3話 蒼きこの空
1920年、あれからもう10年がたった。
この10年間はきつかった。
本当にきつかった。
勉強しても上がらない成績、
運動してもつかない体力。
血反吐を吐くほどの苦しさだった。
だけど、報われたのだ。
今日この日、
ようやく乗れるのだ。
あの航空機に。
そんな期待に揺られ
自転車を漕いでいると
見えてくる。
海軍基地だ。
私は自転車を投げだして
走り出す。
足はとどまることを知らず動き続け
気付けば最新型の航空機の前に着いていた。
青い翼、
今にも動き出しそうな
このエンジン。
まさに、完璧。
本で読んだものと同じ
あの航空機だった。
この美しさに見とれていると
髭を蓄えた老兵が私のそばによってきた。
「おい、お前いつまでそこにいるのか。
まもなく新兵の決起集会が始まるぞ。」
「はい。すいません。」
そうか、忘れていた。
決起集会があることをすかっりと。
私は焦って軍服に身を包み
集会場へ身を乗り出す。
すると、空気が一変した。
閉ざされた空間。
赤に色付けされた旭日旗。
切迫した青年たちの表情。
別世界のようだった。
私は一瞬よろめくも
すぐに座った。
司会の老兵が話し始めている。
老兵は
「この暖かい風のなかで」だの
「わしの正義は」だのつまらないことを
延々と話し続けていた。
私の意識が朦朧としてきた時
「次は我が海軍少将からお話を賜る。」
私の景色は即座に変わった。
老兵の話が終わったからではない。
赤い腕章。
つぶらな瞳
そして、この磨かれた筋肉。
海軍少将の姿がそこにはあった。
「俺の名は、
お前らの司令官になる男だ。
諸君は頑張った。
軍人になるため
学力、筋力、体力を磨いてきた。
その努力は認めよう。
ただ、
これで終わりではない。
これからが始まりだ。
今の日本社会は、
混乱の中にある。
物価の高騰、労働者の反乱などがそうだ。
このままでは
帝国の平和は無くなってしまうだろう。
だからこそ
諸君らが立ちあがらなければならない。
優秀なものが働かなければ
この帝国は滅び去る。
そうならないためにも
諸君らに「指令」を出す。
屋外に
100機の戦闘機がある。
人数分だ。
直ちに戦闘機に移動し
帝国の海、山、川
全てを胸に刻んで来い。
これが諸君らが守るべき景色だということを
自覚しろ。
さぁ
走れ」
新入生たちの
各々が戦闘機のほうへ足を運び、
助手席に乗り込む。
戦闘機はすぐに飛び立ち
白々しくも
美しき蒼の世界へ
私たちを連れて行った。
これで叶った、私の夢は叶ったのだ。
溢れんばかりの笑顔をよそに下を見やると
海や川、そして町が見える。
私は夢を叶えた。
次は軍人として守らなければならない。
この平和な景色を守らなければならない。
その積み重ねに家族、友人
先にある未来があるのだから。
私はそう思った。
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