異聞聖王国物語

カルカ様ファン

崩御

いつものように兄と読書をしている時のことだった。何か違うと強いて言うならば、珍しく雨が続いてることくらいである。


神官がノックもせず扉を乱暴に開き、慌ただしく図書館に入ってきて非情な現実を告げる。


「聖王様が ご逝去なされました」


長い沈黙の中、雨が降る音だけが室内を支配する。


「わかりました。お兄様...行きましょう」


「そうだな」


2人はとうとうこの時が来たのだと悟る。いつも明るく振る舞う兄カスポンドも今は声が暗い。


読みかけの本に栞を挟むことも忘れ図書館から退出する。長い廊下を進み父の部屋に入る。

そこには今朝も元気にハグをしてくれた父が高位の神官と数人の聖騎士に囲まれ、ベッドに横たわっている。とても苦しそうにしていた咳すらする気配もない。


数ヶ月も前から病床に伏していた為、元から覚悟は出来ていた。しかしいざ訃報を知らされると、胸が締め付けられ、涙が零れ落ちる。

その時だけカルカには神官と聖騎士達が脆弱な人間に死を告げ、嘲笑うような死神の群れにも見えた。



神官と聖騎士による国歌斉唱が終わり、追悼の辞が述べられていく。最後の一人が述べ終わりいよいよ出棺の時間だ。

聖王の名前が刻まれた棺へと納棺し、聖王家の人間が眠る墓へと埋葬されていく。



「安らかにお眠りください、お父様」





葬儀が終わり談話室で一人、暖炉の火を見つめながら父との思い出を振り返っていると目から涙が這い出てくる。


「やだ…」


いつまでも泣いているわけにはいかないと、滲んだ涙を腕で擦り、心を奮い立たせる。


ふと視線を感じ、振り返るとそこには葬儀の際に喪主を務めていたカスポンドと複数の神官が数人、カスポンドに付き従い談話室へと入ってくる。


「カスポンドお兄様…それに神官の人達?」


「そろそろ泣き止んだかい?」


「な、泣いてなんかいません。目にゴミが入っただけです。ズビッ」


声を震わせるも強がらも笑顔を無理やり作る。



「ならいいのだが。」


「葬儀が終わったというのに、神官の方達を集めてどうしたのですか?」


「はい。実はなぜ我らも招集されたのか、まだ教えてもらっていないのです」


先頭にいる老齢の神官が答える


「ああ。そのことだが」


優しげな表情から一変、神妙な面持ちになる。嫌な予感がし、頭の中で外れてくれと頭の中で叫んぶ。

しかし無情にもその予感は的中してしまう。




「新たな聖王の座は、我が妹カルカに譲ることにする」


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