ったんだね。君を送り出して正解だったよ」

賢者はそう言うと立ち去った。


それからこの国には鳥のさえずりが途絶えることは無く、民たちはそのさえずりに癒された。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

さえずりを求めて 星之瞳 @tan1kuchan

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ