ココロの中の罠【全3話】【お題で執筆!! 短編創作フェス】【羽】【10】【命令】

Minc@Lv50の異世界転生🐎

第1話 罠のは・じ・ま・り

「アオイ!お待たせ!」

「うん、大丈夫。そんな待ってないよ」


「中々授業が終わらなくって…」

「大丈夫だって!それより!今日のお弁当はなに?」


 大学の中庭。緑に囲まれた中にテーブルセットがところどころにある。5月だというのに夏日を出すようになった昨今、このエリアは直射日光を木々がカットしてくれ木漏れ日で陽射しも柔らかくなっており人気のエリアだ。


「今日は……じゃん!唐揚げでぇす!」

「わーい!ヒナタの作る唐揚げ大好き!」


 弁当箱の中にはおにぎり2個に唐揚げ、卵焼き、ブロッコリーのピカタ、ミニトマトと彩りも綺麗だ。実家暮らしのひなたが一人暮らしのアオイの為に、たまに作って来てくれるのだ。


 アオイはヒナタが作ってくれた唐揚げを1つ口に入れる。ヒナタの作る唐揚げは前の晩から下味にしっかり浸して片栗粉で揚げる本格的な唐揚げで外はカリッと中はジューシーに仕上がっている。


「お、おいひぃ。いつもありがと。おいぃよぉ」

「大袈裟だなぁ」


「で、どうなの?就職先は決まりそう?」

「う~~ん。中々…あおいはもうあのインターン先で決めるんでしょ?」


「そうだね。その為に3年からインターンしてきたわけだしね。あれも選考の一つみたいなもんで、なんとか生き残れたからねぇ。今年は新しく入って来た3年のインターンの面倒を見るよ。多分、そこでも人間性がチェックされるんだと思う」

「大手は違うなぁ」


「まぁねぇ。でもヒナタは福祉だから引く手数多だよね?」

「うん、そうなんだけどさ。だからこそ悩むんだよ。育児休暇は取れるのかとかね、福祉だと人手不足過ぎて制度としてあっても本当に取れるのかどうかって心配なんだよね」


「そっかぁ。育児休暇かぁ。ヒナタ子供好きだもんねぇ」

「そうなんだよ。自分の子供との時間は大事にしたいんだよね。子供ってあっと言う間に大きくなっちゃうからさぁ」


「そっかぁ。子供欲しい?」

「うん、欲しいは欲しいけど…一人…じゃできない…よ…ね」


「う~ん、それは求婚プロポーズですか?まだ卒業もしていないんですけど…」

「あ、プレッシャーになっちゃう?よ?ね…」


 ヒナタがしゅんとする。アオイは慌てて


「そ、そんな事ないよ!ただ、もうちょっと卒業して仕事が軌道に乗るまで待ってくれたら嬉しいかも」


 そう二人は付き合っているのだ。1年の時に出会って2年の時から付き合っている。もう2年目だ。


「そっかぁ。。。早く子供は欲しいけど、確かに仕事がしっかりと地に足がついてからって方が育児休暇取った後に戻りやすいかも」

「そうだよ。別の施設になったとしてもさ3年くらいは経験があった方がいいって」


「結婚資金も貯めたいしね」

「でしょ?」


 ちょっとホッとするアオイだった。

就職に結婚、いきなりいろいろはさすがにキャパオーバーだ。


「おいしかったぁ!ヒナタ!今日もありがとう!」

「よかった」

 自分の作った料理を喜んでもらえてヒナタも嬉しそうだ。


「ちょっと待っててよ」

「あ、いいのに」

 アオイは二人分のお弁当箱を持って水道に行くと軽くすすいだ。


「汚れは早いうちがいいからねぇ」

「ありがとう」


 アオイはティッシュで水気を拭き、ひなたはお弁当箱を仕舞う。

その間にアオイはコーヒーを二杯買って来た。ささやかながらのお弁当の御礼だ。

ここまでがいつもの流れだ。


「あ、今度の土曜日なんだけど…ちょっと時間ズラしてもいい?」

「いいよ?なんかあった?」


 そう聞くアオイにヒナタは


「う~ん、友達のイブキって覚えてる?なんか会いたいって言われてさ。

 なんでも在宅ワークを始めたらしくって、儲かるからひなたにも知って欲しいって言われてさ。なんかすごい上司の人の時間が運よく取れたから話聞いてみてよってさ」

「へぇ。それって印鑑持ってきてって言われなかった?」


「あぁ…言われた…かも?」

「お、おぉ。うん、それさ印鑑持って行かないで。あと一緒に行くよ」


「なんか儲かる話だから教えられるのが一人までなんだって。だから『一人で来て』って言われてるんだよね」

「わかった。じゃ同席しないから時間と場所教えて近くで買い物でもして待ってるから。で終わったら一緒に約束したSPAに行こっ!」

 ヒナタが頷くとアオイはホッとした様子だった。



          ※




「ヒナタ!こっち!こっち!」

 店につくとイブキが奥のテーブルから手招きしてヒナタを呼んだ。


「ほい、座って、座って」

 イブキはヒナタを角の席へと座らせ自分が通路側へと着席した。


「久しぶり。今日来てくれてありがとう!」

 イブキはなんかやつれているようなのに目がギラギラとしていた。


 ウェイターさんがお手拭きと水を持ってきてくれたのでひなたはコーヒーを頼む。


「今日会うミツキさんはさ、すごい優秀なディレクターさんで中々会えないんだよ!社で一位を取るような人なんだよ!憧れなんだ!」

 すごい圧で話すイブキにヒナタは少し引いていた。するとビシッとスーツで決めた人が店に入ってきたかと思ったらイブキとヒナタの座っているテーブルの方まで颯爽と歩いて来た。


 姿勢もすごく良くてなんて言うかキャリアっていうか自信に満ち溢れているっていう感じがした。


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