EP.8 なぞの人影

僕たちはあれから、さすがに心の準備やらができていないので、また夜に集まろうということになり、一度解散した。

自分の家に向かう途中、ふと真城しんじょう中学校が目に入った。

僕の家から真城中学校はかなり近く、徒歩5分もかからないのではと思う。

…今日の夜、あそこに行く。

空を見上げる。

太陽は、どこかに行ってしまったみたいだった。

どこに行ったのかは、厚い灰色のカーテンに仕切られて分からない。

それほど、今日の空は暗かった。

視線を空から前に戻した時、人影を見た。

それは久里くりの家から出てきていたが、久里ではないことはすぐに分かった。

久里であれば、あの身長は小さすぎる。

となれば必然的に、人物は絞られる。

僕は思わず、その人物の名を呟いていた。

「なんで、琴奈ことなちゃんが…」

…琴奈は、用事があると言っていた。

なら、今そこにいるのはおかしいのだ。

用事があって行けないから僕にこのメモを渡してきたのに、そこにいたらおかしいじゃないか。

…琴奈は、

「なんで、に居るの…?」

僕が、朝琴奈と別れる時に、琴奈が「後で、実さん」と小さく口パクしていたのを思い出すのに、そう時間を要しなかった。

あの時の口パクは本当なのか。

じゃあわざわざ「行けない」と嘘をついて僕たちに行かせようとしたのはなぜか。

僕にはまだ、分からなかった。

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