第4話

「蔡姫さんもやっぱり、美術部に入るのです?」

自己紹介が終わった最初の休み時間。

私に声をかけてきたのは燈華ではなく。

「うん、一応そのつもり。え~っと…」

「こ、と、り!皆月小鳥みなづきことりなのです~!」

皆月さんはその小さな身体をめいっぱい使って自身を指し示すジェスチャーと共に名乗ってくれた。

「皆月さんね、覚えた。蔡姫さんってことは、皆月さんも?」

「はい!ことりも美術部へ入ろうかなと思っているのです!」

「じゃあ、放課後一緒にいく?見学」

もちろんです~!とはしゃぐ皆月さん。

飼ったことは無いけれど、飼い犬がいるとこういう気持ちになるのだろうなと思うほど、見守りがいのある喜びっぷりだった。


そんなこんなで授業が終わり放課後。

燈華は運動部を見て回るというので、また明日、と言葉を交わし別れた。

皆月さんはその間も律儀に待ってくれていた。

「お待たせ、皆月さん。行こっか?」

大きく頷き、着いてくる皆月さんはやっぱり子犬を飼っている気分にさせてくれた。

2人並んで歩く最中、皆月さんが口を開く。

「あのあの、蔡姫さんと永峰さんは随分と仲がよろしいのですね?以前からのお知り合いだったりするのです?」

「うん、幼なじみなんだ。私が中学で引っ越すまでは家が隣同士でさ」

そうなのですね~と言う皆月さんの表情がわずかに曇った気がしたが、私はこれ以上何も言わなかった。


「そういえばさ、皆月さんは『握る手』って作品、知ってる?」

「もちろんなのです!美術部部長の雛芥子禊ひなげしみそぎさんが去年のコンクールで発表して大賞を受賞した素晴らしい作品ですよね!」


あの作品の作者が美術部の部長!

「どうしたのですか蔡姫さ~ん!置いて行かないで欲しいのですぅ~!!」

作者に会いたいという私の願いはすぐに叶いそうだとわかり、気づくと早歩きになっていた。

「あぁ!ごめんね、皆月さん。…私がこの学校に行くって決めたきっかけ、あの作品の作者に会いたい!って思ったからだったんだ」

「なるほど、それなら急ぎましょう!出会いはすぐそこなのですよ~!」

顔を見合わせると、私たち2人は、美術部へ向けて駆け出した!!


…このわずか20秒後、たまたま通りがかった教頭先生に見つかり

『廊下を走ると何がいけないのか』

をかなりの時間説教された。

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