【#6】サークル会議。尚、主人公は不在!


「では、皆さん。いいですか?」


「「「「「「「ゴクリ」」」」」」」



謎の緊張感が漂うなか、サークルメンバー一同の視線はリーダー天城楓あまぎかえでに集まる。その熱が最高潮に達した時が、我々の動くべき時。

この場に栞がいたとしたら間違いなく『アホらし』と切り捨てるだろうが、残念ながら彼は不在だ。



「──第5回V活サークル会議。『栞がめでたくVTuberなったから彼のキャラを考えようの会!!』」


「うおー!!」


「やったぁぁ!!」


「栞、栞!!」


「やっだぜ!」


「ふふっ」


「なお、当事者はバイトです」


「ぱちぱちぱちぱち〜」



我々の第2の目標、メンバー誰かのVTuber化。

第一の目標として掲げていた2次元具現化計画は彼と在坂の協力を経て実現可能としこの小さかったサークルも狭い個室から大部屋付きへと進化した。


そして次の目標として、メンバー内の誰かしらを人気VTuberへと育てること。これも栞君のおかげでVTuberになるというステージには立った。

だが、これで終わりというわけではない。彼を人気VTuberにするという目標は達成していないからだ。


──つまり我々がするべき最重要事項、それは…


「彼を人気者にするため案を出してくれ」


VTuberとは客商売。沢山の人々に好かれ好印象を得られるようなキャラ付けが必要不可欠。

それをこの会議で話し合いたい。



「一つ聞いていいかなー」


「何ですか?祭先生?」



顧問の上田祭うえだまつり先生。客観的にみてイカれたメンバーしかいない変わったサークルを担当してくれる頼もしい存在だ。



「そういうのって栞君が所属するVレコがやってくれるんじゃないのー」


「その通りだが、せっかく身近な存在がVTuberになったというのに自分達好みのVTuber作れないとか勿体なくなくないか?」


「たしかにー」



サークル顧問にこの人を誘った時も祭先生はこのように意外とユルい一面がある。教鞭は真面目なのにな。



「では何かないか?あ、名前は最後に決めるぞ」


「はい」


「お、初手は副リーダーか。いい案を期待してるぞ?」


「はい、では──」



副リーダーの松嶋まつしまそら。生粋のアイドルオタクでありリアルでは近場の神社を管理している神主で、サークルでは私の頼れる副官だ。



「まずやっぱりキャラ付けからですが彼はリアルでも十分濃いキャラだと思うので全部とは言いませんが、ある程度リアルの設定も盛り込んだ方が面白いのではないかと」


「なるほど…確かにそうだ。では、どの要素を取り入れる?」


「そうですね……ダンジョン協会の受付とか?」


「そうだな…ちょいと捻って冒険者ギルドの受付はどうだ?」


「いいですね!では、要素はそれで決定でいいですか?」


「あぁ、そうだな。あまりキャラが変わりすぎると彼も大変だからな。リアルの設定を少し盛り込むくらいで丁度いいのかもしれん」


「キャラ崩壊はなるべくしない方が良さそうですね…」



流石、副リーダー。しかしキャラ崩壊に何か思うことがあるのか哀愁を漂わせている。推しのアイドル関連で何かあったのだろうか?



「他にはいないか?」


「はいはいはーい!容姿はお兄様みたいなイケメンを希望しまーす!」


「……まぁ、立ち絵は必然的に君に任せることになるから好きなように描けばいいだろう」


「はーい!好きなように描きマース!」



元気よく返事をしてくれた彼女は前田まえだもも。少々、兄への愛が過ぎるだけでメンバーの中ではマトモ枠ではある。しかも現役のプロイラストレーターでありサークルではイラストを担当している。


「では在坂ありさかさんはももちゃんと連絡を取り合ってとりあえずガワの制作に取り掛かるといい」


技術担当の在坂さんはこくんと一つ会津を打つとそそくさと部屋から出て行ったかと思いきやパソコンを準備してもう3Dモデルの骨組みとなる部分を作り始めていた。

流石コミュ障、行動が早い。



「ではあと何を決めようか」


「はいですわ〜!」


「どうぞ。かのちゃん」


「やっぱりVTuberは目を引く特徴があるといいと思うんですの〜だからワンポイントとしてタトゥー──」


「却下」


「なんでですの〜!」



佐久間さくまかの。見た目はロリ。中身は脳筋ゴリラ。サークルの暴…ごほん戦闘担当。(どっちも同じだろ!by.栞)

そんな彼女はお嬢様VTuberに憧れていて口調もそれと似たように変えている。

中身を無視すれば誰よりも乙女な性格なはず…



「却下はしたけどやっぱり特徴は必要だ」


「そういうリーダーはなんかないの?」


「そ、その通りですわ!1人だけ進行に逃げてずるいですわよ!!」


「私か、そうだな」



少しばかり考える。

では、今までに採用した案をまとめよう。

1.冒険者ギルドの受付

2.容姿、立ち絵(イラスト担当と技術担当のおまかせ)

…ぐらいか、始めに出た冒険者ギルドの受付以外なんも決まってない。


名前以外に決めていないものとしてはやっぱり設定か?流石に冒険者ギルドの受付、だけでは物足りない。



「では、こういうのはどうだろう?彼は元探索者だ。まぁここはとりあえず冒険者ギルドに沿って冒険者と呼ぼう。そして彼が冒険者を辞めた経緯は伏せてミステリアスな冒険者ギルドの受付という印象を与えてみる」


「…まとめると。かつては名を馳せた冒険者だった彼は

何故か冒険者ギルドの受付という職に収まり副業としてVTuberを始めた。と、いったところでしょうか?」


「もうちょっと何か欲しいな。視聴者が冒険者ギルド(探索者協会)関連の設定を知らない以上、副業としてVTuberを始めるというのは不自然だ」


「では、こういうのはどうでしょう?栞君は生粋の社畜魂をもつ殿方ですので、危険の道を止めた時の障害として社畜願望が芽生えたというのは!」


「お、かのちゃん。珍しく冴えてんねぇ!」


「当たり前ですわ!わたくしも筋肉だけではなく精神的にも成長してるんですの!」


「身長はまったく成長してないけどねー」


「前田様は何かいいました?」


「ヒェッ」



流石、サークルの戦闘担当だ。彼女に武力で勝てるのって実は栞君しかいないのではないか?



「しかし社畜願望か、」


「丁度VTuberを始めた経緯として矛盾はなくなりますね」


「…ということは?」


「採用」


「やったーですわ!わたくしも役にたちましたの!この件に関して言えば、わたくしの出番はないと思ってましたわ!」


「良かったね!かのちゃん!私なんて案でさえなんも思いついてなかったよー!」


「流石サークルのポンコツ担当だねー」


「あ"?何か言った?」


「おあいにくさま。私はかのちゃん以外の脅しなんてききましぇーん!」


「この!!」


「はいはいはい。戯れはそこまでにして、そろそろ一番重要な事を決めるから席につきなさい。あ、先生もどうぞ」


「こういうのって僕が言った方が格好ついたかなー?」



このサークルだけは顧問の先生なんてあってないようなものだ。誰も指示を従おうとしないので、リーダーの私がこういう時いつも指示を任されている。


「では、最後。栞君の名前を決めよう!」


これはある意味VTuberの設定よりも一番重要な議題だ。何せVTuber業界に関わらず名前というのは第一印象を決める。ここは一旦、慎重にならなければならない。



「ていうか今更なんだけどーそれ本人がいない所で決めることー?」


「本当に今更だな。確かにそうだが前田君。彼にネーミングセンスがあると思うか?」


「ないね!」



彼にネーミングを任せるくらいならかのちゃんに頼んだ方が絶対にいいと断言出来る。それは何故か、だってアレ|(絵を現実に具現化する装置)の名前『ミミック〇ね丸君』らしいからな。……相変わらずミミックに何されたんだよと思わすにはいられない。



「それじゃあそれぞれの希望を聞こうか」


「じゃあさ、シオン・・・ってのはどう!!」


「それあんたの名前でしょ?」


「そうだけど違うんだって!実はさ…あ、これは栞には言ったこと内緒だよ?」





──栞の本当の名前・・・・・って私と同じなんだって。

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