第9話 「自分大好き少女」!

 でも、何があったかは推測がつく。

 郡頭こうずまちはだれとでも話す。

 早口で弾むようにぽんぽん話をする。明るい女の子だ。話題に問題がなければ、話しているととても楽しい少女だ。

 ところが、この郡頭まち子には大きな問題があって。

 それは、まち子の本質が「自分大好き少女」だ、ということだ。

 自分が世界でいちばんかわいい。

 自分が世界でいちばん美しい。

 自分が世界でいちばん頭がいい。

 自分の言うことが世界でいちばん正しい。

 したがって、世界は自分を最優先にして回るべき。

 そんな感じ。

 だから、まち子が調子に乗るとすぐに「自分め」が始まる。

 いったん始まると、その「自分褒め」を際限なく繰り返す。

 それだけならまだいいのだが、そこに、べつに言わなくてもいいような他人の悪口、それもかなり決定的な悪口が加わるのだ。それも同じように際限なく繰り返す。自分を褒めたたえ、他人を決定的にけなす。

 ときには話している相手の悪口を延々と続けることもある。

 りゆ先輩もそれをやられたのだろう。

 気にしなければいいのに。

 そういう子なんだから。

 「いや、そういうことじゃないんだよ!」

 りゆ先輩はイラッとしたらしい。

 でも、何が「そういうこと」なのかがわからない。

 「次の部長は早智枝さちえかまち子か」が問題なのではない、ということ?

 でも、「次の部長、どう思う?」ときいたのはりゆ先輩だ。

 千鶴ちづるはその「イラッ」を受け止める。

 驚いたふりで、先輩の顔を見返した。

 「どういう……」

 ついでに、ためらったふりもする。

 「ことですか」

 「大鹿おおがちゃんがさ」

 強い声でりゆ先輩は言った。

 あ、りゆ先輩、まだ強い声が出せるんだ。

 そう思った。でも、すぐに

「……大鹿……ちゃんが、さ」

と、弱い声に戻ってしまう。

 また首をすくめてちらっと千鶴を見て、千鶴と目が合って、目線をはずして前を向く。

 何か後ろめたいことでもあるかのように。

 しばらく唇のところに力をこめて、黙ってから、息をあふれさせるように言った。

 「大鹿ちゃん、自分が部長なら、副部長は千鶴ちゃんだって言ってるの!」

 「はいっ?」

 思いがけないことばだった。

 「千鶴ちゃん」ってだれだっけ、と、考えてしまうくらいに。

 でも、考えてしまっても。

 自分しかいない。

 「理由」と書いて「りゆ」と読むほど珍しい名まえでなくても、千鶴という名まえの子はこのフライングバーズには一人しかいない。

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