第8話 サバイバー奪還作戦ver.1

 学校から帰る間際、いつも通り正門によりかかりながら人間観察をしている雲谷くもたに君に声をかける。


「雲谷君、今日も元気?」


こちらに気付いた雲谷君は笑顔と共に挨拶を返す。


「うん、元気だよ。どうしたの?珍しく陽兎ようとさんから話す事がありそうだけど」


雲谷の読みは当たっている。そう、雲谷君に言いたい事があったのだ。


「今日の数学の授業でやった問題、難しくない?」


「あ、勉強のことなんだ」


雲谷君にはてっきり別のことだと思っていたようだ。


「まあ、始まったばかりだからまだ簡単な方なんだろうけど...それでも難しいよ」


もうすぐGWがやってくる。そうなると課題が大量に出される。今日授業でやった問題も出るのかと思うと気分が落ちてしょうがない。


「陽兎さんはお兄さんがいるし、分からないなら聞いてみたら?僕はてっきりこの間陽兎さん自身がやりたい事で悩んでたからそれに進展があったのかと思ったよ」


確かに、そうだ。私にはお兄ちゃんがいる。分からないならお兄ちゃんに聞けば良いんだ!幸い私より頭は良かったはず。


「もしかして、人に聞くって選択肢がなかった?」


私の反応を見て、雲谷君は心底驚いた顔で私に聞く。


「うん、私一回悩み始めると頭が固くなっちゃって。でも雲谷くんのお陰でなんとか頑張れそう!あそうだ、私自身がやりたい事の話だけど、そっちも少し見えてきたんだ。今はとりあえず、私が合ってる!って思う方向に突っ走る事にしたの」


「あんまりクヨクヨ悩んでる陽兎さんはらしくないからね。その調子で頑張れるといいね!」


私の答えを聞くと雲谷君も笑顔になってくれた。報告してよかった。


「うん、そう言えば雲谷君は部活に入ってないよね?」


私はリンカー活動の都合もあって部活に入らない事にしたが、その私が帰るために正門を潜る時にはもういるのだから、雲谷君も帰宅部という事になる。


「うん、入ってみるのも楽しいかなと思ったんだけど、僕もやりたい事があるから」


「そうなんだ。じゃ、また今度ね!」


そう言って私は家に向かって出発する。雲谷君はいつも通り私を見送って手を振ってくれた。



 家に着いてからはゴロゴロしていた。お兄ちゃんは金曜は私より帰りが遅いし、私も私で真面目に課題をする気になんてならず、ただ、スマホを見つめていた。SNSのアプリが目に入り、ふと思い出す。そうだ、パトロールに行ってみよう。


思い立ったが吉日。私はお兄ちゃん相手に書き置きを残し、準備を整える。


「行くよ!アイちゃん!」


「任せてください!」


「コネクト:アイちゃん!」


ファイスになって私は家を飛び出した。



 私がパトロールに行こうと思った理由は単純、小金こがね先輩が私と同じ晴天に通っていた際、こうやって町をパトロールして、危ないバグルスがいないかを探していたらしいからだ。小金先輩の正義感には尊敬するところばかりだ。


理由はもう一つあり、単純にこのファイスになった状態で町を駆け回るのが楽しいから。コネクトをすると、常人よりはるかに身体能力が高くなるし、そのおかげでで建物を屋根伝いに渡ることもできるようになる。こうやっていると、ゲームの主人公みたいで楽しい。


パトロールというよりただの散歩をしていたものの中々バグルスは見つからない。小金先輩が高校生の頃は定期的に人を傷つける危ないバグルスが出現していたらしいけど、あの大きな事件の後はめっきり減ってしまったらしい。


「なかなかいないもんだね」


「まあ、その方が平和という事なので、喜ぶべきなのですが...」


「小金先輩の時はあああう風にゲートがバーンって開いて、バグルスが出てきたらしいよ。ってえ?」


私が指差した場所には丁度バーンという音と同時にゲートが開いた。有利先輩の部屋で見たものとも近いし、間違いないはず。私はこっそりゲートの近くに接近して、様子を伺った。


〈全く、なんで我々が遣わされなければいけない?〉


〈仕方ないだろう、俺たちはまだまだ上じゃねえってことだ。でもこないだのあいつが失敗したせいで、余計面倒なことになっちまったよ。そっちはディメンション様が回収してくれるらしいけどよ〉


〈無駄口はこの辺りにすべきだろう、探すぞ、を〉


熊のような人形と虎のような人形の兵士はそう言ってゲートから離れていった。


(どうしよう!アイちゃん、アイツ、私たちを狙ってるかも⁉︎)


(落ち着いてください、夏美さん。彼らは私の事は別の何かに回収してもらうと言っていた気がします)


アイちゃんの言葉を聞き、先ほどのセリフを思い出す。名前は長くて覚えてないけど、言われればそんな事を言っていた気がする。つまり、この人達が追ってるのはまた別のサバイバー?


(どうしよう、アイちゃん。あいつらって私達だけで倒せるかな?)


(以前と同じ大技を使えれば可能性はあるかも知れません、ですが、2人相手にあの大技を打つ余裕はできるでしょうか...)


アイちゃんの言い分は最もだ。とりあえず、あの2人組を追いかけながらサバイバーを探そう!私は住宅の屋根の上に乗り、上から見渡しながらサバイバーを探す。少し移動したところで端末が震えた。


「あれ、なんだろう...」


端末を取り出すと音声が聞こえてくる。この声は!


夕里ゆうり先輩!」


「大丈夫、襲われてない⁉︎」


「いえ、まだ襲われてはないです。ただ連中、サバイバーを探してるっぽくて!」


「本当⁉︎なら急がないと、急いでメンバーを招集する。ファイスはそのまま2人を追跡して!」


私は夕里先輩の指示通り2人を追跡する。その過程で2人が探しているのはアイちゃんとは別のサバイバーである事、アイちゃんの事はもっと上のやつが狙っている事を話した。


「サバイバーの属性が分かればもうちょっとこっちでも探しやすいんだけど、見つからないなぁ」


「こっちも目視で探してますけど、難しいです」


「ごめんね、小金姉ぇこがねぇももうちょっと時間かかっちゃうみたい、そうは言っても私が精一杯サポートはするから!」


夕里先輩がそう言ってくれると私としても頼もしい。その時、2人組の方から声が聞こえる。


〈おい、サバイバーはどこだ!〉


「きゃあああ!」


〈おい、嫌われてるぞ。これだと会話が成立しないから、人間に聞いても意味ないな。いっそのこと建物とか全部ぶっ壊したら手でくるんじゃねえのか?どうせ電気があるところに隠れてやがんだろ?〉


(電気、もしかして彼女でしょうか?)


(アイちゃん何か分かったの?)


アイちゃんが何か閃いたようで、私はアイちゃんに答えを聞く。


「夕里様、確実ではありませんが、今回敵の方々が探しているのは雷属性の子です。私と同じ混乱の際に抜け出した方のはず!」


「それはナイス情報!雷属性ってのが分かれば探しやすいはず!」


そう言った夕里先輩はすぐに端末をいじり始めたようでこちらからも音が少し聞こえてくる。そして、すぐ割り出した。


「見つけた、まだ不確定だけど北東の方に強めの反応がある!向かって!」


「分かりました!」


私はすぐ方向を確認し、そちらに向かった。


〈妙だな...〉


〈どうした?〉


〈さっきまで近くにいた気配が消えた。おそらく我々をつけていたはずだが。どういう事だ?〉


〈なんだ、俺たちをつけて利点があるのかよ?〉


〈この状況から考えるに、よし、我々もその気配をたどるぞ〉



 目標の地点に向かって数分、再び夕里先輩から通信がくる。


「大分近づいてる。けど、目標もちょっと移動してるみたい。近づいて確認してみて。違ったら次の候補の場所を教えるから」


「サバイバーの場所ってそんなに沢山候補あるんですか?」


「目標の数値が私が思ってたより、小さいんだよね。アイちゃんと同じように疲弊してるのかも」


目標地点は行き止まりの閉路だった。私は道路におり、目標を確認する。あれ?いない。


「あれ?ここにいるって言ってたはず...」


一通り辺りを確認し、端末を見ながらより詳しく探す。


「見つけました!電柱に隠れてます!」


アイちゃんの声を聞いて、改めて注視するとそこにはあの日のアイちゃんと同じような妖精の姿になってる電霊を見つけた。姿を見ると分かりやすく黄色で雷属性だ。アイちゃんより小さいのもあり、見つけにくいのも頷けた。


「本当!サバイバーであってる?」


「はい、私が保証します!」


「アイちゃんが言うなら間違いないね。見つけにくかったのはもうファイスに気付いて、警戒してるからじゃないかな。なんとかして警戒を解いて状況を確認できない?」


私は恐る恐るサバイバーに声をかける。


「えっと、私の事見えてる?」


「ハイ...」


冷静に考えて見えてなければ警戒しないか...どうするのが正解だろう。


「私たちは貴方を保護するためにきたの!私についてきてくれる?」


そう言うと電霊は分かりやすく怯え、逃げようとする。そうだ、下手な言葉は逆効果だった!どうしよう!


「待ってください!」


アイちゃんの声を聞き、サバイバーがこっちを振り向く。


「え?」


「この人たちは私たちを悪用しようとは思っていません。もし、私を信用してくれるのなら、貴方を助けられるかもしれません」


「本当?」


サバイバーの言葉がこちらに傾いている。そうか、アイちゃんはこのサバイバーと会った事があるって言ってた。最初からアイちゃんに任せればよかった。


「はい、私は現にこの人たちに救ってもらいました。この人達はとても高潔な方々です」


アイちゃんにそこまで言われると私もどこか照れてきた。サバイバーもアイちゃんの事を信用していそうだ


「私を助けてくれるの?」


「うん、私ができる全てで貴方を助ける事を誓う!」


〈おいおい、勝手に話を進めてもらっちゃあ困るぜ〉


その声が聞こえて驚くとサバイバーを追いかけていたハンター2人が私の前に現れた。


「なんで⁉︎」


〈気配を追った先にサバイバーがあるなんて本当にお前の言った通りだな!〉


〈あくまで予想だったが本当に隙を晒すとはな〉


「どうやらつけられて居たのは私たちの方だったようですね...」


「小金姉ぇが来るまではまだ時間がかかるかも...取り敢えず...」


「あなたたちは私が倒す。サバイバーは渡さない!」


「本気⁉︎ファイスはまだ、成り立てなんだよ。上手くいく保証はできない!」


「でも、あの日はアイちゃんを背負って革靴で逃げられた。コネクトしてる今なら、2人相手でも最悪逃げれるはずです。小金先輩が来るまでの時間稼ぎは私にもできるはず」


「寡黙な熊の方は体格が大きいから、正面戦闘は避けた方がいいかもね。虎の方はおしゃべりだから正面からはやりやすいかもしれないけど熊ほどじゃないとはいえ強いとは思うからそこは注意ね」


夕里先輩は呆れたため息を出したあと、そう言う。つまり、私がこの2人相手に戦う事を許すという事だ。


「やってやろう、アイちゃん!ファイスソード!」


私は剣に炎と氷を纏わせ、相手に向かう。左手にはスミャホルさんと戦った時に作り出したハンドガンを持つ。私が持った剣と熊の爪がぶつかる。


〈ふん、どうやら小娘の割には少しはやるようだ〉


「どうかな!」


私はハンドガンを撃ち込むものの、毛皮に守られてそこまでの攻撃が届いてないように見えた。


〈おらよ!〉


続いて虎のが振るった穴が私を狙う。間一髪のところで避けるものの、やはり数の不利を感じた。


〈全く避けんなよ、渋いなぁ〉


「銃は不向き、なら!」


私は左手に盾を装備。これで敵の攻撃を守りながら戦える。直後、熊の爪が私を襲う。咄嗟に手で防いだものの、力が強く、押し込まれる。苦しい。


〈隙ありぃ!〉


虎の斧を思いっきり受ける。痛みとともに吹っ飛ぶかと思ったが上から熊で押さえつけられているせいで刃が思いっきり食い込む。


「クッッウッ!」


更に熊の反対の爪で思いっきり殴られて吹っ飛ぶ。幸い虎の斧の痛みからは解放された。ただ、貰ったダメージが大きい。


「ファイス!無理はしないで、あなたが負けると本末転倒だから」


「分かってます。でも、ここで負けるわけには...」


でも実際キツイな...夕里先輩も私のダメージを分かって声をかけてるんだろうし...


(夏美さんは魔法はお得意ですか?)


(魔法?)


思い出すのは最初の日のアイちゃんの魔法。私がコネクトするのにあたふたしていた時に敵の攻撃を守ってくれた。


(今のまま近接でずっと戦っていては負けかねません。とは言っても夏美さんは私と違って魔法に面識がないかもしれません。そうなると難しいですね)


そうこう言っている間にも2人は向かってくる。取り敢えずこういう時は氷で足止めする!私は両手に氷の力をいっぱい込めて取り敢えず放出する。


「えーい!」


無作為に放たれた氷は無事に地面を伝い、2人を足止めする。


〈これは魔法か?おい!逃げる気かよ!〉


「違う!作戦考えててるの!」


こちらに罵声を浴びせる虎をそう言って黙らせる。魔法を貰ったのはそっちなのに...


「大丈夫、魔法の扱いならアイちゃんにやってもらった方が良いかもね」


夕里先輩の言葉を受けて私はアイちゃんに言う


(分かった、アイちゃんがやってみてよ!)


(そうは言いましても、今身体の操作は夏美さんが...)


「身体の主導権は渡せるはずだよ。夜兄ぃよるにぃも何回かやってたから」


渡す...どうやらか分からないけどやってみるしかない。私は操作しない。裏に引っ込むような感じで...


「動かせるかもしれません。待ってください...」


どうやら無事にアイちゃんが動かせるようになったっぽい。アイちゃんは少し手を動かし感覚を確認する。そして剣が握られていた右手に杖を装備する。


「何を使うのが良いんでしょう?」


アイちゃんはどの魔法を使うか迷っているようだ。しかし、その時熊がついに氷を破ったこちらに接近する。


(分かんなけど1番強いやつ!)


「なら、フローズンワールド!」


持った杖が輝き、辺りを吹雪が舞う。終わってみると熊と虎は全身凍って動けなくなっていた。ただ、同時に身体から力が抜けるのを感じる。もしかしてこの感じは...


「足止めならもうちょい弱くても成立した気がするけど、まあナイス。あとちょっと耐えて」


多分魔力切れだ。私が1番強いのをお願いしたばっかりにこの後どうしようもなくなってしまった。ただ、1番強い魔法を使ってくれた事で分かったこともあった。


(アイちゃん、ありがとう!私、魔法の撃ち方が分かったかも)


(本当ですか!ならこの後はお願いします。私は魔力操作を手伝います)


再び私に身体の主導権が戻る。私は左手に剣を作り出し、両方の先を相手に合わせる。相手は動けなくなっているものの、微かに鼓動を感じる。まだ諦めていないのだろう。


(アイちゃん、まだ不慣れだから杖の方を手伝って!)


(分かりました)


私は杖の方に氷の力、剣の方に炎の力を籠める。炎の方は私の力だからまだなんとかしやすいはず。魔法の時に必要なのはイメージだった。特に私の場合は魔法を全然見たことないので、分かりにくかった。でも、イメージが湧くなら剣の時と同じように力を籠めるだけ。


「吹っ飛べー!」


氷と炎が高密度で混ざり合い、相手に放射される。最終的にそれは相手に命中した時、水蒸気爆発を起こす。名付けた名は


「ファイス・マジック!」


〈散々コケにしてくれたなぁ!〉


虎の方がこちらに向かって斧を振り下ろす。


「嘘、倒せてない⁉︎」


威力は大分高かったはずだ。もしかしてさっきから氷の使いすぎで爆発の威力が弱かったのだろうか。私は咄嗟に杖を盾に変え、防御する。防いだその隙にファイス・ソードで相手を突き刺す。


〈グフッ〉


よひ、いけてる。続いて横からくる熊の攻撃に対して剣で撃ち合ったあと、盾で思いっきり殴る。一瞬の隙が生まれたところで剣で相手の身体を抉り、ねじ込む。


〈ヌッ!〉


始めて熊の方から苦しそうな声が聞こえた私は剣をそのままにして盾を弓に変え、矢を作り出して射撃を行う。目的は牽制だ。


〈このやろう、急に戦うのが上手くなったぞ!〉


〈いや、先ほどまでは本調子じゃなかったのだろう。今の彼女の顔は笑っている。つまり、この状況を楽しめているんだ〉


熊の言う通りかもしれない。少なからず余裕ができている。思い通りにいっているこの感覚が、私をここからどうやって勝利に導くかを考えている楽しさを与えている。その時、熊の身体に刺した剣が光り輝いた後、爆発する。


「それ、爆弾だから!」


〈ヌオッ!〉


〈おい、大丈夫かよ!このヤロウがってウワッ!〉


怒った虎がこっちに向かうことを予測して矢を放つ。間一髪で避けている。余裕はない。この調子だ。私は剣を再度作り出し、後ろに隠れているサバイバーにこう言う。


「勝手なお願いなのは分かってるけど、もし彼らが近づいてきたら痺れさせて少しだけ時間を稼いでくれない。1秒で良い」


サバイバーは悩んだようだったが、少なくとも私が真剣な言葉で言ったことは伝わってくれたらしい。私は目を瞑り、あの日と同じように弓に剣をつがえ、力を籠め始める。


〈っ!急ぐぞ!〉


〈なんだってたんだよ、こっちは散々なのに。でもおれらだって失敗できない!やるぞ!〉


獣人2人がこちらに迫ってくる音がする。でもまだだ、あと4割くらい足りない!


(夏美さん!)


アイちゃんの止める声を聞こえるが私は依然として集中を続ける。獣人がかなりこちらに近づいてきた音がする。不完全だけど打つしかない!そう思った刹那、地面に刃物が刺さる音がする。


〈なんだ、これは!〉


〈炎のバリケードか、こいつ!〉


何か分からないけど助かった!これなら今の最大火力で出せる。私は目を開け矢を放つ。


「ファイス・ソードアロー!」


あの日と同じく着弾と同時にあたりに衝撃が起こり、あたりの建物が少なからず揺れる。そういえば回りの事を考えてなかった。ヤバっ。



 爆発が終わった後、そこにたっていたのは拳を突き出したグリフォニアだった。


「先輩!」


明らかに自分の技に巻き込んでしまった先輩に駆け寄るが先輩は笑顔でこう返す。


「すごいよ、ファイスちゃん1人で勝つなんて!私ができるのは必殺技を撃つ手伝いと止める手伝いくらいだったし。しかも逃げ場の少ない行き止まりで」


「全く、小金姉ぇも無茶しすぎ、周りに被害が出るかもってわざわざ必殺技に飛び込んで止めようとする?」


夕里先輩の言葉で狙いに気付く。同時にケロッとした様子で立っている先輩に問う。


「え?私の必殺技、止められちゃったんですか?」


今日は大分戦うのが下手で魔力がほぼなかったとは言え、威力はそこまで弱くはないはず。事実あたりの建物も少し揺れていた。


「あの日見た時に思ったんだよね。私の技とどっちが強いんだろうって。だから試したくなっちゃって。ついでに建物の直撃も避けられるし」


先輩は遥かに私よりものを考えて動いていた。流石だ。


「でも、私が駆けつけるのが遅くなっちゃったのは事実だし、ごめん!」


「まあ、小金姉ぇのお陰で周りへの被害もないし、追加の追ってもいなそうだし、ファイスは必殺技を撃つ時間を稼げたからよかったけど。2人とも今後は無茶しないこと」


私と先輩が夕里先輩にこっぴどく説教されたのはまた別の話。


 改めて状況を確認する。獣人コンビはちゃんと必殺技で消し飛ばせたようだ。これで相手も状況確認に苦労するだろう。


「そうだファイスちゃん、サバイバーは?」


「あっ、そうだ!アイちゃんの知り合いだったんです、どこにいるかな」


辺りを少し探すが見当たらない。しかし丁度自分の頭の上から声が聞こえてきた。


「ここ」


「無事だったのですね!」


後半は私の背に隠れていたはずなので当然と言えば当然か。ソードアローの衝撃も1番弱いのは私の後ろのはずだし。


「じゃあファイスちゃん、端末を出して。追加の追手が来る前に早いとこ逃げちゃおう」


先輩の指示に従って端末を操作する。ボタンを押すとあの日と同じようにゲートが出現し、私達はそれを潜って帰還する。



 潜って再びあちらの世界にいくと出た場所は司令室だった。


「色々言いたいこともあるけど、取り敢えず2人ともお疲れ様」


どこか不満げな表情で夕里先輩がそう言う。申し訳ない。先輩も苦笑いだ。


「とは言え、これで2人の回収だ。よくやった。ファイス、グリフォニア」


「2人とも手当てを受けるといい。それと、我々と一緒に来てもらえるか?」


司令さんとスミャホルさんもやってきて無事を労う。スミャホルさんはサバイバーを保護なために連れていった。私と先輩はサバイバーを助けた充足感のまま、手当てを受けサバイバー奪還作戦はひとまずの終わりを迎えた。


残っているサバイバーはあと3人—

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る