EP.9 らすと・ちゃんす

夜。

僕たちは今、真城しんじょう中学校の校門前にいる。

校門自体は鍵がかかっておらず、簡単に開きそうだ。

…なぜ鍵がかかっていないのかという疑問には目をそむけるとして。

「…それじゃあ、行くか」

陽登はるとが言った。

「そうね。早めに終わらせましょう」

三谷みたにさんが続ける。

「3年1組、だったよね」

久里くりの問いに、僕は答えた。

「うん。あってるよ」

「…行こっか」

夢羽ゆめばさんのその一言で、僕たちは進むことにした。

なぜか玄関口も開いているのでそのまま進む。

「バレたら不法侵入だな、こりゃ」

陽登が言うのを聞いて、僕は少し歩くスピードを速めた。

その後は、誰も何も言わず、ただ黙々と進んでいった。

階段を登る、たん、たん、という音だけが、僕たちの間に響く。

そして、先頭を任されていた三谷さんが、ピタリ、と足をとめた。

「着いたわよ、3年1組」

陽登が前に出て、言う。

「じゃあ、開けるぞ?」

誰も何も言わない。

沈黙を肯定とみなしたのか、陽登は扉を開けた。

がらり、と音がして、開く。

僕たち全員が中に入ると、声がした。

〈ようこそ、最後の救済の場へ〉

「は、?」

陽登が呟く。

〈ここは最後の贖罪しょくざいの場。いわばラストチャンスです。ここを逃せば、罪をおかした貴方方あなたがたには死が訪れる〉

ラストチャンス。

その人物はそう言った。

それに、罪?

一体何のことを言っているのだろう。

僕は罪など犯していないし、ここにいる誰かが犯したとも思えない。

そんな僕の考えを否定するかのように、その人物は言った。

〈貴方方は罪を犯しています。全員、何らかの罪を。それは小さいことかもしれませんし、大きいことかもしれません〉

そこで一旦切り、再び小さく息を吸って続けた。

〈しかし、小さかろうが、大きかろうが、罪は罪です。しっかり、制裁を受けていただきます〉

どうやら僕は、罪を犯していたらしい。

僕だけじゃない。

この教室にいる全員が、罪を。

この人物は、僕たちを断罪するためにここに集めたのだろう。

そうなれば、おのずとこの人物が誰か見えてくる。

その人物は、僕が良く知っている人物で、僕たちにここに来るように仕向けた。

きっと、彼女なんだろう。

〈皆様には、真実を知る義務がございます。土岐とき 依織いおりが自殺したのはなぜか。その目に焼き付けてください〉


ーーーーーーーーーーキリトリ線ーーーーーーーーーー

コメント欄での考察OK

(1つだけ長くてすみません)

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る