異世界コンビニ魔王城前店
@Sekimu
第1話 肉まん
混沌の闇が世界を包んでいた時代。
人々は平和を、魔族は繁栄を求め、双方は絶えず戦いを繰り広げていた。
そんな時代の中ある1人の勇者が魔族本拠地である魔王城に今足を踏み入れんとしていた。
〜魔族本拠地 魔王城前〜
「ハァッ、、ハァ、、」
ついにここまでたどり着いた。
俺の名はハルト。魔王討伐の命を国王から授かった
列記とした勇者である。
ここに来るまでに様々な冒険をし、多大なる犠牲を払ったが、ついにこの魔王城へとたどりついた。
「冒険を初めて早10年、思えば長い道のりだった、、。
クラーケンの一撃で致命傷を負い帰国した戦士ライガー
魔王軍幹部に連れ去られ行方不明となった魔法使いアキナ
セクハラでシスター・アナに追放された盗賊ルイス
できちゃった婚をしたシスター・アナ
みんなの無念は俺が必ず果たしてみせる!!」
そう誓った彼の目には熱い炎が宿っていた。
「しかし、ここまでの四天王との戦いでアイテムを
ほぼ使い果たしてしまった。
どこかでアイテムを買わなければならないが魔王城前に商人なんているわけもないし、ましてや協会なんて、、ん?」
そう言いかけた彼の目にはひとつの建物が写っていた。
『MAOマート 魔王城前店』
「な、何だこの建物はぁああああ?!」
勇者ハルトはその異様な光を放つ建物に怯えていた。
「まさか、これが魔王城なのか?!?!」
勇者ハルトは息を呑む。
「ついにこの時がきた、、。
必ず魔王をこの手で倒してみせる!!」
勇者ハルトはその勇敢ないしと共に大いなる1歩を踏み出した!
ウィーン
ティロリロティロリロン
「・・・。」
勇者ハルトは再び息を飲む。
「魔王城おもったよりちっせええええ!!」
勇者ハルトは驚きをかくせなかった。
「らっしゃせー。」
横長のテーブルの奥に立つ青年から聞き覚えのない言葉が聞こえた。
「なんだ?!何の魔法の詠唱だ?」
「チッ、冷やかしなら帰ってくれませんかぁ?」
「ひ、冷やかし?俺は勇者だ!そんな生半可な気持ちでこの魔王城に来ている訳では無い!!」
「はぁ?うちはコンビニだよ、魔王城は隣。」
「な!?コ、コンビニとはなんだ?!新たなボスステージの名称か??!」
「めんどくせぇ…。」
その時後ろの扉からもう1人の影が現れた!
「ユウリー、休憩おわりなのじゃー。」
そこには頭に角を生やした赤髪の少女が立っていた。
「魔、魔族?!?!とうとう敵が現れたか!!」
「うぬ?何じゃこのうるさい客は。」
「ちょうど良かった、俺が休憩入るからこのクソ面倒くさい客はお前に任せるぞらヘラ。」
「はぁー?ワンオペなんて我には無理なのじゃ。」
「わ、わん?何を言ってるんだこいつらは?」
聞き覚えの無い言葉の連続に戸惑う勇者ハルト。
もう一度立っている少女の顔をよく見た。
「ん、、?あぁーー!!!お前まさか、魔王ハゼルの娘であるあの煉獄のヘラか?!」
「我、人間にはそんなふうに呼ばれてるのか。ダッサイな。」
「おのれっ!やはりここは魔王城か!!倒された仲間たちの仇うたせてもらうぞ!!」
勇者ハルトは剣を抜き、天高く掲げる!
「ライトニングスラァッッッッシュ!!…………………アレ?」
しかしMP0!何も起こらなかった!!
「何店内で刃物出してんだよっ」
ゴツッ
「ぐえっ!」
ユウリから勇者ハルトへ重いゲンコツ!!
勇者ハルトはたおれた!
「クソぉ、食料もとっくに尽きたから腹が減りすぎてHPもMPもとっくに限界だぁ。無、無念…。」
「ほんとになんなんだコイツ…。あ、やべ。中華まん補充すんの忘れてた。」
ユウリは透明なケースの中になにやら白くて丸い物体を詰め出した。
「肉まん1個もらうのじゃ!」
ヘラは既にケースで温まっていた白い物体を半分くちにつめこんだ。
「あ!お前商品勝手に食いやがって、店長にまたしばかれるぞ!」
「ふぁれなふぁふぁいじょふなのふぁ。(バレなきゃ大丈夫なのじゃ。)」
勇者ハルトはヘラの手もとのもう半分の肉まんを見る。
ふんわりとした皮に包まれた肉まん。
その皮は見るからに柔らかくてモチモチ。
生姜やにんにくと、ほんのりとした塩気の香りが漂う。
蒸しあげられた肉まんは、蒸気をまとっていて、温かさが空気越しに伝わってくる。
その香りは勇者ハルトの限界まで高まった食欲を刺激していた!!
「た、食べたい……ダメだダメだ!魔族に物乞いをするなど!」
もう半分を食べ終わったヘラがこたえる。
「そんなに欲しければ購入すればよかろう。」
「え、ここは商店なのか??魔王城じゃないのか?」
「ここは24時間いつでも何でもそろう夢の国!コンビニエンスストア『MAOマート 魔王城前店』なのじゃ!!」
「こ、こんびに??なんだそれは?」
ユウリがレジ裏の煙草をならべながらこたえる。
「まぁ、簡単に言えば食べ物から服までなんでもそろう雑貨屋てとこかな。」
「そ、そうだったのか…。では、その肉まんとやらも買うことができるのか??」
「そういっておろうが。」
勇者ハルトは自分のなけなしの貨幣をポケットから探す。
「…これで足りるか?」
ユウリがレジ打ちをする。
「140ゴールドが一点。」
ケースから肉まんを取り出す。
「どうぞ。」
勇者ハルトはホカホカの肉まんを手にとる。
「……はむっ。!!!」
勇者ハルトが肉まんにかぶりつくと口の中に衝撃が走った!
ひと口食べるとほんのり甘みが広がり、その中にジューシーな豚肉の旨味がギュッと詰まっていて、口の中で絶妙なバランスが広がる。
具材にはジューシーで味わい深い豚肉のほかにも、しょうがやねぎ、そしてちょっと甘みのあるタレが効いていて、これがまたクセになる美味しさだ。
その温もりはこれまでの冒険の疲れを体の芯から癒してくれる。
例えるならそう!母の温もり!!
「母さん…ウゥッ」
勇者ハルトの脳内ではアベマリアが流れ、瞳からは自然と涙が零れていた。
「こんな美味いものが、、この世界にはあるのかぁ、、」
「変な客じゃな。」
店内で泣き崩れる勇者ハルトにヘラは軽蔑の目をむける。
勇者ハルトは立ち上がり、ユウリとヘラの方を向いて言った。
「 悪かった、お前たちを疑ってしまって。お前たちは命の恩人だ!」
「お、おう、、。」
「これで俺は万全の状態で魔王を打倒すできる!!」
その時、レジ裏の扉が開いた。
「ほほう、誰が魔王様を倒すって?」
「!!」
勇者ハルトはそのおぞましい程のオーラに反射的に反応し、振り向いた!
そこにはピッチピチの制服をきた巨体のオークが立っていた!!
「お、お前は!魔王軍最高幹部の1人、豪傑のグルード!!」
「へぇー。店長そんなカッコイイ2つ名ついてたんすね。」
「え、て、店長?」
勇者ハルトは目を丸くする。
「いかにも、俺は普段は魔王軍最高幹部。だが、あるとき魔王様は人類の怠惰さを利用し、何でもそろう商店を作り出し、それに依存させることで世界征服を進めようとしたのだ!その名も人類コンビニ化計画!!」
「コ、コンビニ化計画?!」
「ひねりがないのじゃ。」
勇者ハルトは改めて店内を見回す。
「たしかに、ここには食べ物や飲み物だけでなく本や衣類や小道具、服なんかもあるな…。」
「その通り!人類はやがてこの便利さに取り憑かれ、魔王さまにひれふすことになるのだぁ、グハハハハハ!!」
「な、なるほど、、そして具体的にはどのように人類を支配するんだ??」
「それは知らない。魔王様は『人類も魔便利な世の中になればいいよねぇ…』とだけいっていた。」
「そ、そうなのか...。」
「この店内では魔族も人類も関係ないぞ。皆自由に便利に買い物を楽しむのだぁ、グハハハハハハ!!」
「ただの良い奴じゃん魔王軍。」
ユウリがぼそっと呟いた。
「いやしかし!俺はみんなの思いを背負い魔王を討伐しなくてはならない!!......」
勇者ハルトは店内で2、3品をとる。
「だからこのポーションオレンジジュースと包帯とも購入で。あと、肉まんもうひとつ。」
「オカイアゲアリガトウゴザィマァス!!グハハハハ!!」
勇者ハルトはゴールドを出し、レジ打ちをした商店を受け取った。
勇者ハルトは入口の自動ドアの前にいどうし店を出ようとした!
「色々と世話になったな、もうここに来ることもないだろう、、」
「もうこなくていいのじゃ。」
勇者ハルトが店を出ようとしたそのとき!
「おい貴様、このまま帰れるとおもっているのかぁ?」
「なに?!やはり、ここで俺を襲う作戦だったのか!!」
勇者ハルトはグルードに向かい戦闘態勢をとる!
グルードはニヤリと笑い口をひらいた!
「ポイントカードハオツクリニナラレマスカァ??」
「…。」
ティロリロティロリロン
勇者ハルトは刀をしまい、静かに店をでた。
異世界コンビニ魔王城前店 @Sekimu
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