第7話 食料が尽きそう
第七話 初めての食料探し
朝の光が差し込む頃、トモヤは小屋の外に出た。
空気は少しひんやりしていて、森の奥から鳥の声が聞こえてくる。サナとユキはすでに外に出ており、何やら話をしていた。
「食料、もう少しで尽きそう。」
サナがそう呟いた。
ユキが持っていた布袋の中をのぞくと、乾いたパンが数個と、少しの干し肉だけが残っている。
「これ、召喚されたときにもらったやつ。」
ユキが袋を閉じながら言う。
サナは小さく頷いた。
三か月も、この村の片隅で細々と暮らしてきた二人にとって、それは最後の蓄えだった。これまでは近くの畑を手伝って野菜を少し分けてもらっていたが、それも毎日は頼れない。
トモヤは二人の会話を聞きながら、静かに考えていた。
(俺も、何かできないだろうか…)
息を整えながらサナの方へ歩み寄る。
「食料、少し探してみないか? 森の方に何かあるかもしれない。」
サナは少し驚いたように目を瞬かせた。
「でも、トモヤさん、体はもう大丈夫なんですか?」
「完全に治ってないんですから。」
そう言いかけたサナの言葉を、トモヤが穏やかに遮った。
「完全に治ることはないよ。俺にも何かやらせてよ。」
その言葉に、サナは一瞬だけ息をのんだ。
彼の声には、静かな決意のような響きがあった。
ユキは腕を組んだまま、小さく頷く。
「森なら、少し奥にウサギみたいなのがいるのを見た。けど、罠とかないと無理。」
「罠か…」
トモヤは周囲の木々を見渡す。
枝や蔓、石。材料はそこらに転がっているが、知識はない。
「村の人に教えてもらえるかもしれません。」
サナが提案した。
「解体とかも、私たちだけじゃ難しいですし。」
「そうだな。できる人にお願いして、やり方を教わっておこう。次からは自分たちでできるようにしたい。」
トモヤの言葉に、ユキがわずかに口角を上げた。
「おじさん、やる気出てきたじゃん。」
「まぁ、食べないと生きていけないしな。」
トモヤは少し照れくさそうに答える。
サナは柔らかく微笑んだ。
「じゃあ、今日のうちにお願いしてみます。私、話してきますね。」
サナが村の方へ駆けていく後ろ姿を見送りながら、トモヤは胸の奥にわずかな高揚感を覚えていた。
受け身のままでいた自分が、ようやく何かを始めようとしている。
それが小さな一歩でも、今の自分にとっては大きな意味があるように思えた。
森の風が、ゆっくりと頬を撫でていく。
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