ハーレムつくりたいと相棒にコンビ解消された支援職、未熟な美少女冒険者たちの教師というハーレムつくって幸せになる 〜また相棒に? もう遅いって。ハーレムに同じ男を置いておけるわけないだろ!〜

イーサーク

1話

「すまない、カズイ。オレたちのコンビを解消させてくれ」


 ギルド会館内で会った途端、前衛職の剣士マルコが、支援職の魔術師である俺にそんなことを言ってくる。


 相棒のマルコとは、十年来のつき合いになる。


 これまで共に汗を流し、遂には二人してS級冒険者まで成り上がって、前回の冒険者武闘大会では見事優勝を果たしたというのに。


 到底納得できない俺は、マルコに言い返した。


「どういうつもりだ、マルコ。次の武闘大会も優勝して二連覇してやるぞっていう大事な時期だっていうのに?」

「わかってる、カズイ。お前が凄腕の魔術師だってことは。お前の支援がなかったら、オレはS級冒険者まで登りつめることはできなかっただろう」

「俺だって、お前が百年に一人の天才剣士だってことは誰よりも認めてるぜ。それなのにどうしていきなりそんなことを言い出すんだ?」

「それはだな……」


 マルコが重々しく口を開いた。


「S級になって、優勝したオレは……女と」

「…………なに?」

「女だけとパーティを組みたくなっちまったんだ!!」

「……おい、まさか」

「……そうだ」


 悟った俺は、マルコに叫んでしまう。


「美少女たちとパーティ組んで、自分のハーレムをつくりたいって言うのか!?」

「そのとおりだ! わかるだろう、お前も俺と同じ男なら!? なあ、相棒!?」


 わかりたくねえよ!

 そんな不純な動機で、十年来の相棒おれとコンビ解消したい奴の気持ちなんざ!


 コンビを組んでの十年間。

 モテたのは、俺より断然マルコだった。


 理由は、簡単。

 冒険者の界隈において花形なのは、支援職の俺より、前衛職のマルコだから。

 おまけに明るい性格、整った容姿、剣の天才であるマルコは、ただでさえモテる奴だから!


 安全な後方で俺が支援している間、マルコは危険な前衛で戦い続け、強敵にとどめを刺して、美少女たちの人気を上げてきた。

 マルコの活躍は、俺の支援あってこそだという事実が、外から観ている女たちの目には写りづらいということもある。


 モテるこいつに、俺が嫉妬することは確かにあった。

 武術大会で優勝した後でも縁のない俺と比べて、こいつのモテっぷりときたら。


 それでもマルコとコンビを続けてきたのは、俺なりに友情を抱いてきたからだ。

 互いに支え合ってきた。俺がそうであるように、こいつにも恩義があるはず。


 だというのに、こいつは……。


 俺は途端に、こいつの前にいるのが馬鹿らしくなってきた。


「……話はわかった。コンビを解消してやるよ」

「わかってくれたか! さすが、俺の相棒! いやあ、うれしいぜ!」


 喜んでじゃねえよ。


「俺の代わりはもう見つけてあるんだろ?」

「ああ、イズミとシオンだ。覚えてるだろ!」


 昨年、俺とマルコと組んで、武闘大会に出た女僧侶と女エルフだ。

 そういえば、あの時から二人してマルコに惹かれていた気がする。


 まったく、どれだけ女の子を泣かせるつもりだ、こいつは。


「話は、終わりだな?」

「おう。今までありがとな、カズイ!」

「俺も本当に同じ気持ちだぜ。お前の今後の活躍を祈ってるよ!」


 俺はマルコに背を向けて、その場を後にした。



 マルコも知らない行きつけの酒場で、俺はカウンターの前に座って、注文した酒をグイッと飲み干した。


「あの野郎……」


 自分だけハーレムつくりたいだと。

 女の子を何だと思っていやがる!


「……さて、どうするかな?」

 

 嫌な気分にされた俺は、心の中の苛立ちを抑えながら考える。

 今から何をすればいいのかを。


 マルコの野郎に、何とかしてやり返してやりたいとも思う。

 昨日までの暮らしを奪われた俺は、明日から何をすればいいんだ?


 何かヒントはないかと、後ろを振り返り、酒場の中を見渡した。


 しかし酒場のテーブルのほぼ全てが空きだった。

 今はまだ日没前のため、客は数人しかいない。


 そんな中、奥にあるテーブルに、身なりのいい男が座っていた。

 周りに、三人の女を侍らしている。


 酒場の女だから、男は金をバラまいているだけだ。

 そんなこと頭の隅でわかってはいたが、今の俺には鼻につく。


 真ん中に座るあの男たちの姿が、これからのマルコの姿と重なった。


 あの男マルコがもし……俺だったら?

 俺のパーティだったら!?


 次の瞬間、俺は天啓を授かった。

 目の前のもやが晴れ、心の中がスッキリする。


「……俺もハーレムつくるか」


 そのためには、支援職の俺が何をすればいいのかもわかってきた。



 翌日、俺は冒険者ギルド会館に行って、受付嬢から話を聞いた。


「聞きたいんだが、最近入った新人の中で、危なっかしい者やネガティブになってしまっている者はいないか? 助けになりたいんだ」

「はい。調べればわかりますが、一体どうしたんですか?」

「なに。S級冒険者として後輩たちの力になりたいと思ってね」


 ハーレムつくりたいんだとは、さすがに面と向かって言えない。

 冒険者という界隈は、新人教育において非常に問題があると、個人的にずっと思ってきたのは確かだ。


「それじゃあ、この子たちの相談に乗ってはもらえませんか。ギルドに入った時は自信満々だったのに、今は見る影もなくて……」


 受付嬢が紹介したのは、新米少女三人のパーティだった。

 幸先がいいと思ってしまったが、ここは真面目にいこう。


「わかった。まずは話を聞こう。それでいったいどうしたんだ?」

「初めての依頼で張り切ってゴブリンの洞窟に行ったんですけど……泣いて逃げ帰る羽目になってしまったんです」


 ギルドに帰ってきた時は、ひどい有様だったという。

 一部の者から大笑いされて、さらに心の傷を抉られたらしい。

 全員無事に帰ってこれただけで御の字だろうに。


 受付嬢が、彼女たちへの連絡と話の場をセッティングしてくれる。


 俺に会うと答えたのは、一人だけだった。


 ギルド会館の個室で、俺は奥の席でひたすら待つ。

 やがて受付嬢に連れられて、その一人が入ってきた。

 俺は立ち上がって、彼女を出迎える。


 彼女の職業は、武闘家だった。

 真っ直ぐ伸びたきれいな黒髪と、くりっとしたつぶらな瞳が、何とも清楚にして可憐な美少女。

 おしとやかで、献身的な性格だとわかる。


 小柄だが、引き締まった体格。

 何より胸元がかなり豊かで、俺は目が――ぐっとこらえて、完璧に隠し通した。

 こんな時だし、受付嬢の前だ。


 それに、明るく笑えば絶対に可愛い少女の顔が、今はあまりにも暗かった。

 先を夢見て元気にがんばっていたであろうこの子の心が、絶望に染まっている。


「こんにちわ。魔術師のカズイだ」

「あのS級の……本当に?」


 驚いた少女は、初めて別の表情を見せた。


「ああ。俺がS級冒険者のカズイだ」

「……初めまして。武闘家のレイナといいます」


 レイナが、ほんの少しだけ笑みを見せる。

 S級の俺が話を聞いてくれることが、この子にとってわずかばかりの励ましになったようだ。

 俺と少女、受付嬢は、三人揃って席につく。


「話は聞いたよ……大変だったね」

「はい……」


 俺が同情を示すと、彼女は涙ながらに語り出す。


 逃げ帰る羽目になった理由は、洞窟の中にいたのが、依頼内容とまるで違っていたから。


 まず数匹だけと思っていたゴブリンたちが、何十匹といた。

 奴らの思わぬ厄介さと気持ち悪さに散々翻弄されながら、まんまと洞窟の奥に誘い出されて、突然上級モンスターのオーガの不意打ちを受ける。


 その後、彼女たちはパニックになった。


 自分も怖くてたまらなかったレイナは、皆と一緒に逃げることだけに必死となり、気づけばギルド会館の中で先輩たち皆から笑われていたという。


 無事に生還できただけで、彼女たちは幸運といえるだろう。

 問題なのは、彼女たちがこれからどうするかだ。


 仲間の魔術師にケガはないが、部屋のベッドで寝たきりになっているらしい。

 もう一人の騎士は、部屋の中からときどき雄叫びや悲鳴が聞こえてくるという。


 レイナは、自分の想いについて明かした。


「ずっと欠かしてこなかった修行も、今は手つかずになっちゃいました……。あなたのように武闘大会で優勝するのが夢だったのに……カズイさん、私、どうすればいいんでしょう?」


 話し終えたレイナは、救いを求める言葉を最後にうつむいてしまう。


「……話はわかった」


 パーティの仲間の精神を支えることも、支援職の大事な務めだ。

 これからは、少女たちのために働くとしよう。


「受付、彼女たちが受けた例の依頼、まだ残っているんだったな?」

「はい。オーガ出現が確認されたため、誰もが二の足を踏んでいます」


 よし。荒療治だが、自信を取り戻させるためには、やられた相手にやり返してやるのが一番だ。


「レイナ」

「……はっ、はい」

「すごく怖いだろうけど、もう一度この依頼に挑め」

「……えっ?」

「君がこれまで鍛え続けてきたその拳で、今度こそ初めての依頼を達成し、勝利と自信を掴み取るんだ」

「けど、けど……」

 レイナは当然拒否しようとする。

「心配するな」

 そんな彼女に、俺は言った。

「今度は俺がついていく」


 未熟な美少女冒険者たちの教師となって、支援し、一人前に育てる。


 これが支援職である俺が、次にすべきこと。


 そして、ハーレムを作るための手段だ。


 そのような下心はあったが、話を聞いた俺は、本気でレイナたちの力になりたいと思うようになっていた。

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