二 傍迷惑な異世界召喚
その高校三年生の晩秋の朝、
ただそれだけの一日、ただそれだけの朝のはずだった。
だが、その日に学校で起きた異変が、彼女の生活を騒がせることになる。
「ホントに勘弁してよ」
学校とクラスメイトの家族と各種メディアからのひっきりなしのコールが、自宅の電話を鳴らし続け、誰がそれを漏らしたものか、
高校と警察と消防からの事情聴取には、両親立ち会いで対応したが、
あの日から二日経ち、熱が下がっても、状況は変わらない。
あの日まで、
他人に羨まれる程では無いにせよ、大きな不運や貧乏くじとはなぜか無縁で生きて来たし、ささやかな幸運には結構恵まれて来た。
むしろ、今までラッキーだった分の揺り返しのように、
「なぜ貴女だけ助かったの?」
(それは、病欠で教室にいなかったから)
「娘(息子)を返して!」
(それは、私じゃなくて、お子さんを攫った相手に言って)
「これは、学校へのテロでは?」
(だから、やったヤツに言ってってば。
それとも、私をテロリスト扱いする気で言ってるの?!)
「これは、神が
(それ、ウチの
「これは、救いです。虐げられし御子達に神が救いの手を差し伸べられたのです」
(だから、それ、今子供を失って泣いてる親御さん達に言えるのかって聞いてるんだけど?!)
「彼らは何処に隠れているんですか? 記事にはしないので教えてください」
(なんで私が知ってる前提なの?
ついでに、記事にしないなら、そもそも
「彼等を返して欲しければ、真の神の霊力を認め、真の神に帰依せねばならない」
(それ、妄想って言うの、知ってる? そもそも、私はそんなこと欠片も言ってないし、アンタ達はナニサマなの?)
高校生の少女に、
空間転移、異世界召喚、神聖力と魔力、大規模誘拐、集団幻覚、禁止薬物の濫用、人身売買に大量殺人、興味本位の無責任な発言に始まり、妄言、虚言、陰謀論、もう何でもアリの様相を呈している。
『汝らは、異なる世界リューセッツラントに召喚された。
リューセッツラントが魔界からの侵略を受けたため、それに対抗する戦力として喚ばれたのだ。
汝らにはそれらに対応するため、これより戦うための
(だから、私は異世界召喚なんかされてないってば! 誰だか知らないけど、アンタが諸悪の元凶か! 攫った連中を、ついでに学校も元に戻しなさいよ!!)
心の中でなじる
『
【
:
:
:
(何よ、これ!
『魔力不足のため、全件に対応できません。向けられた全ての攻撃へ『
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