実況王サトミ
平河ゆうき
1.夢の扉が今開かれた(2015年5月)
騙された。放送委員になんて、なるんじゃなかった。しんどすぎる。
今さらながら、2年生に進級して最初のホームルームをさとみは後悔していた。
所属する委員会を決める際、
「さとみは声が大きいから放送委員やったらええんちゃう?」
「ええな、それ!」
そう勝手に盛り上がる友人たちを前にして、
「じゃあ、やってみるわ」
と、よく考えないまま流されてしまった。完全にその場のノリだ。
部活動に入っていないさとみはどうせ何かの委員になる必要があったのだ。1年生のときは美化委員の仕事が退屈だった。放送委員ならもう少し楽しいのでは? という安易な考えがさとみを後押ししたのも事実だ。
放送委員会に入ってみると、楽しくないわけではなかった。が、5月下旬に行われる体育祭が近付くにつれて、本番は大変になりそうだと感じていた。放送部が存在しない雀谷中学では、学校行事に放送委員が駆り出されるのだ。
体育祭当日、さとみの不安は的中した。放送委員の忙しさは想像を超えていた。
他の生徒より早く登校して、テントの組み立てや機材の搬入。体育祭が始まれば、本部テントに常駐して各種案内のアナウンス。
それでいて、いち生徒として競技に参加しなければならない。おまけに3年生が何人か体調不良で欠席し、その分さとみたち2年生の負担が増えた。目が回るような忙しさとはこのことだ、とさとみは思う。
『以上で障害物競走を終わります。選手の皆さん、お疲れ様でした。大きな拍手をお願いします』
さとみの声を合図に、ぱちぱちとまばらな拍手の音が聞こえてくる。どうにか一仕事終えた。マイク席を離れ、後方のパイプ椅子にどかっと腰を下ろすと、
「つ、疲れたぁ……」
自然と声が出る。お疲れ様はこっちだ、と思った。もうへろへろである。
しかし、まだ仕事は残っている。本来は3年生がやるはずだった男女混合リレーの実況も、さとみが担当することになったのだ。
「ご苦労さん、天雲。ほれ」
そう言って水が入った紙コップを渡してくれたのは、
「ありがとうございます」
さとみは紙コップを受け取り、喉を潤した。まだ5月下旬とはいえ、晴天の運動場はテントの下にいても暑い。立見の気遣いがありがたかった。
「天雲はようやっとる。大したもんや」
「そうですか? ……私の実況、どうですか?」
体育祭が始まってからの放送委員の仕事は、案内や競技の説明のアナウンスをすること。競技別に音楽を流すこと。そして、試合経過の実況だ。
他の仕事は事前に決められた通りにやるだけなので多少は気が楽だが、実況だけは違う。競技の状況を見て、その場で喋らなければならない。
まったく初めての経験だったが、さとみなりに練習した。委員会での練習とは別に、自宅でネット上の動画を見ながら、例文を参考に何度も実況をしてみた。そのうえで、初心者なのだから何よりも正確性を重視すべし、という立見のアドバイスを心に刻んで本番に臨んだ。
『今、一斉にスタートしました!』
『B組、あきらめずにがんばってください!』
『A組が1位でゴールしました! 2位はC組です!』
など、立見が準備してくれた例文を、状況に応じて使い分けていった。ほとんど言い淀むことはなかったはずだ。クラスや順位を間違えることもなかった。手堅くまとめることができている、と自分でも思う。
だから、もっと褒めてもらおうと問いかけたのだが、
「ええよ、ええよ! やっぱり天雲の声は女子にしては低いのがええな。そのうえで、よう通る声やし、力強い」
立見の返事は、さとみが期待したものではなかった。立見なりに褒めてくれているのは理解できる。だが、さとみは傷付いた。
「やっぱり私の声、低いんや! わかってますよ、わかってますけどね!」
いつの頃からか、さとみは自分の声が低いことを自覚していた。デリカシーの無い男子に指摘され、かわいらしい声の女子と比較され、否応なく向き合わされたのだ。声が低いのは、165センチと身長がやや高いことも影響しているのかもしれない。身長も声の低さも、さとみ自身の努力ではどうにも変えることができないものだ。
かわいらしい声で話す同世代の女子への羨望と、声が低くて何が悪いねん! という反骨心。ふたつの感情に振り回されるさとみは、そういうキャラでいこうと決めた。自分自身の心を守るためにも。
あえて大きな声で喋る。カラオケでは男性ボーカルの曲を歌う。髪は短くする。声の低さを笑われたときは「うるさいわ! 傷付いた、めっちゃ傷付いたわ~!」と大袈裟に怒ってみせる。
そうすることで多少は慣れた気がする。それでも声の低さに触れられる度、心が痛んだ。たとえ相手が、立見のように悪気が無かったとしても。
「すまんすまん。でも本当に天雲の声が聞きやすいと思ったんやから、しゃあないやないか。実況の内容自体も、ちゃんとできてたで。よう練習したな」
「そうですか? へへへ……」
評価してほしいポイントを褒められたので、さとみはすぐ得意になった。切り替えが早いのだ。
ふと、実況の練習中に感じたことを立見に聞いてみようと思った。
「あの、先生。練習していて思ったんですけど、スポーツの実況してるのって、男の人ばっかりじゃないですか。アナウンサーは男女どちらも同じぐらいいるはずなのに、どうしてなんですか?」
素朴な疑問だった。さとみは兄の影響でプロ野球や高校野球の中継を見る機会が多かったが、実況アナウンサーが男性ばかりであることに初めて気が付いたのだ。声を出すことに、男女差なんてないように思えるのに。
立見は大きくうなずいた。
「そうや。ええとこに気が付いたな、天雲。お前の言う通り、スポーツ実況の世界に女性は少ない。全くおらんってことはないけどな。理由はいろいろあるみたいやけど……一般的に女性の声は男性より高いやろ? それが主な原因と聞いたことあるな」
「えっ? ようわかりません」
「つまりやな、高い声のほうが聞いている人の耳に残りやすいわけや。せやけどスポーツ中継の主役は競技を行う選手や。実況アナウンサーの声があまり高いと、競技に集中できず耳障りやと感じてしまう人がどうしても出てきてしまう。それで、声が高い女性より声が低い男性のほうが起用されると何かで読んだことがある」
「なるほど……」
そうは言ったものの、さとみはいまいちピンと来なかった。
声が低い女性だっている。さとみのように。
「せやから、天雲の実況は聞きやすいんや」
「それはどうも!」
立見に頭の中を見透かされたようで、いい気はしない。
「あとは、男女差別的なアレもあるんやろなぁ。昔の話やけど、オリンピックを女性アナウンサーが実況したとき、テレビ局へクレームがぎょうさん入ったらしいで。女が選手を呼び捨てにするなど、けしからん! とかなんとか」
「はぁ? クソですね」
理不尽すぎて、思わず汚い言葉を口にしてしまった。
「クソやなぁ」
あまりに率直なさとみに、立見が苦笑する。
「クソな世の中を、きみらの世代が大人になったら変えていってくれや。頼むで」
「そんなテキトーに言われてもなぁ」
立見の台詞にさとみが脱力していると『男女混合リレーに出場する選手は、集合場所に集まってください』というアナウンスが聞こえた。
ということは、休憩もそろそろ終わりだ。男女混合リレーの実況を担当するさとみも、スタンバイしなければいけない。
「天雲の仕事は次で最後か。がんばりや」
「言われんでも、がんばりますよ!」
立見にそう答えて、さとみは立ち上がった。
疲労はピークに達しているが、やりきってやる。そしてこの男女混合リレーが、天雲さとみの人生最後の実況だ。こんなしんどい放送委員なんて、来年も、高校生になっても、絶対にやらないのだから。
雀谷中学は、各学年がA組からD組までの4クラス。体育祭は、学年を跨いだA組からD組で4チームでの対抗戦という形を取っている。そして男女混合リレーでは、学年ごとに男女それぞれ1名ずつ走者が選ばれ、各チーム男女3人ずつで争う。
『ただし、このリレーは少し変わった点があります。どの走者がどんな順番で走るか、チームで自由に決めてかまわないのです。走者が走る距離は、学年・男女問わず100メートル。走る順番が勝敗を分けることになるかもしれません』
マイク席でルール説明の原稿を読み上げながら、さとみは考える。要は、男子のほうが女子より速いのだから、順番はそれを考慮して決める必要があるというわけだ。差し障りがあるので、そうはっきり言わないだけで。
さとみはトラックを眺めた。A組もB組もC組も、第3走者まで全て女子を並べている。D組だけは反対に、第3走者まで全て男子という順番だ。
「ははあ、D組は最初にリードを奪って逃げ切りを狙うわけやね」
「他のチームが最後の直線で差し切れるのか見ものですね、校長」
隣のテントでは、校長とPTA会長が楽しそうに話している。女子のほうがスピードに劣ることを当然だと考えている会話だ。さとみはわずかに苛立ちを覚えながら、手元のメンバー表とトラックの中央に集まっている走者たちを交互に見た。
どのチームも運動部の各学年エース格を揃えている。A組に至っては6人中5人が陸上部である。本気で勝ちに行っているのだろう。
存在感のある走者が多いからか、観戦している生徒たちから声援が飛んでいる。黄色い声をひときわ浴びているのは、D組のアンカーだった。
「
「
切れ長の目をした女子生徒が、微笑みながら声援の方向へ手を振った。すぐに「キャー!」とうれしそうな悲鳴があがる。さすが学校一の人気者だ、と思った。
チームカラーの青い鉢巻を額に巻いたショートカットの少女の名前は織田麗。3年D組の生徒で、サッカー部員だ。地元のJリーグクラブ・ガレアス神戸で活躍するサッカー選手の娘といえば、存在を知らない生徒はいないのではないか。
織田麗は外部の女子チームに所属すると同時に、学校のサッカー部で男子ともトレーニングしている。なでしこリーグからも注目されているらしい。だが、それだけが人気を集める要因というわけではないだろう、とさとみは思う。
整った顔立ちで、ゴツゴツしておらずスマートな体格。落ち着いた王子様然とした雰囲気。関西風に表現するなら、シュッとしている。
女子生徒たちがやられるのはさとみにも理解できた。というか、さとみも随分とやられている。何度か友人たちと連れ立って麗の試合を観戦したことがある。麗先輩はユニフォーム姿もいいが体操着もやっぱり似合うな、と思った。
『第1走者がコースに入っていきます。A組が赤い鉢巻、B組が白、C組が緑、D組が青になります』
さとみはマイクに向けて喋りながら、織田麗の紹介でもしてやろうか、と一瞬考えた。思いっきり観客を煽って盛り上げるような感じでどうだろう。需要はありそうだ。
ただ、目の前に校長やPTA会長がいるこの状況では、後で何を言われるかわからない、とすぐに思い直した。無難に、正確に、実況をやりきればいいのだ。
『さあ、位置について……スタートしました!』
4人の走者はスタートこそほぼ同時だったが、やがて唯一の男子であるD組が先頭に立った。
『D組、リードを広げていきます。ぐんぐんスピードに乗っています。他のチームは追いつくことができるでしょうか。今、D組の第2走者へバトンが渡りました!』
予想通りの展開ではある。歓声の中、さとみは平坦な調子で実況していく。プロのアナウンサーではないのだから、強引に盛り上げる必要なんかない。淡々と状況を伝えればいい。
その後、第3走者までD組は男子が続き、リードは随分と広がった。
『D組は第4走者へ無事にバトンが渡りました。この大きなリードを守り切りたい。他の3チームは追いつくことができるでしょうか』
D組の第4走者である1年生の女子は懸命に走っている。だが、男子が揃った各チームの第4走者にじわじわと差を縮められていくだろう。
逆転劇は観ていて面白いのかもしれないが、男子が女子を走って追い詰める様子はどこかグロテスクな気もする。D組が一気に最下位まで転落ということになれば、目も当てられない……。
さとみが先の展開を予想しながら実況していたときだった。
『A組が第4走者へバトンを繋ぎました。続いて、C組がバトンを、あっ!? 落とした、落としました! ああ、次のB組もバトンを落としてしまいました!』
予想外の事態に、さとみは声が上擦るのを感じた。さとみの実況を聞いて、観戦する生徒たちからどよめきが起こる。さらに、A組の第4走者が後方のアクシデントを気にしてちらっと振り向く様子もさとみの目に入った。わずかだがタイムロスになるだろう。
さっきまで頭の中で描いていた数十秒後の光景が、一気に覆った。心臓の鼓動が速くなる。
D組がこのまま逃げ切るかもしれない……!
『C組とB組、第4走者がバトンを拾って走り始めました。ここから追いつけるでしょうか』
いったん冷静に状況を伝えつつも、さとみの興奮は収まらない。
D組が、女子が、男子から逃げ切ってゴールするところを目撃したくないのか。さとみは見たい。しかもアンカーは織田麗だ。観客の大部分も望んでいるのではないか。
無難に、正確に、状況を伝えるべきでは? という考えも頭に浮かんだ。
でも、いいではないか。どうせ最後の実況なのだ。感情に任せて、やりたいようにやってやる。
『さあ! D組は大きなリードを保ったまま第5走者へバトンが渡りました! 第5走者はバスケ部の2年生、
意識して声のトーンを上げ、さらに選手の名前まで呼ぶ。突然の変化に、周囲の視線がさとみに集まるのを感じた。観戦している生徒たちも、わずかにざわめく。
知ったことか。
『やや離されて、A組も第5走者へバトンタッチ! 陸上部の2年生、
盛り上げるだけ盛り上げてやる、とテンション高く実況を続ける。
『D組の岸川、懸命に走る。走って走って、次にバトンを渡したい。アンカーには、ご存じ織田麗が待っているぞォーッ!』
調子に乗ったさとみが織田麗に視線を向けて叫ぶと、軽く屈伸していた麗もさとみを見ていた。
……さわやかな笑顔を向けられて、胸が高鳴ってしまった。
『え、A組の大津がすごい勢いで伸びてきている! D組との差が徐々に詰まってきた。だが、追いつくのはまだ厳しいか! ここでD組、岸川から織田へ、バトンが今、繋がったァ!』
スムーズにバトンを受け取り、織田麗がスタートダッシュを決めた。速い!
男子に混じってサッカーをしている麗を、さとみは尊敬している。さとみにできなかったことをやってのけているからだ。
小学生の頃、兄の影響でさとみも野球をしてみたいと思っていた。だが、兄の所属するチームには女子が一人もおらず、自分から言い出すことができなかった。男子だらけの世界に飛び込んで行くだけの熱意も勇気も覚悟も、なかったのだ。
結局さとみはグローブをはめることもなく、兄の試合を応援するだけに留まった。スポーツは観て楽しめればいいと考えるようになり、中学でも部活動はしていない。
だが、織田麗は違う。才能と環境に恵まれていたのかもしれないが、それでも本人の意志が強いのだ。さとみとは違う。それが眩しい。
さとみはA組に目をやった。もうアンカーへバトンが渡ろうとしている。
『A組もアンカーへバトンが繋がったァーッ! A組のアンカーは3年生の
実際、堂本の走りは麗とレベルが違っていた。速すぎる。確か短距離が専門だったはずだ。体育祭にどこまで本気なのか。それとも、女子になんて負けたくないのか。
『A組速い、A組速い! みるみる差が縮まっていく! 男の意地か!』
逃げる織田麗の顔が苦しそうだ。
『D組苦しいか!? だが女にも意地がある! がんばれ、D組がんばれ!』
負けないで、そのままゴールまで粘って!
『がんばれがんばれ! 織田麗! 織田がんばれ! あと少し、まだ差はある! 織田がんばれ! 織田がんばれ! がんばれ! 今、並んでゴール! わずかにD組が先頭かッ!?』
歓声の中で一気に叫び終えると、ゴールした勢いのまま織田麗が地面に倒れ込むのを見届け、さとみはマイクを切った。校長が苦虫を嚙み潰したような顔でこちらを見ていたからだ。
さとみは校長に10分以上お説教されることになった。
曰く、感情が入りすぎていて体育祭に相応しくない、特定の選手への応援になってしまって公平感に欠ける、無駄に男女対立を煽るんじゃない……ということだった。
さとみとしても、校長の指摘は全くその通りだと思うので、一切反論せず謝った。かと言って、悪いことをしたとは考えていなかったが。
ただ、間に入ってくれた立見が「まあまあ、校長。
閉会式も終わり、さとみは他の放送委員たちと片付けを行うことになった。パイプ椅子を両手に抱え、体育館へ運ぼうとしているときだった。
「お、いた。君やんな」
右後方から誰かに声をかけられたので振り向くと、
「織田……先輩」
ジャージ姿の織田麗がさとみを見て、にっと笑っていた。
「混合リレーのとき、がんばれがんばれって実況してくれたよね」
「そ、そうです。すいません……!」
「ははは、なんで謝んの?」
「いえいえ、な、なんとなく……」
麗と会話するのは初めてだ。しかも、こんな至近距離で。緊張のあまり挙動不審になってしまう。
やっぱりかっこいい……。
「君の声に、背中を押してもらえた気がするんよね。いつも以上の力が出た感じするわ。おかげでリレーは勝てたし、チームも総合優勝や。ありがとうね」
「そんな……」
ぺこりと頭を下げてくる麗を見て、さとみは慌てた。同時に、さとみより10センチほど身長が低いのだと改めて思う。
麗は顔を上げると、
「とにかく、お礼が言いたくてね。……なんだか勇気が出てきたし」
「えっ?」
「そいじゃね。本当にありがとう!」
それだけ言って、さとみに手を振ると笑顔で走り去って行く。小さくなっていく麗の姿をぼーっと見ながら、さとみは自分が名乗っておらず麗に名前を聞かれてもいないことに気が付いた。
まあ、いいか。麗に認知されることまで求めるのは贅沢というもの。『放送委員の子』くらいの立ち位置で十分だ……。
まさか、あの実況で織田麗に感謝されるとは思わなかった。感情に任せたはちゃめちゃなものだったけれど、喋っていて気持ち良かったのは間違いない。校長には怒られたが、立見は面白いと言ってくれた。麗は背中を押してもらえた気がする、と。
今年で最後のつもりだったけど来年もやってみようか、放送委員。
そして、その先も……。
さとみはこれまで自分の進路を真剣に考えたことがなかった。ぼんやりながらも、初めて将来の姿をイメージできたかもしれない。
スポーツ実況をする女性アナウンサー。
悪くない。女性の実況アナウンサーがまだ少ないというのなら、自分がなってしまえばいい。
悪くないどころか、ええやんええやん!
パイプ椅子を両手に抱えているのに、足取りが軽くなった。
◎ ◎ ◎ ◎ ◎
織田麗が高校に進学しないことをさとみが知るのは、その年の秋である。気になったが、わざわざ本人と話すような関係性を築くこともできなかった。
結局さとみは体育祭以降、織田麗と会話する機会が無かった。彼女が中学を卒業するときも。再会するのは、ずっと先の話になる。
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