第25話

まさか見られていたなんて。



どこを見られた?…抱きしめられているところも、見られていたらお仕舞だ。


あの約束の意味がなくなってしまう。


誰も知らない小鳥遊くんをひとりじめできているなんて、そんなこと思っていたから罰が当たったのかもしれない。


迷惑をかけたくない。


わたしが大好きな彼の築き上げてきたものを壊してしまうなんて、そんなこと、絶対に嫌だよ。それなのに神様って意地悪だ。




「おはよー」



その声に思わず顔を上げた。


教室に入ってきた小鳥遊くんと一瞬目が合って、すぐにそらした。今のは失敗だった。



「ほーら、アヤシー」


「な!今の見た?」



注目されていないわけがなかったのに。


今のは、きっと、助けを求めてしまっていた。どこかで、そうしてしまっていた。自分でなんとかしたい。とにかく小鳥遊くんの、内緒を守ってあげたい。



「なにが?何の話してんの」


「なあなあ優、昨日の夜見ちゃったんだけどさあ」



小鳥遊くん、聞かないで。


今夜で最後なはずだったのに、聞いたらきっと、もうきみはあの場所に来てくれない。わたしも、行けない。だって守りたいから。


だから、聞かないで。



「あっちの高梨と会ってたのってなに?どーゆーカンケイ?」



夜の星が瞬きはじめる頃、約束もなく待ち合わせをして、同じ時間を過ごして、時々笑ったり触れ合ったりして。好き、なんて言っちゃったりなんかして。


そんな時間は限られていることは解っていたのに、その限りある日の終わりを、もう迎えられない。

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