【#7】受付。VTuberデビューする。


──何故か勝手にVTuberの見た目とか設定とか名前とか諸々サークルメンバーに決められていた俺、栞です。

…後から出来上がった資料を見て死んだ目になったのは言うまでもない。


「えぇ、マジかよ…」


思わず長年取り繕っていた素が飛び出る程、俺と違うタイプのイケメンを見て困惑してしまう。

──どこかで見たことあるような顔立ちに白い肌、白い髪そして鋭く尖った銀色の瞳。リアルの俺はもうちょっと優しめな顔立ちからして真反対に位置している。


全体的に色素薄い系のこのイケメンの名前は白金シオン。何故に義姉さんの名前が俺のVTuberの名前なのか、絶対にふざけて入れたことがわかる。



「しかもどうしてまたマネージャーが…」


「不満かい?サークルリーダーである私がマネージャーで」


「不満も何もあなた部外者ですよね?」


「部外者とは酷いな。これでもVレコの社長とは熱い交渉を交わした仲なのだがね」


「義姉さんから聞いてましたけど無断でミミック〇ね丸君を取引材料に使ったこと怒ってますよ?」


「相変わらず酷いね。その名前」



失礼な!これでも心血注いで作り上げた発明品なんだ!それ相応に愛情がこもってる…はず。



「それでどうだい?完成のほどは」


「いやまぁ………うん。クオリティが無駄にレベチ過ぎて逆に引いています。というかこのキャラになりきれる自信がありません」


「ははは、私もたった今前田君が作り上げた立ち絵を拝見して今更好きなようにさせたこと後悔してるよ。あまりにも印象が強・・・・・・・・・すぎる」


「これじゃあ同期に視聴者が向かなそうですね」


「あぁ、これじゃあクレームがくるな」


「その前に中身と釣り合ってません」


「そこは……まぁ、頑張れよ少年」


「あなたと三歳しか違いませんけどね。全ての元凶」



前田は後で殴るとして、このままじゃ埒があかない。ここは腹を括るしかないのだろう。



「緊張はしてないかい?」


「してないと言ったら嘘になりますね」


「おや?ドラゴンの威圧ですらきかない君が、緊張しているなんて」


「それとこれとはわけが違いますよ。その気になれば神でさえは殺せるんです。勘違いしないでください」


「まったく予想だにしない解答どうも…ん?俺?」


「あ、ここに不備がありました。リーダー確認を」


「あぁ。どれどれ──」




◆ ◆ ◆ ◆




「…はぁ、どうしたもんか」


「なぁに〜姫川きゅん。珍しく悩んでいるみたいだけど〜オネエ・・・さんに言ってごラーン?」


「あ、ごめんなさい」



もう来てたのか……変なところ見られてしまったな。


「いいのよ〜そ・れ・で、悩めるイケてる男子君は何に悩んでいるのかなぁ?オネエさんに相談してみな〜い?」


言って大丈夫かな?

……まぁ、聞いてもらうだけならいいか。



「…そうですね。例えばミチルさんは絶対に自分に似合わないだろうけど着てみたいオシャレな服を着る時、どうしていますか?」


「んー?……そうねぇ…」



彼…失敬彼女・・は、森末満さん。

ファッションデザイナーという職に就いており俺と彼女はまぁ…バイトとして彼女の仕事を手伝っている間柄だ。そんな彼女に俺のガワとなるVTuberの立ち絵を見て思った悩み事を打ち明けてみた。これで解決出来るとは思っていない。ただ第三者の意見を聞いてみたかったのだ。



「わたしが言えるのはぁ…結局のところ気持ちが大事ということかしらぁ」


「気持ち、ですか…」


「そうなのよ〜似合うか似合わないかを決めるのは他人じゃなくて自分が・・・決めることよぉ。わたしの服を手に取ってくれたお客様はぁ、この服可愛い!とかこの服かっこいい!とか〜選んで買ってくれるわけじゃん?自分ちゃんがこの服が素敵と思った服は自分ちゃんにとって、と〜ても素敵な服なのよぉ。つまりはぁ、服を来た自分を思い浮かべてみて、良かったらいいんじゃない?」


「…なるほど。貴重な意見ありがとうございます」


「ふふふ〜まぁ、例えどんな服でも姫川君なら似合うと思うわん♡もっと肩の力抜けばいいのよぉ」



ガワを纏った自分を思い浮かべろ、もっと肩の力を抜けか……はぁ、悩む必要なんてなかったな。

ハハッ、これじゃあ初配信を見たサークルメンバー奴らに笑われてしまうな。いや絶句するか?まぁ、奴らの驚いた反応を見られるのは面白いか。

……なんだかその時が楽しみになってくるな!





◇ ◇ ◇ ◇





──俺がVTuberになってやろうと覚悟を決めた要因の一つに金を稼ぐのは勿論の事、もう一つ別の理由が存在した。


それはもうもう一人の自分と断言出来る程に定着した丁寧な口調の私を一時的に抹消する・・・・・・・・こと。


おそらく無意識の内にストレスを溜め込んでいるだろうこの喋り方を発散する方法を俺は探していたのだ。全盛期はモンスター相手に発散していたツケが回ってきていて、表に素の自分が度々現れるようになってしまった。


──だから実は義姉さんの話は、渡りに船だったりする。


「はぁ、いよいよですか」


正直言って、少し緊張している。リーダーにはああ言ったが、俺も人間であるからしてそういった感情も持ち合わせているのだ。1部では俺のこと殺戮マシーンだとか好き勝手言われてるけどさ。……主に義姉さんに。


マネ(楓)〈栞、心の準備はいい?〉

白金〈はい。リーダー準備出来ていますよ〉

マネ〈じゃあ、ガツンと暴れて来い!君の活躍、期待しているぞ?〉

白金〈了解〉


じゃっ、始めるかぁ。いっちょ、ぶちかましたろww


「────こんかねー。Vレコ新人VTuber第五期生の〜白金シオンだぞっ!下等生物の野郎女共ー集え集え!」


よしっ!挨拶決まったぜ!

ガワという仮面を被った今の俺は無敵だぁ!

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