トリゲーム

!~よたみてい書

第1話

「今から、トリゲームを開始します」


鳩子は腰で手を組み、トリに告げる。


トリは首を少しかしげながら、質問した。


「トリゲームって?」

「今から、10回トリの羽をマッサージします。平常心を保ち続けてください」

「気持ちいいーって感じたらどうなるの?」


鳩子は口角を上げながら言う。


「豆鉄砲を受けてもらいます。大豆の弾だけど、痛いよん」

「ぴゃー!?」


トリは体を少し飛び跳ねさせ、あたふたと慌てた。


鳩子は真剣な面持ちで語る。


「私も食らうことになるから、トリ、平常心でいてね」

「連帯責任!?」

「ついでに、耐え抜いたらご褒美があるよ。梨ケーキ。だから、私も手抜きにならないぎりぎりの塩梅で手を緩めようと思う」

「鳩子がマッサージするの!?」


鳩子は小さくうなずき、トリの背後に移動した。


「いくよん」

「う、うん」


 鳩子は右手を、トリの右翼に近づける。そして、羽を人差し指で突く。


「つん」


トリは、いつものトリの顔を保っている。


鳩子は再び、羽を突いていく。


「つんつん」

「……あ、全然平気かも」


鳩子はニヤリとしながら、羽を突きまくった。


「つんつんつんつん」

「へいじょーしーん」


 鳩子は小さく深呼吸すると、軽やかにトリの羽を撫でていく。


「すーっ」

「……」


トリは無言を続ける。


鳩子は楽しそうに、もう一度トリの羽を撫でていく。


「すぅーっ」

「……鳥の呼吸:一の型 ぬいぐるみ化!」

「なにそれ」

「トリのスキル!」


鳩子は疑問を抱いてる顔のまま、トリの羽を撫で続ける。


「するぅーっ」

「トリはぬいぐるみ、トリはぬいぐるみ」

「トリの呼吸すごいよ!」

「えへへ」

「でも、次はどうかなー」


 鳩子はトリの翼の付け根部分の羽を、縦に指でなぞっていく。


「つーっ」

「……」


鳩子は先ほどとは反対方向に指をなぞらせる。


「つぅーっ」

「……」


トリは無言を貫いているけど、体を小刻みに震わせていた。


鳩子は、左翼の羽の付け根を指でなぞる。


「こっちはどうかな? つつぅーっ」

「……」


トリは目を見開いて、身体を振るわせ続ける。


 鳩子は微笑した。


「トリ、顔が」

「視界を確保したい気分なの!」


 鳩子は、トリの両翼の先端を両手でそれぞれ、もみほぐすように触る。


「なでり、なでり」

「……」


トリは極寒の中に放り出された様子を見せていた。


「そのバイブレーションはなに?」

「着信ごっこ」


 鳩子はトリの目の前に移動し、両手を叩く。


「トリ、やったね! 無事10回耐えれたよ!」

「え、本当!? やったぁ!」


トリはほっこり笑顔を浮かべながら、跳びあがる。

そして、鳩子が差し出した手のひらに、パチッと片翼を叩きつけた。

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