ここから先に進むには……
「また……負けたのか?」
再び、昼間のキルギスの街で目を覚ますフタバ。もちろん、そこには先ほどまで満身創痍だったユーリ、別行動をしていたアックスやジルもいた。
辺りはそんな彼らを無視するかの如く、日常を送っている。
「全員しくじったってか?まったく……笑えねぇぜ」
「とにかく反省会は後にしようぜ。フー坊たちの話も聞きたいしな」
重たい空気のまま一行は再?三度目の宿に戻ることにする。
お互いが別々の目的を持って行動した前夜。
フタバらは街の問題を解決、対してアックスらは街に張り巡らされている結界の破壊。
各々が目的を達成出来なかったのは今日を迎えていることで結果は明らかだった。
「あの「外套の男」は私たちを追うように出現した。出現場所は定まってないみたい」
「それに俺とユーリを完全に狙ってきてた」
フタバとユーリの報告を聞くと、アックスとジルは重く息を吐く。
「こっちは新手に阻まれた。結界もそこそこ強度があるし、それに現れた奴にはまったく歯が立たなかった」
「う〜ん、阻まれてるっていうか、何だか遊ばれてるって感じだったな。見た目は幼い少女なんだけど、魔力も底しれなかったし……」
フタバらはお互いの話を整理した。外套の男は行手を阻むように現れ、そして執拗に追ってきた。まるで丘の上の術者を守るかのように。
一方、街の結界を壊そうするが、こちらも謎の少女に阻まれてしまう。しかも、外套の男と同じくらいかそれ以上の未知数な力を持ち合わせているようだ。
「俺らが思ってる以上に対策されてるぞ」
「とにかく。術者を倒すか、結界を壊すか。どっちが楽なんだろうな。私とアックスでもあの少女を相手取るのは骨が折れるぞ」
「あの「外套の男」を出し抜くのは不可能に近いわ。全員で奴の前に姿を現すのは危険すぎる」
それぞれが思案を張り巡らせるも状況は芳しくない。そんな中、フタバは自分の手のひらを見つめ、昨晩のことを思い出していた。
ユーリが襲われる危機に瀕した時、フタバの手から溢れ出た黒炎。熱を帯びる訳でもなく、何か飲み込むような冷たい感覚。
あの時の黒炎が出た感覚を研ぎ澄ますように思い出す。
全身の血管の一本一本に、生命そのものを直接注ぎ込まれるような――濃密で、どこか異様な感覚。
「何してんだ,お前?」
「おっかしいな……昨日はなんかこうブワーッと」
自分の掌を不思議そうに見つめる。何も起きる気配がなさそうな掌はうんともすんとも変化を見せなかった。
「……昨日、フタバから不思議な力を感じた」
「不思議って……?フー坊、魔法使えたのか?」
「違う……。魔力は感じられないんだけど……」
「前に言っていたやつか?」
言葉を詰まらせるユーリを助けるようにアックスが口を挟む。その助け舟にユーリは静かに頷いた。
「フタバには魔力を打ち消す能力があると思う」
「フー坊に?それは魔法なのか?だって、フー坊には魔力がないって……」
「魔法じゃ……ない気がする。まったく違う何かなの」
歯切れの悪い答えに一同は顔を見合わせた。何故なら、星霊族であるユーリは魔法の始祖、つまりは魔法や魔力を読み解く力は全種族の中で秀でている。
そのユーリが明かすことの出来ない事実にアックスとジルは信じられないと言わんばかりの表情であった。
「おい、その能力とやらは自在に出せるのか?」
「いや〜、昨日は何だか無我夢中とやらで……。どうやって出すかも分からないっていうか……」
「ったく、使えねぇじゃねか」
随分とひどい言われようである。アックスは落胆したようにドカッとベッドに腰掛け、嘆きのように木製の特有の軋み音が響く。
「でもさ、何で俺らをこの街に閉じ込めたがるんだ?」
「あ?そんなもん向こうに目的があるかだろうが」
「俺とユーリが丘の上の術者のところに向かうのを阻止するのは分かるんだけどさ、街を出ようとするアックス達を止める理由が分からないんだよな」
「結界を壊されるのを阻止してるに決まってるだろ?」
「だから、それが分からないんだって」
「……何が言いたいんだ、お前?」
「いや、目的を邪魔される存在をわざわざその場に留める理由ってなんだよ?」
フタバの言葉に一同は静まり返る。いきなり訪れた沈黙にフタバは何かまずいことを言ったのではないかと狼狽してしまう。
「—たしかにフー坊の言う通りだな。うちらみたいな存在、さっさと街から出せばいいのに何でそれをしないんだ?」
沈黙を破ったのはジルであった。フタバの上げた疑問に賛同したのか、この街での出来事を思い返していた。
一日を繰り返す街。命が途切れようが街が壊されようが鐘の音が鳴る頃には全てが元通りになっているこの街には明らかに魔法が絡んでいる。
「一日を繰り返す……?一体何のために?」
フタバは思案を張り巡らせる。邪魔になる存在を閉じ込めてまで、一日を繰り返したい理由。その真意は分からないが、フタバはそこに術者の意図が隠されていると疑った。
「もしかしたら、実は俺らは有利なのかもしれない」
「どういうことだ?半端なこと言ったら承知しねぇぞ」
相変わらずの形相で凄むアックス。フタバはそんなアックスに目線をやると、ニヤリと笑った。
「作戦会議だ。上手くいけばこの街を出られるかもしれない」
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