第32話
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正直、こわかった。高梨と話したら周りからどう思われるかとか、何を言われるかとか、そういうことを考えていたんだ。少女漫画のヒーローなんかじゃ絶対にありえないこと。
それでもこの小さな手の女の子はおれを好きだと言ってくれた。
もう、自分のことばっか守ってらんねえよ。守ってもらうなんて、かっこわりいよ。
情けない弱い自分を捨てるなら今しかないと思った。
昼間にここに来たのは初めてで、ここ1か月の間毎日来ていたのに別の場所にいるような気分だった。
チャリを止めると、少し照れた様子の高梨が荷台から降りる。
「夜のほうがまだいいね、ここ」
ぼそりとつぶやいたその頬には泣いた跡があった。強いな彼女は、おれの背中でそっと静かに泣いたんだろう。
孤独な瞳をしていたのは、本当は、きみのほうだった。
「今日でこの景色見るの最後とか、なんか信じらんねえよな」
生まれた時にはすでに賑わっていたこの遊園地も、新しくマンションに生まれ変わる。
きっともうこの遊園地の存在を認めてるやつなんてこの街にいない。
それでもここで出会った。
「初めてここで会った日さ、ここが壊されるって聞いたんだ」
まあ、小さい頃遊んだこともあったし、少し見に行くかってそんな軽いノリだった。
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