12. カクヨム連載で意識していたこと
カクヨムで小説を連載する時と、新人賞向けに小説を書く時とでは意識することがまったく異なる。
これは当たり前のことだが、このことを強く意識していないと連載中にPVなどが伸び悩み、モチベーションを保つのに苦労することになる。
本節では、カクヨムで小説を連載する際に意識したことをまとめたいと思う。
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これはカクヨムでも新人賞応募作品でも言えることだが、大前提として作品は目新しいものでなくてはならない。
カクヨムだとモブ・悪役転生物など、いわゆるランキング上位に上がりやすい作品を書いたほうがいいのは間違いないと思うが、それを踏襲しつつこの設定の悪役転生物ってどんな話になるんだろうと思わせるものでなくてはならない。
既存作品の設定を模倣するとレコメンドされやすいなどのメリットはあるのかもしれないが、あまりに似すぎていると読んでる最中に飽きられるし、独自の方向性や当該作品との差異は絶対に必要になってくる。
重要なのはその作品を読む時間を割くほどの価値を感じさせることであり、ここがきちんと読者にアピールできていないとそもそも興味すら持ってもらえないだろう。
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次に重要なのは、一刻も早くタイトル通りの展開に持っていくことだ。
多くの読者は、タイトルを見て作品を読むかどうかを決める。
それなのに、いつまで経ってもタイトルに謳っている設定通りの話にならなかったらどうだろう?
「せっかく時間を割いて読んでるのに、全然タイトルと違う話を読まされてる。騙された」と思われてしまうだろう。
タイトルに標榜した内容を提供するというのは、読み続けてもらうための絶対条件だ。
「二十話まで展開が進まないとタイトルにたどり着かない」というような考えは作者側の甘えであり、そこまで耐え忍んでくれる読者などほとんどいない。
出落ちっぽくなろうが素早く作品タイトルの設定に到達し、そのテーマに寄せて書き続けることが重要だと思う。
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次に重要なのが、カタルシスを感じさせることだ。
読書の喜びの中で大部分を占めるのは、カタルシスを得ることだと思う。
ミステリで謎が解けた時の快感、アクションで苦しい状況を打開する快感、反吐が出るような悪役を倒した時の快感、苦労した目標を達成した時の快感――これらを与えてくれる作品が良作と呼ばれやすいことに疑いはないだろう。
連載小説では特に、このカタルシスをうまくコントロールすることが非常に重要だと思う。
WEBで連載小説を読む読者の多くは、細かくカタルシスを得たいと思っているはずだ。
十話、二十話に到達するまでカタルシスが得られないのでは、読者は作品を見限るだろう。
最低でも三〜五話、理想を言えば序盤は各話毎にカタルシスを得られる要素があるのが望ましいが、このあたりも踏まえて作品の設定を練ることが重要だ。
雑誌連載のミステリでも、短編連作形式で一話読み切れば謎が解明するものが多い。
細切れのものを読者に読ませるのなら、カタルシスをちゃんと設計して提供することは絶対に忘れてはならないことだと思う。
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カタルシスと同じくらい重要なのは、成長感・進捗感だ。
ソーシャルゲームをやっていて、「このゲーム飽きたわ」と感じたことはないだろうか。
私はある。
そして多くの場合、ソーシャルゲームに飽きる瞬間というのは「自分の編成するパーティに成長感が得られなくなった時」だ。
人は変化しない・成長しないものを追っていると、必然的にそれに飽きてくるものだ。
例えカタルシスが得られていたとしても、成長しない主人公や何の変化も起きない日常が延々と続いていたら、読者は飽きて別の作品に去ってしまう。
これは別に主人公が強くなる、ということに限らない。
街が発展していったり、文明が進んだり、メインキャラが増えたり、新しいタイプの事件が起きたり――とにかく成長か変化を起こし続けることこそが、読者を飽きさせないために重要なことだと思う。
物語の中で主人公達がどう成長していくか、キャラの成長以外に何を発展させていくのか。
このあたりも、カタルシスと同様に明確に設定しておくことが重要だと思う。
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ここまでは、いわゆる報酬系を刺激することが大事だと語ってきた。
これよりは優先度は下がるものの、連載小説における重要要素は他にもある。
例えば、各話のタイトル。
これは真面目につけてる作者もつけない作者もいるので、なかなか難しい問題だが、個人的にはつけたほうがいいと思っている。
最新話に追いつこうとしている読者が「展開に飽きた」「次の展開にさっさと移動したい」と思った時に、各話タイトルがついていないと次の展開に進む節目のポイントがわかりにくいが、タイトルがついていると間の話を飛ばして次のカタルシスポイントへと飛ぶことができるからだ。
無論作者としては間の話もちゃんと読んでほしいのだが、読まれないよりは読んでくれたほうがいい。
更に言えば、タイトルがついていると読み返す際に、どのエピソードを読み返したいか一発で視認することができる。
読者の読むモチベーションを削がないという意味でも、各話タイトルをきちんとつけておくことは大事だと思う。
次に、各話の終わりの引きも忘れてはいけない。
イベントが進行中の、次の展開への期待感。イベントが一段落した後の、次の事件の匂い。
「次の話を読みたい!」と思わせることは、特にWEB連載小説においては非常に重要だ。
これは連載漫画もそうだし、ドラマなどでも意識されていることが多いだろう。
私の愛する海外ドラマ「ブレイキング・バッド」は、この引きの作り方が非常にうまく、事件が終わっても次の事件が起き、視聴者の興味を尽きさせることがなかった。
毎話毎話キリがいいところで終わってしまっていると、読者が次の展開を気にならずに「キリいいからここで切るか」という判断をされるきっかけになってしまう。
絶えず事件を起こし、絶えず読者の興味を引き続けるためにも、各話で次の話につながる引きを意識することは意味のあることだと思う。
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ここまで、カクヨムで連載小説を書く際に、自分なりに意識していたことをまとめてきた。
これらを踏まえた上で、これらを盛り込みやすい設定で話を設計することが、PVなどを伸ばす一助になるかもしれない。
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