風林火山の父

武田伸玄

序章

一筋の光

 夜の闇


 それは篝火の灯をも打ち消すような暗闇


 戦乱の世はまさしく闇夜そのものである


 ただ、光が消え失せているわけではなく、姿を変えているだけだと気づいた者が勝利の朝を迎えられるのかもしれない―



 

 床几に腰を据え、じっと目を閉じているのは弱冠14歳の男

偵察を担う百足組から敵陣が眠りについているとの報告を受けたその時、


 カッ!


 と目を見開き不意に立ち上がると、抜いた刀を満月へ向け陣中高らかと宣言した


 「闇夜にも光あり。我はこの戦乱の夜にあって光を見出した。今こそ国を簒奪せんとする逆賊を討つ好機である。我と同じく光を見出した者は付いてまいれッ」


 高らかと掲げられた刀に月明かりが重なり、一筋の光となって将兵の魂を鼓動させる


 彼の決意漲る号令は総大将が14歳の青年であることから生じる将兵の不安を打ち消し、また彼らを奮い立たせるには十分なものであった


 「行けーッ!突撃じゃーッ」


 「おーッ!」


 気持ちを一つにした精兵2千がそれぞれの魂を燃え上がらせながら、総大将を筆頭に敵陣へと突入していく

 その様はまさに虎が獲物に向かっていく姿そのものであった―

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