第12話

「美里の男は俺だ。そいつじゃねー」



「…うん」



「違う野郎を彼氏なんて紹介すんなよ。馬鹿美里。なんですぐ俺に相談しねーで、そんな男を頼るんだ」



「ごめんね」




素直に謝って、ひっついて背中に手を回す。抱き合いながら私は不覚にも今、この瞬間が幸せだと思う。




「明日、俺が行く」



「……え?」



「俺じゃなきゃ務まんねーだろ。つーか他の男にはさせねぇ」




どこまでも嫉妬深く、自信家なそんな彼に惚れたのは私で、溺れてしまったらもう、這い上がることはできないだろう。どうせなら二人で溺れたい。




「大丈夫だ。俺がどうにかするから、お前はもっと堂々としてろ」



「──うん」



「俺の女は美里だ」




壱翔がくれる言葉に何度も救われ続けてる。欲しい言葉を惜しみなく与えてくれて、私に足りないものを注いでくれる。

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