第2話 賭博なんて碌なもんじゃない
はい、どうも優楽ゆほです。
この度ね。生粋のギャンブラーであることを知られて、
ようつべ開けば私に関するものばっかりですよ。
まあ、私の見ているものがVtuberに偏っているので、そのせいかもしれないけど。
ほら、みてみな? サムネに「元清楚Vtuber 生粋のギャンブラーだった⁉」っていう動画がアップされて……おい、ちょっと待て、眉毛にかかった金髪、その金髪を後ろに一つに束ねている。俗にいうポニーテールに幼げのある童顔。碧い目にブレザーを脱いで、シャツだけになってる……これ発言してんの私の同期だよな。
動画は切り抜きみたいだけど…。
何やってんのあの子。ちょっと連絡して差し上げようか。
「もしもし?
「…? どれ?」
「どれって、私が元清楚ってなに? 今も清楚だよ?(仮)」
「ゆほちゃん。いっとくけど、もう清楚は無理があるよ? おとなしく基地外は基地がいらしくやっておいた方がいいよ?」
「…だれが基地外だよ」
「じゃあ。ガチャ」
そのあとに、プー、プー。という機械音が鳴る。
あんにゃろ、ガチャ切りしやがった。まあ、いいけどね。
私は広大な心の持ち主なんだよ。
✕ ✕ ✕ ✕
「どうもみなさんこんゆほ~。優楽ゆほです」
:キマシタワー
:こんゆほ~
:こんゆほ~
「はい、ということで、今回雑談枠なんですけど、」
私がふと、パソコンの端にある今回の配信のサムネイルを眺める。そこには「雑談」と大きく二文字が踊っていた。
「初めの話題ぐらいは私が出そうと思いまして……題して!「ギャンブルなんて碌なもんじゃない」です!」
:それ、やってた本人が言うことかなあ
:本人だからこそわかることがあるんだろ
:ついさっき負けたばっかりだしね
:まあ、そんなこと言いたくなるのもわかるよ
な、なぜが同情と哀れみのコメントしか飛んでこない。なぜだ?
そうだね。負けたからだね。
「なんだか、みんなのコメント見ていると、テメサスノネを思い出してきて苛々してきました。てめえなに勝手に差してんだよ」
:ひえっ
:怖い
:これがギャンブラー渾身の怒り
:強い(確信)
「あとですね。非常に癪で不本意ではありますけどね。なぜがわたしが競馬大負け配信をした直後に反響がものすんごいことになって、チャンネル登録者も12万から30万ぐらいになってるし、さらには6000ちょとだった同接数も1万ちょっとになってるし……いったいどうした? って感じなんですけど」
試しに、スマホで優楽ゆほと打ち込んでみると、優楽遊歩の後に「競馬」「ギャンブル」など、そんなことが書かれている。
「あの、なんかスマホで私の名前を検索すると、「競馬」とか「ギャンブル」とか、挙句の果てに「大負け」とかいう不本意な予想検索が出てくるんですけど、もしかして、これが皆さんの目に映っている私なんですか? いや、競馬とギャンブルはわかっても、なんですか? 大負けって。まるで私がずっと負けてるみたいじゃないですか!」
:間違ってない。寧ろ正しい
:まあ、あんだけ負けて、あんだけ叫べば。ねえ?
:というか、その結果に不満を覚えるほうがどうかしてる
:これが積み上げてきた実績というやつですな
:↑こんな実績、積みたくねえ
:禿同
:それな
:捨ててやるッ、こんな実績ッ
……そんなイメージらしい。ギャンブルなのはいいんだけど、負けてるっていうイメージはなくしておきたい。
「いやいや。そういう話じゃなくて、なんか今のままだと、ギャンブルやったら数字が伸びた、やったね! みたいな感じで終わるじゃないですか! 違うんですよ、ギャンブルはのめり込むと、ものすごいことになるので、本当にやめておいた方がいいんですって」
:ほう
:そういうもんなのか?
:↑そういうもんだよ
:ギャンブルってそんな注意喚起するほどのもんなのか?
:↑楽して稼ごうとする奴ほどのめり込む
「打つのが止まらないパチンコ。いつの間にか足を運んでいる消費者金融。次は勝てると思いながら再びまた足を運び、負けて、そしてその次は勝ち、負け、借りる。そんな悪循環を繰り返すんですから、本当にギャンブルは楽しむ程度。そもそも、ギャンブルに触れなければもっとやろう。なんて思わないので、手を出すのはやめましょう! という話です」
:なんか生々しい
:もしかしなくても、実体験ですか?
:俺が親だったら、泣いてる
:そういや、親はどうなの?
:ギャンブルもそうだけど、Vtuber活動とか。知らせてるの?
「あー。それはですね。Vtuber活動は知らせてないんですけど、借金やばかったときは話しましたね。バカ怒られました」
:当たり前
:まともな親でよかった
:なんでそんな親からこんな奴が生まれてくるんだ?
:人間の不思議
:ゆほだけで人間の不思議展開けるぞ。これ
:↑開けねえよ……いや、まさか?
「それはそうと、皆さんってギャンブルやったことありますか?」
:ある
:実は、あるんですよこれが
:ないなあ
:ありよりのあり
:ギャンブルだけはしたくないなあ
:パチ屋入ったけど、うるさくて逃げた
:アンパンメンのパチンコなら打ったことある
:↑おいw
:一人だけ家で打ってるやついる
「あー。わたしも持ってますアンパンメンのパチンコ。あれ何気に神台ですよね。でもわたしはアンパンメンより、ドラやもんのパチンコのほうが好きです。最近は販売されてないですからねー。悲しいですね」
:うん。アンパンとかドラカスがパチンコから手を引いたのはよかったと思う
:さすがにあれは子供をパチカスに進化させる狂気のおもちゃだから……
:むしろ、なぜあんなものを販売しようとしたのか。運営はくるってたのか?
:少なくとも、子供にやらせていい遊びではない
:↑それはそう。ほんとにそう
:というか、何も悲しくない
「あと、パチンコだけじゃなくて、スロットも売ってたらしいですからね。狂気の時代ですね。今を見てみてくださいよ。ギャンブルの「ギ」の字どころか「G」すらないですよ」
:というか、アンパンのパチンコ、あれは未成年もできる合法パチンコなのでは?
:↑確かに
:というか、対象が子供なんだからそりゃそうだろ
:子供のうちから脳汁を覚えたら、将来絶対ろくな大人にならない
「というか、そうですね。ギャンブルなんて碌なもんじゃない。って言うのにはちょっと語弊があって、正確には適度に楽しめなければギャンブルなんて碌なもんじゃない。なので、もしも私の配信を見て、ギャンブルやってみようと、思ってしまう人がいたら、あらかじめ退店する時間を決めて、決めた額だけを使って、パチ屋を出て行ってくださいね。私のところからパチカスなんて出したくないので」
:でも、そんなの守れない奴がほとんど
:一回、脳汁の出る楽しさを覚えてしまったら、もう手遅れ
:退店時間をきめても、閉店時間まで打ち続けちゃうからなあ
:なんかここ、ギャンブラー多くて草
:これが現代の生み出した悲しきモンスターたちか
「はい、皆さんもギャンブルは適度に楽しく……なんて言ってますけど、私は過激に激しく。ギャンブルやってますので、どうか節度は守ってやりましょう。忠告しておきますが、この中にタイムトラベラーがいたらその能力を使って競馬で勝たないでください。私に勝つ馬を教えてくれるだけでいいので」
:うーん。この
:人には使うなと言っておいて自分だけは使おうとする悪い人間の鏡
:タイムトラベラー「気づかれている? いや、まさかな……」
:↑タイムトラベラーおって草
「もし、タイムトラベラーがいたら、あとでDMしてください。ということで、そろそろ……二時間も配信やってるので、切りますか。それじゃあ、おつゆほ~」
:おつゆほ~
:おつゆほ~
:おつゆほ~
そんなコメントを眺めつつ、私は配信を切った。
タイムトラベラーは来なかった。
……まあ、わかってたけどね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます