終戦まで残り9日
永生さんに初めて出会ったのは、徴兵された時だった。彼女は元々軍人で、僕の所属する部隊の隊長として任命された。当時は少尉だった。
一目惚れだった。永生さんは美しい銀髪を固く一つに結んで、厳格な表情で戦場を見据えていた。
美しかった。僕が二十二年間出会った女性の中で最も美しいと思った。僕は乗り気じゃなかった戦争を少し頑張ってみようと思えたのだ。
戦場で、永生さんはとても厳しかった。弱音を吐く者には容赦なく叱責を飛ばしたし、時には体罰も与えた。でも僕は分かっていた。彼女は厳しくすることで、少しでも死者を減らしたかったのだろう。
実際、彼女に怒られるのが怖くて皆訓練に励むようになっていった。その御蔭か、戦場でも的確に動くことができて、他の部隊に比べて死者は少なかった。
彼女の命令はいつでも的確で、僕たちは彼女に生かされていた。永生さんは隊員たちとも仲が良くて、僕のことを弟のように思っていると言ってくれた。
でも、僕はそれが少し嫌だった。僕は永生さんに男として見られたいのに、彼女には僕が弟にしか見えていないらしい。十歳も年の差があれば仕方がないのかもしれないが、今も少し納得がいかないでいる。
そして、終戦が近づいてきたという噂を最近耳にするようになった。いや、噂など必要ないだろう。人類の文明は此処から始まったのだと言い張っていた文明の国は、太陽の国の圧倒的な力を前に殆ど抵抗もできず侵略されていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます