小さな世界

『え?』


いやだから、僕が発明者Xですよ。みなさんが散々悪者扱いする発明者Xです。まあ僕はダメな性格してますし?いいですよ、発明者Xで。そして今はあなた方に罰を与える存在です。


『本当にあなたがXなのですね? 

 嘘ではないですか?』


はい。今嘘をつくメリットがないですよ。

全世界の人類に嫌われるんですから。


『仮に、仮に本当にあなたがXだとしましょう。であれば質問したいのですが、あなたは誰かに罰を与えられるような身分ですか?』


身分?身分なんてものは自分が確立していくものですよ。社会の偏見で付けられる値札ほど不安定なものはありませんから。そして勝手に人の発明を悪用しといて、しまいには僕を悪者扱いするあなた方よりも、僕はまともに思います。


『では今回のテロ行為によって亡くなられた犠牲者の方々はどうです!あなたは人殺しですよ!』


この世界の軍人というのは、僕の発明を悪用して大量の人を殺した人たちですよ?そこは追求しないんですか?


『、元凶はあなたなんですよ!人類をあらぬ方向に導いたのはあなたの愚かな発明だ!』



『、現場リポーター。落ち着いてください!スタジオからもいくつか質問があります』

『断ります。こっちは命張って現場に一人で来てるんだ!無人撮影機渡されて!ぶつけ本番命綱なしですよ!私の心配もなしに安全なスタジオで偉そうに喋るあんたらの質問なんて知ったことか!!!』

『…』

『私はね!あそこで燃える施設の中で働く友人を失ったんですよ!あんなにも正確にミサイルを撃ったんだ!その神の発明とやらで私の友人を生き返らせることだってできるんじゃないですか??そうしたらあなたを世界を救った発明家として認めます』


残念ですが、僕はあなたに認められたくてミサイルを撃ったわけではありません。

うーんそうですね、トロッコ問題でも話しましょうか。


『関係のない話をするな!!!、!』


いや?非常に関係する話です。少し問題の中身を変えましょう。トロッコがこのまま進めば見知らぬ5人の若者に激突、別の路線にいる祖父は助かるとします。しかしレバーを押して路線を変えれば祖父に激突し、若者たちは助かるとしましょう。これに対しての選択肢は、


『うるさい!!!!!今はそんなくだらない話をする状況では、』


うるさいのはあなただ!!!!!


『、』


そうやって人の話を遮って自分に都合のいい話ばかり鵜呑みにする!


なぜ自分の視点でしか物事を見られない!!

幸せになるために生きるのだろう?

人を傷つけることがあなた方の幸せか!!!!


戦争に発展して、状況が悪くなればその発端は自分たちではないと?


あまりにも身勝手な!!!


『、!今この瞬間も誰もがあなたの愚かなテロに屈しまいと抵抗し!団結し!世界の平和を願っているじゃないか!』


ああw世界平和ねえ?

都合よく共通の敵が見つかりましたからねえ?僕が現れるまでは隣国同士頻繁に争っていたではありませんか。あなたの言う世界平和は、大事な大事な大事な部分を省略しています。かっこいい言葉だけ並べてないで、さあ、はっきり言いましょうよ?


あなたが願っていたのは、


兵士の友人と自分を中心とした、

身の回りの小さな小さな世界の平和でしょう?


『、いや』


図星ですか???????????

あなたの今日の不安は隣人との本当に些細なトラブルですよ。 

人間、明日の不安がなければ生きる目標もありませんからね?暇だからしょうもない揉め事で毎日ああだこうだ騒ぐんですよ。


だからほら、言ってくださいよ?


数十億の人間なんてどうでもいい。

隣国との関係なんかどうでもいい。

数人との平穏な日々が保てればいい。


あなたは

自分が中心でいられる

ちっぽけな薄っぺらい世界で生きているだけ。


『。』


まあ、わかっていましたよ?

わかっていたけれど、

まだ救いようがあると思って話してみました。


でもやっぱりどうしようもない。

言い訳ベースで変わる気もない。


あなたが偶然一般的な人間代表として僕と話せたこと、誇りに思っていいですよ。僕の一切の迷いを消し去ってくれたのですから。


『ち、違う、違うだろ!ほら大統領とか!有名人だっていいじゃないか!なんで私が代表なんだ!私は』


当事者になりたくないって?


『、』


はは!素晴らしいですよ本当に。

メディアは当事者意識を持てと誰かに言うだけの立場じゃない。あなた方だって当事者意識があるのか問われる存在だ、他責思考はやめて頂きたい。


何はともあれ、有意義なお話ができましたよ。

人間がいかに有害で無意味な存在か、

再認識できました。


当事者意識、本当に大事ですよ?

覚えててください。

まあそんなことも、B-jecterなしでは覚えられませんね。それにもう覚える必要はありません。


どうせもう死ぬんですから。







  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る