第4話 入学式④

 今年(第18期生)の入学者数は、655人。

 魔法学校志望の生徒は年々増加している。

 故に、受けたい授業の予約もまともに取ることができない。

 教育指導担当のアルカリーン先生は、来週に予定されている適性検査の結果から、予定を組むよう話はあったが、僕のとは意に沿わない。

 破裂音、光線、震動、血。

 思い出すだけで吐き気がしてきた。

 でも、立ち止まっていられない。

 すぐさま内ポケットに入れた紫苑石イニーク・スフィアを握り、なんとか溜飲を下げる。

「なにを突っ立っているの?」

 ……げっ。

 前から、絶滅種リムさんが堂々と歩いてきた。

「……えぇと、特に何でもないです」

 踵を返そうとしたが、裾を掴まれる。

「待ちなさい……ふぅ~ん。この授業受けたいの?」

 リムさんは、教室前に貼られた予定表を見ながら首を傾げる。

「……はい、でも予約が埋まってい……」

「恩返し」

 何やら紙のような触感が手に伝わる。

 ……何だ?

 思わず手元を確認する。

 そこには、『赤魔法概論』の予約チケットが折り畳まれていた。

「赤魔法系統は人気が高いから、優秀な生徒しか受けられないの。……それじゃ」

「え……あの!」

 振り返ったときにはもう、裾と胃は軽かった。

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