第11話:――助けて
◆
数日後。深夜。
用意された場所は、鬼崎の敷地にある古い神社だった。
古い鬼神をまつるそこは、何度もこの儀式が続けられてきた場所なんだろう。
着物に袖を通し、腰に刀を差し、僕はそこに立つ。
かがり火だけが境内を照らしている。
神社の本殿からはなびが姿を現した。
巫女のような格好だ。左右に鬼崎の人が控えている。
袖から伸びる四本の腕。
その鬼の腕だけを、僕は斬る。
「かざり。ごめんね。こんなことに付き合わせてちゃって」
しぼり出すようにそう言ったはなびに、僕は笑ってみせた。
いつもと反対だな。
祖父と真剣で修練した時のように、静かに刀を抜く。
大丈夫。僕はいつもより落ち着いている。
「はなび。何言ってるんだよ」
僕たちは境内に立つ。
「バスケと同じだよ。あの時さんざん君にやられたんだ。今夜は僕が勝たせてもらうよ」
そうだ。これは絶対に、はなびを傷つける儀式じゃない。
はなびを助ける儀式だ。
僕ならできる。
僕にしかできない。
祖父は――あの人は僕より強いけど、はなびのことを知らない。
僕は知っている。はなびは誰よりもバスケが好きで、誰よりもあのコートを楽しんでいた。
「……かざり」
「うん」
「私ね、ずっと怖かった。鬼の自分が。
でも、かざりと出会って――私も普通の女の子みたいになれるんじゃないかって思ったんだ」
「僕が君を普通にする」
「お願い。――助けて」
ああ。君を助けるよ。絶対に。
口上はよどみなく口から出た。
「鬼斬役が一家、久賀かざり。正式な鬼斬りですらない
「鬼宿しが一家、鬼崎はなび。
※1:長くなおらない病気
※2:病気がすっかり治ること
「いざ」
僕は刀を構える。はなびの怪腕に力が入ったのが分かる。
「参る」
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