第19話 甘楽ってどんな人


翌日、マンションの地下駐車場から、智香の運転する黒いアルファードに乗って、ノイジ―セレニティの3人と甘楽は青山のスタジオに行く。


なじみと甘楽にはおなじみの場所だが、爽香と杏奈は初めてだ。


物珍しそうに見ている。

程なく大塚カメラマンと、スタイリスト、メイクのスタッフ二人もやってきた。


今日は3人の撮影なのでメイク二人だ。

それでも足らなければ智香も手伝うことになる。


服選びもメイクもできる智香は、やはり撮影には貴重な存在なのだ。



「今日もよろしくな。」大塚カメラマンが甘楽に言う。


今日も甘楽は助手兼追加カメラマンだ。


大塚の写真撮影の後、甘楽も写真を撮ることになっている。


今日撮った写真は、ノイジ―セレニティのウェブサイトに使うことになっている。


その意味、今日は公式カメラマンでもある。ちなみに、公式サイトの中の人も甘楽だ。


最初に準備ができたなじみが撮影ルームにやってきた。



「おー奈美ちゃん、今日も可愛いね!じゃあまず一人の撮影しちゃおうか。」


大塚がそう言ってなじみの写真を撮る。

なじみはいろいろポーズを取っていく。



甘楽はレフ板を持って撮影協力する。


大塚の撮影終了後、甘楽はレフ板を地面に斜めに立てかけて光を調整しながらなじみの写真を撮る。


なじみとしても、勝手知ったる甘楽の撮影なので、気楽にリラックスしたポーズで写真を撮っていく。


まあ何度も隅々まで写真を撮影しているので、どうすればいいかもお互いにわかっている。息ぴったりで撮影が進。


それを、メークを終えた爽香と杏奈がじっと見ていた。


「ナージャ、すごく自然な笑顔だね。ボク、感心するよ。」小柄な杏奈が言う。


「私なんか緊張してて、とてもナージャみたいな顔で撮影できないわ。」爽香も言う。


「まあ、そんな事言ってないで、リラックスしてやろう。まずは一人ずつね。


えっと、サーシャちゃん。一人で撮るよ。」大塚が促す。



「え~うまくできるかな。」そう言いながら爽香がライトの前に立つ。

甘楽は下からレフ板で光を当てる。



「はい、じゃあ笑って。目線くれる?いいよいいよ。もっと笑顔で。そこで一回転してごらん。いいよいいよ。  うーん。まだちょっと固いかな。」



大塚は爽香をリラックスさせようとするが、なかなか固い表情が変わらない。


「じゃあ、ちょっと休憩だ。甘楽に撮ってもらいなよ。」


大塚はそう言ってベンチに座り、缶コーヒーを口にする。


甘楽は爽香に近づき、目を見ながら顔を近づける。

爽香がドキドキしているのが見て取れる。


甘楽はささやく。

「サーシャ。すごく素敵だよ。あとは、大好きな人が近くにいると思って、『もっと私を見て! 私だけを見て!』と思いながらポーズをとってごらん。」


そう言いながら甘楽は撮影を始める。


爽香の表情が見違えるように良くなった。甘楽はどんどんカメラにその表情をおさめていく。


「お、あったまったな。じゃあここからはこっちの写真ね。」

大塚の写真は、宣伝材料としてスポンサーやメディアに配るためのものだ。


特に雑誌掲載とかされるわけではないが、宣伝材料なので、しっかりしたいい表情が必要なのだ。


「じゃあ、最後はアーニャだな。よろしく!」

大塚はそう言って、杏奈の写真を撮りだす。


「そうそう。いい感じだよ。 縫いぐるみ持って。 今度は風船をもって。じゃあ回って。

いいよいいよ。」


杏奈は自然な笑顔を見せ、どんどん写真が出来ていく。  大塚のあと、甘楽も撮るが、こちらも問題なくスムーズに行った。


「慣れてるのか?」甘楽が聞くと。


「うん。ボクのパパは娘大好きパパだったから、いつも写真は撮られ慣れてるんだ。」

杏奈が答える。



「さあ、ここからは3人だ。ある意味これが一番重要だな。三人のスタンダードポジションで立ってくれ。」



「ねえ、スタンダートポジションって何?」なじみが聞く。


「アイドルユニットのメンバーの標準的な並び方よ。センターが誰で、他の人はどっちに立つかってね。今回はナージャがセンターね。」



「え、センターって重要な役なんでしょ。サーシャがやんなよ。」


なじみが驚いて言う。


「ううん。少なくともデビューの最初は、一番有名なナージャがセンターよ。これは

決定事項ね。」

爽香が言う。


その横で、杏奈も腕を組んでウンウンとうなずいている。


「じゃあ、ボクはナージャの右側、カメラからは向かって左だね。下手(しもて)だよ。」


「アーニャ、なぜなの?」なじみが聞く。



「こうすると、背の高さが右肩上がりになるでしょ。株価チャートとか、みんな右肩上がりがいいの。だからその順番。」爽香が言う。


「へー、そういう考え方もあるんだね。知らなかった。ありがとう。」なじみが素直に礼を言う。



三人でのセット撮影の前、甘楽は杏奈に小声で言った。


「アーニャ、君がしっかりと元気に声を出して、グループを引っ張ってくれ。君がグループのムードメーカーになってくれよ。根暗の二人には無理だからな。」


「うん、わかったよ。しょうがないなあ。」

杏奈はニコニコだ。


それから甘楽は爽香のところに行き、小声でささやく。」


「サーシャ、しっかりした君が3人をまとめてくれよ。他の頼りない二人じゃ無理だ。


実質リーダーの君が、他の二人を導いてやってくれよ。サーシャだけが頼りだ。」


爽香もそう言われて嬉しそうだ。


甘楽はなじみにも内緒話をする。

「他の二人は正直トーシロー(素人)だ。まともな演技は期待できない。


やっぱり慣れてるお前がしっかりしてくれよ。撮影の成否はお前にかかってる。」

なじみも真剣にうなずいた。



これにより、適度な元気さとバランス、そして慣れた余裕があいまって、いい写真ができあがることになった。


並んで笑顔、ジャンプで笑顔、縦に並んで千手観音など、小道具なども使いながら撮影は順調に進んだ。


そして昼食休憩と、二回の衣装替えをはさんで、撮影は終了した。



「KANN,お前女の子を乗せるのがうまいな。若い子の時はお前がいるといいな。」


「大塚さんはもう少し大人の女のほうが向いてそうですね。乗せるんじゃなくって乗るほうでね。マダム・キラーでしょ。」


「おいおい、あまり人聞きの悪いことは言うなよ。俺は真面目に写真を撮ってるだけだ。」


「そうなんですね。でも人妻はほどほどにしましょうね。」


「おい何だそれは。」


「どっかのスタイリストが言ってましたよ。人妻キラーの大塚さんは、撮影後の運動も得意だって。」


「あまり本気にするなよ。 ま、今日のメンツは俺には若過ぎだから、その辺はお前に任せるよ。」


「はい、任されました。」


「さらっと言うところが凄いよな。せいぜい刺されるなよ。」


「いや、大塚さんとは違いますよ~」


そんな会話の後、5人はまた智香の運転でマンションに戻った。




甘楽は夕食を作り、5人で食卓を囲む。


「え、これ甘楽が作ったの?」なじみが驚く。


「甘楽くん凄いですね。」長身巨乳の爽香も同意する。


「ボクのお嫁さんに欲しいなー」童顔の杏奈も言う。



甘楽は笑って答える。

「ま、家事は嫌いじゃないからな。あ、洗濯も、必要ならやってやるよ。洗濯籠に入れたまま置いておいてくれれば、別々に洗濯するよ。洗濯機は3台あるしな。


あ、下着は洗濯ネットにいれといてくれな。」


「甘楽くん、女子力高いな~」杏奈が感心する。


食事が終わると三人は部屋に戻る。甘楽は片付けのあと、写真の確認をすると言う。

智香は借りている自分の部屋に戻る。



三人は部屋に戻り、また一緒に風呂に入る。


「脱いだ下着とか、甘楽くんに洗ってもらうのはちょっと恥ずかしいね。」爽香が言う。


「まあ、そのうち慣れるわよ。たかが下着よ。」なじみが開き直って言う。


「えー、ナージャは恥ずかしくないの?」杏奈が聞くと、


「ま、水着とかも観られてる、というか撮影されてるしね。」なじみがごまかす。


「ねえナージャ。甘楽くんとはどういう関係なのよ。彼氏なの?」爽香が問いかける。


「違うよ。」


なじみは平然と否定する。


「ボク思うんだけど、甘楽くんってボクのこと好きだと思う。ボクを見る目が熱いよ。それに、ボクにささやくとき、何か特別感があるんだ。


スタッフと恋人になるのって、いいのかな?」


「ちょっとアーニャ、それはきっと気のせいよ。だって、甘楽くん、私のこと好きみたいだよ。

視線が熱いし、ささやきも愛があるよ。、声のトーンも違うもの。


でも私はアイドルだから、スタッフと付き合うのは無理よね。彼はわかててるのかな。禁断の恋になっちゃう。 でも、そのほうが燃えるのかもね。」


「えー、甘楽くんはボクに惚れてるよ。間違いない。イケメンだし、女子力高いからどうしようかな。」


二人の話を聞きなながら、なじみが溜息をつく。


「甘楽ってやっぱり女たらしよねえ。好きになったらまずいよ。」


「ナージャ、本当はどうなのよ?」爽香が聞く。


「知りたい?」


「「知りたいよ!!」」


「実はね…セフレ」


「「え~!」」


「ナージャ、ダメだよ。男の子に都合よく遊ばれて捨てられるよ。

というか、男のおもちゃになるのはダメよ。


でも、ナージャって経験あるのね。」」爽香が言う。


「違うの。彼が、私のセフレなのよ。」なじみが言う。


「え、何が違うの?ボクわからないや。」


なじみが言う。

「私がエッチしたくなったら、甘楽に頼むの。甘楽はだいたい応じてくれるし、テクニックもあるから、すごく気持ちいいの。」


「そんなにやってるの?」杏奈が言う。


「やってるって…」爽香がつぶやく。


「まあ、そこそこは。でも、単なるセフレだから、恋人とかじゃないよ。」


「そうなの?」


「初体験も甘楽だけどね。最初から気持ちよくしてくれたよ。その時からもう経験豊富だったみたい。」


「…さすがね。」爽香が溜息をつく。


「実はね…初体験、ビデオがあるんだよ。見たい?」なじみがちょっと煽る・


「「見たい!」」



10分後、二人の顔は上気していた。


「ナージャ、キレイだね。」童顔の杏奈が顔を赤らめながら言う。


「思ったよりエッチじゃなくて、素敵な思い出なのね。」 爽香も言う。



「うん。甘楽は優しくて、うまかった。それで癖になって、時々お願いしちゃうの。」



「甘楽くんから呼ばれてエッチされることはないの?」爽香が聞く。

「ないよ。だから、彼が私のセフレ。」


「甘楽くんに彼女が出来たらどうなるの?」杏奈も聞く。


「え?別にどうもしないよ。してくれなくなるかもだけど、それなら、仕方ないよね。


ただ、甘楽が特定の女の子と付き合うなら、セフレを許す彼女にするかもよ。 


昔の日本の男性って、妾とか二号さんを作って当たり前だったよね。」


「甘楽君に別のセフレができたらどうするの?」 爽香が聞く。


「うーん、もういるかもよ。別に聞いてないけど。まあ、シたいときにダブルブッキングでできなくなったら残念ね。」


「ナージャがここまで割り切る子だとは思わなかったよ。」杏奈が意外そうに言う。


「うーん。甘楽は私の恩人だしね。私は甘楽を束縛しないし、そんなことはできない。彼も私を束縛なんかしない。それは信頼関係ね。


信頼してなかったら、ヌードとかエッチの動画なんか撮らせないよ。」


「それもそうね。」爽香は納得する。


「…ねえ、甘楽くんって、ボクのセフレにもなってくれるかな?」杏奈が突然言い出しあ。


「え、アーニャが?もうちょっと待ったほうがいいんじゃない?」

爽香が驚いて聞き返す。


「サーシャもボクを子供扱いするんだね。ひどいな。もちろん胸はサーシャやナージャには勝てないけど、16歳のJKとしては、別に問題ない体だと思うよ。」


「でも、社会通念としてどうなの?」爽香が続ける。


「ナージャがよくて、ボクがダメっていう理由はあるの?」杏奈が反論する。」


「…」爽香が沈黙する。


「自分がやりたいから、ボクを阻止するの?」杏奈が言う。


「え、そんなことは…。」


「ボクはいいよ。サーシャも甘楽くんをセフレにしても。」


「アーニャ、何言ってるの?」


「ボク、知ってるよ。サーシャがエッチなことに興味津々なの。部屋はお隣さんだからね。聞こえるんだよ。何とは言わないけど。」



「私、ひとりエッチなんかしてません!」爽香が叫ぶ。


「えー、ボク、聞こえるって言っただけだよ~語るに落ちたね。」


「あっ…」爽香は真っ赤になり、押し黙った。


「はいはい、もう寝ましょうね。」なじみが手を叩いて話を終わりにする。


三人の間に微妙な空気が漂ったまま、その夜はお開きになった。





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こんにちは、お急ぎですか。

〇〇〇〇が戦えと言ってる。


作者です。

第19話をお届けします。


え?雲行きが怪しい?

だってこのタイトルたもの…(笑)


続きは…待つ間に★や??でもつけてくださいね(笑)


お楽しみいただければ幸いです。

ハート、★、感想いただければ幸いです。

特に★が増えると作者は喜びますので、まだの方はお気軽にお願いします。







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